文:見る聴く「可愛い!楽しい!大好き!ー本田雅人BAND@BlueNote Tokyo(配信にて)」




 笑顔がチャーミングな人というのは幾つであっても魅力的なものである。

 大好き海外ドラマ「コールドケース」(AXNさんお願いですから早くシーズン4からOAして下さい)のシーズン3、エピソード9「ペンダント」(DVにあってる若い奥さん+双子の娘と共に駆け落ちしようと若い警察官が思う。理由は、彼女の旦那も警察官だったからというひどい話で、WOWOWさんの日本版リメイクでは黒木華さんが奥さんの役だった)で、ボスより年長のベテラン刑事ジェフリーズが話を聞いているシーンで、事件の鍵ともなる古い8ミリフィルムの存在を聞き、それを持っているという同じく年配の女性に「それ、借りられますか?」と尋ねると、

「あげるわ。あなた可愛いから」

と言われる。大好きなシーンの1つである。




 人間としての可愛らしさ。チャーミングさを備えているって素敵なことだと思う。本田雅人さん率いるバンドのライブを見て、あらためてそう思った次第。


 サックスの音というのはセクシーの権化みたいな形容をされることもある訳だけど笑、本田さんの音はそれとはまるで正反対、言うなれば清潔感のカタマリ。真っ白いシャツみたいな。とっても爽やかで、気持ちの澱を全部掬って投げ飛ばしてくれそうな感じ。ステレオタイプのサックスにはお酒の匂いが似合うけれど、本田さんのサックスの音にはシュワシュワとしたソーダ水がよく似合う。


 悪い意味では全然なくて、少年っぽさがあるんだよなあ。なんつーか、こう、性に目覚める前の純粋さというか。いいんだ、その潔癖な感じが。キレが良くて勢いがあって、時に哀愁も感じるけど、基本は明るく明日を待ってる、そんなある種の希望を託せる音。

 アルト、ソプラノ両方のサックスと、ウィンドコントローラーという新しい楽器=サックスの進化版みたいな楽しい形(でも持ちにくいんだそうだw)の「NuRAD」という名の楽器を駆使して行われたライブは最初から最後までいろんな意味でスピーディ笑。




 マサトクンと勝手に呼んで憧れていたハイパーサックスプレイヤーが、あんなに早口でMCが多めだとは思わず笑、最初は面食らったが、聞いていると、ああこの人は伝えたいことがたくさんあるんだなあと思えてくる。オーディエンスに対するサービス精神もさることながら、

「最近は譜面が覚えられなくて。でもiPadですよ。紙が増えなくていいですよね」

「よく最近指が攣るんだよねえ~。つらない薬とか貰ってるんだけど」

「僕絶対音感ないんで、2つの曲が同じになっちゃうことがあってですね」

とか全然普通に話すし、自分に対してもメンバーに対しても、オーディエンスに対しても正直でストレートでとても好感が持てた。

 本田さん、解ります。緊張なんかしてるつもりないのに本番になるとあれ?ってこと、ありますよね。なんて勝手に身近に感じてうんうんと頷きながら聞いてしまった。


 しかしながら、

「いつも演ってる曲ばかりじゃ飽きてきたんで、今回、いわゆる定番曲、僕の人気曲とかをガラッと変えて、前はよく演ってたけど最近やってなかった曲を演ることにしたんです。だから知らない曲ばかりかも知れないですよ。でもあれやんないの?を演り出したら3時間くらいかかっちゃうので。

 今回のセットでライブをするのが初めてで、だからどのくらい時間がかかるのか全然解らなくて。そうしたらファーストステージね、アンコール禁止になっちゃったんですね」

には画面の前で爆笑した。そんなことあるの?!みたいな。

「あ!でもセカンドステージでは大丈夫です!」

って笑。更に、

「配信の皆さん、こんばんは。僕、配信入ると大体間違えるんですよね。配信とかテレビとか弱いんですよ」

って本田さーん!www

 予定調和じゃないところ。このスリリングなライブ感こそが、ジャズやフュージョンの面白さでもあるんだろうなと。


 以前ブルーノートジャズオーケストラに出演されたのだが、2月のそのライブを配信で見ており、「Birdland」でのエピソードを実際この目で見ていたので、本田さんのお話がとってもよく解ってこれもまた爆笑。

「60代~!ってエリック(・ミヤシロ氏)が言ったら小池さんしかいない!(客席笑)」

 小池さんとは、先日の村田陽一Big Bandでも出演されていて、村田さん曰く「日本のマイケル・ブレッカー」こと小池修さん。みんなにいじられてるのに素晴らしいプレイっぷりの小池さん。なんだかファンになってしまう。


 こないだの向谷さんが翌日の小曽根さんのことを話したり、その小曽根さんのライブには、翌週のライブに出る塩谷哲さんが来ていてアンコールで演奏してくれたり、その塩谷さんと小沼ようすけさんのライブに今度は小曽根さんがいらしてお返しに1曲一緒に演奏したり。

 音楽って、特にジャズってさ、こういうのがいいんだよねえ。みんなで楽しもうよって精神が随所に見られて、幸せな気分になる。

 ブルーノートだけじゃくて、こういう素敵な場所になり得るライブハウスを、配信ライブという形でもしも少しだけでも応援出来るのなら本望だ。





 1曲目の「3/4/5 (ワルツでGO!)」(タイトルの感じに既視感があるのは何故だろうw)から目一杯弾け飛ぶ爽やかさ。「春うらら」「君はエスパー」「桃色散歩道」と、ポップで春らしいナンバーが嬉しい。きびきびとしたクリーンなプレイスタイルは心地よくこちらを高揚させる。しかしながら、一体どこでブレスしているんだろうという程息が続く。これは凄い。しかもブレス音が全く聞こえない。息吸ってるのかな本田さんw


 昨年急逝したピアニストでキーボーディストの和泉宏隆さんの「団体」(と本田さんは言うのだw Squareのことを)の曲も何曲も聞かせてくれた。「宝島」「Forgotten Saga」(最高!これ大好き!圧巻!)「El Mirage」(弾け飛ぶ高音!)。

 本田さん曰く「和泉さんの曲は演ってるとお客さんも、僕自身もニコニコしてくる。マスクしていても解ります(客席笑)。僕の曲はそれとは逆で、お客さんの顔が段々顰めっ面になってくる…(客席笑)。だから、その2人の曲を演るとちょうどよくなるんですね(客席笑)」先程も書いたようにMCは始終こんな感じ。

 和泉さんの曲を演奏することの意義というよりも、演っててすごくいい曲だし、それを演奏の形で残しておきたい、と思っているのかもしれない。「曲は永遠ですから」とは素敵な言葉だ。


 そして、特筆すべきは、「じゃあ次はこれを演ります」と言って曲が始まる前など、所々で、本田さんが一瞬ニコッと笑うのである。これがもうなんとも「可愛い」のだ笑 あと半年で還暦と言っていたけれど、いやあどうして。

 可愛いという言葉は便利で、様々なところで使われる訳だけど、本田さんは、もう、本気で、文字通り、可愛い。私が高校生の頃音楽雑誌などで見た時にも「わあ、可愛いお兄さんだなあ」と思ったのを覚えているが、あの時の印象のままなのが凄い。まあそりゃ、物理的には年を重ねている訳だから全く同じではないけれど(全く同じだったら逆に怖いwww)、表情と言うのかな、心の中にいた姿と変わらずにいてくれるって嬉しいよね。





 可愛いって話なら得意な人がいるよね笑。

 当ブログきってのご贔屓ギタリスト、大賀好修さんよ。

 大賀さんも良くファンから「可愛い」と形容される。かっこいい、も言われるし、素敵、もよく言われるけど、ファン同士の間では「可愛い」が多いんだよね。ご本人は知ってるのかなあ?

 というか、Sensation全員が「可愛い」というのが多い気がする。確かにそう。4人とも可愛い。

 それはきっと、人間としての可愛らしさ、なんだよね。明るさ、穏やかさ、ユニークさ、面白さ。その全てひっくるめて、4人はチャーミング。それって大事、ほんとに。


 新しい楽器にチャレンジしたりと、本田さんは気持ちも若いのかもしれないが、なんていうか、こう、しがみ付いてないところがいいんだよね。通ってきたところ全てが自分であり、その上に自分がいるのは確かだけど、今は今、そしてまだ先へ行く、というか。

 過去にしがみついちゃうとこあるじゃない?人間って。それが感じられない。これも本田さんの奏でる音楽の爽やかにつながるのかもね。「F1も遅いとカッコ悪いじゃないですか」(この方も車が大好きらしい)という言葉からも感じられる楽しいスピード感。これも若いってことだろうね。


 「放課後は日曜日」「メガリス」アンコールの「Pray for Peace」どれもハッピーな気分になれる曲ばかりだった。顰めっ面なんてしなかったですよ。特に本編とアンコールの間の退場なしで、「最近は省くんです。時間もったいないんで。もう十分過ぎてますしね」にはダメ押しで爆笑。いいなあこのせっかちさ!笑。絶対気が合うwww 私もゆっくり出来ない派なんだよなあ。

 本田さん、いつまでもそのスーパープレイを楽しみたいので、どうぞ指も大事になさってくださいね。また堪能出来る日を楽しみにしています。


 「配信の方もご視聴ありがとうございました。これ、みんなで手を振るんですよね?そこですね?あ、お客さんで写んない方がいい方は下向いていていくださいね。全体が映るようにしますからね。あ、でも後ろ向きだから大丈夫かな?」

 本田さ~ん!笑






 

文:見る聴く「 How to create new things ーFrom OZONE Till Dawn in Club Part 5 “THE PIANO” 小曽根真、壷坂健登、武本和大 @Blue Note Tokyo(配信にて)ー」




 年を重ねることが一番嫌だったのは30代の頃で、1年1年がまるで足枷みたいに感じられたものだった。ところが40代に入った途端に気持ちが楽になり、ここまで来ちゃったんだから腰を据えて色々考えようと思ったら、見える景色が変わってきた。あらゆる変化、とまではいかないにしても、変化が怖くないというか、いつでもはないにしても、まあそんなこともあるさ、くらいに捉えられることも増えて、肩の力がちょっとだけ抜けたんじゃないかと感じた。


 とはいえ、他人はそうは見てくれない。年を重ねると変に気を遣われたり、逆に使われたい時に使ってもらえなかったりすることも多々ある訳だ。私は仕事柄余りない方だとは思うけど、それでも、「ああきっとあの人、最初に私に接する時すっごい気を遣ってたんだろうなあ」と後から気がつくというか笑、そんな風に思うこともあって、だからこそ出来るだけフランクに、でも砕け過ぎないくらいの言葉使いと距離感を測りながら、日々生きてるというね。まあ大変よそれなりに、って書き出しと違うじゃん苦笑。


 つまりさ、年を重ねてきたら、相手に余計な気を遣わせない=威圧感を与えないって絶対大事だと思うんだよね。自分だって、年だけは食ってるけど解ってないこととかたっくさんある訳だし、逆に教えてもらうことの方が多かったりしてさ。そんなこと一年中あるじゃない?だから、いつでも相手に対して、自分の方が出来るだけニュートラルでいないといけないと思うのよ。

 いや勿論私だってそれを忘れることはある。大体いつも出来てる人ならわざわざこんなこと書かなくったっていいんだしさ笑。自分への戒めとしてもこれを書いてるんだけどね。





 小曽根真さんがリーダーを務め、若手ジャズミュージシャンを同じ舞台に上げてセッションするライブのシリーズがブルーノート東京であり、今回はピアノ2台入れて、つまり全部で3台入れて演るライブの2日目のセカンドステージが配信になるということで、こんなもん聞かないなんて選択肢はないだろうと思い、リリース直後に速攻チケット買って張り切って見た。


 このライブの前日に、元カシオぺアの櫻井さんと向谷さんがライブをしており、向谷さんが「小曽根さんがピアノの音がおかしいって言ったら、向谷が前日に弾いてたって言ってください」と笑いを取っていたのを思い出す。連日ブルーノートのライブが楽しめるなんて、配信じゃなかったらあり得ない話で。本当に嬉しい限りだ。

 ちなみにこの日はYAMAHAさんが持ってきてくれたという素晴らしいピアノが2台入っていて、向谷さんが弾いたのとは別のになっていた笑。


 さて、ホストは小曽根さん(パーマがかかった風のヘアスタイル、素敵でした)だし、若手の壷坂さん(星がたくさん散りばめられたシャツ、可愛かった)は慶応からバークリーへ進み(!)主席卒業(!)、同じく若手の武本さん(ソロ曲 “Tranquility” を弾く時の「タメ」の数秒!)は小曽根さんに「エレクトーンなら世界一。グランプリ取ってるので」(!)と言わしめる御仁。2人ともそれこそ実力派。演奏が素晴らしいのは今更分かりきったことではあるが、あえて言うのなら、いやあもう、エレガントでありながらあのキレの良さ!最高だった。そして小曽根さん曰く「ひとつとしてリハーサルと同じことはしていない。本当に可哀想(な2人)」なのだそう笑。ええっ?!あれアドリブ満載?!あんなに難しそうなのに?!!「ジャズはハプニングがつきもの(小曽根さん)」なんだろうけど、ある意味怖いなそれは笑。まあ、この辺こそがジャズの真骨頂なのかもね。でも実力派同士が3人もいるので、楽しそうにしか見えない。プロだね。




 小曽根さんのピアノに合わせるようにして3人の演奏が始まる訳だけど、それはそれはもうゾクゾクするくらいド迫力なんだ。3人の掛け合いが。

 SNSで小曽根さんが事前に「今回のステージは鍵盤が3台入るという特殊な組み方なので、配信の方は楽しめるかも」と言っていたがまさにその通りで、生音は聞けない代わりにカメラがすっごくいいところについていて、鍵盤が上からも下からも横からも見えて、いいアングルだらけで本当に楽しめた。


 1曲目から小曽根さんがすっごい笑顔なの。めちゃくちゃ笑顔なんだよね。それに釣られるようにして、真ん中のフェンダーローズの武本くんと、小曽根さんと向かい合わせたピアノの壷坂くんがニコニコし出すのよ。笑顔の応酬みたいな感じ。小曽根さんの掛け声に合わせるようにどんどん士気が高まってフィニッシュ!決まった〜という感じで思わず配信ということを忘れて拍手しまくっている自分に気づく。


 よく、当ブログきってのご贔屓ギタリスト、今年結成10周年のインストバンドSensationのリーダー、大賀好修さん=大賀くんがプレイ中こういう表情をしており、彼曰く「ギターは顔で弾く!」ものらしいんだけど笑、 いやいや大賀くん、小曽根さん達3人とも、ピアノも顔で弾いてるよ、という感じ。3人とも、顔で会話してる雰囲気。それが実にいいのよ。見ているこちらのボルテージもMAXだね。

 そういえば小曽根さんと大賀くんって、あの、人を惹きつける笑顔の感じがよく似ている。




 小曽根さん、今年の3月で還暦+1歳になられたらしいのだけど(これも大賀くんと同じ牡羊座ってヤツだね)、とてもそうは思えない。見た目が若々しいというだけでなく、ひとつとしてボス然としたところがないのだ。自分から率先して笑顔だし(勿論こういうのは意図してやろうとしたってできるものではない。ご本人の心がけというか、心の底から楽しんでいなければ出来ないはずだ)、若手2人を引っ張るけれど、若手にいい道を開けて譲ってやるシーンがたくさん見え隠れして。2人のソロ曲もあったし、3人で演奏する時にも常に小曽根さんがファーストじゃない。

 それと、壷坂くんと一緒に小曽根さんが「パンドラ」をデュオをする前のところでの2人の会話、


「こうやって…一緒に音楽やってるとどういう人か段々解ってくる…がっかりしてない?大丈夫?」

「(大笑)」

「(壷坂くんがアメリカで活動しようとした矢先にコロナウイルスが蔓延し、そのせいで)日本に帰ってきて、六本木で真面目に仕事してたら、変なピアニストに出会ってしまって…(客席笑)…そういうことだよね」

「そうなんです」(笑)

「そ…あっはっはっは!『そうなんです』!?…まあ後で楽屋でゆっくり話しましょう(大笑)…って、こんな話して弾く曲じゃないんだよ!パンドラって!」


 これだよ、これなんだよね。このリラックス感。これが客席にも伝わるのよ。勿論、配信見てる私達にも。

 大分偏見かもしれないが、一昔前のロックバンドなんかによくあるような「俺がここのリーダーだ!」なんてカビの生えたようなこと、仮に冗談にしても小曽根さんに限っては一切ない訳よ。この心地よさこそが、音楽の心地よさに繋がるんだよね。





 確かに今回は趣旨が「若手のイントロダクション」であるのだから当たり前といえば当たり前かもしれないけど、でもそれでも思うのよ。小曽根さんはきっといつでもどこでも、こんなスピリットを持った人なんじゃないかって。

 自分だけがソロいいとこ取りとか自分だけがいいカッコとか自分だけが目立つとかでは全くなく、一緒にやるからには当然彼らにもメインステージを明け渡す。この清々しさ。3台の鍵盤を回して弾く、というようなことはライブ前のSNSなどに上がっていたけれど、まさか小曽根さんがフェンダーローズを弾くなんて思いもしなかった。それがまた最高に上手いんだ。何弾いても上手いに決まってるんだけど、でも、まさにこの肩の力の抜けた「余裕」こそが、小曽根真さんという人間の、懐の深さなんだろうと思う。


 そういうことに対し、小曽根さんは、「僕が若い頃、偉大なる先達にチャンスをもらってきたように、僕もこれからのジャズの担い手にそうして行きたい」と語っていたのだけど、それってさあ、出来るようで案外出来ないことなんだと思うよ。人間がどんだけ出来てるかが伺えるだけでなく、本人が本物の一流である必要がある。勿論テクニックだけじゃなくて、人間的に。


 ワールドツアーに出るのだそうだが、ハンガリーのブタペストで、今難民として移動してきている人達にも聞いてもらう機会を作る予定とのことで、そのことについて話す途中で、

「微力ですけれども、微力は、無力ではないと信じて」

と小曽根さんが語った時、心が熱くなった。これだけ素晴らしいことをしようとしていながら、なんて謙虚なのだろう。

 小曽根さんのステージを見る喜びは、こういう、尊い心根を持った人に触れる喜びでもあるのだと、今回あらためて気付かされた。





 冒頭で「これは配信があるのですよね」と小曽根さんが言った後、それがごく当たり前のように「これを世界のどこかで見ている皆さん〜!」みたいな感じで英語での挨拶が始まったのが印象的だった。小曽根さんはちなみに、ごくごく普通に、全体のMCの半分を英語でされていた(小曽根さんの英語はまさに模範だ。誰にでも解りやすい英語でサラッと、端的に、言いたいことを伝える。受験生よ、小曽根真のスピーチ力こそ、インターナショナルに通用する英語力だ。君達も私と同じくぜひ全部真似したまえ笑)。


 そう、配信ってのはさ、世界中に発信されるってことなんだよ。向谷さんも同じこと言ってたじゃん?「インターネットってのはそういうことですから」って。

 だからさあ、配信ライブについての見方を(私も含めて)変えていこうよ。これはライブに行きたくても行けない人のためのものじゃない。そうじゃなくて、世界のどこにいても素晴らしい音楽演奏を享受できるプラットフォームなんだって。楽しみ方のひとつの形。そう考えることで、絶対変わってくると思う。

 別文脈での小曽根さんの言葉を借りれば、


“I love breaking things up. 

That’s the way you go.

That’ s how you create new things.”


ってヤツよ。ふう、カッコいいぜ。



 アンコールの時、客席に、来週小沼ようすけくん(大好き)とライブをする塩谷哲さんが来ており(これさあ…もうむっちゃくちゃ見たいんだけど…配信がないのよねえ…号泣。頼むよブルーノートさーん!)、ステージに呼んだ小曽根さん、ちょっと紹介した後すぐに

「ねえ何弾く?」笑。そして

「ここのステージにピアノが2台あることってなかなかないし…(中略)リオのコンサートキャンセルになったの。なんか、エアコンが壊れてるとかで(客席笑)。いや!ホントなんだって!…だからリオ!」

 と言いながら「あこがれのリオデジャネイロ」をデュオ。これがまた絶品。こんな豪華なおまけつけてもらっていいのかなってくらい。

 本編中の小曽根さんのソロ “Struttin’ Kitano”も小曽根さんらしい軽快でユーモラスな曲だった。小曽根さんの曲は、基本は果てしない美メロだと思うけど、リズミカルなものだと時々モンクっぽい不協和音が入ってとても楽しい。


 最後は3人で、小曽根さんがMy Heroと紹介したオスカー・ピーターソンの “Hymn to Freedom”。配信ライブ見て、何か思い出と被るとかではなく、純粋に音楽の力だけで涙流したのは今回が初めてだった。





 随分前になるが、小曽根さんが、師匠のvibraphonistのゲイリー・バートンとデュオのコンサートをした時、我が県にも来てくれて、4列目で見た。まさにがぶり寄り笑。

 ステージ後にサインをしてくれるというので、それまで持っていなかった、小曽根さんの初期の頃のアルバムでバートンがプロデュースした1枚を購入して並んでサインしてもらった。小曽根さんには「いつもJ-WAVEの番組聞いていました!」と言った。そして憧れのゲイリー・バートンにドキドキしながら英語で話しかけたらそれが通じて、笑顔で答えてくれた。紳士的な優しい笑顔だった。握手もしてくれた。本当に温かい、厚みのある柔らかい手だった。


 私の英語で、私の大好きな人に話しかけたら、それが通じてお返事してくれた、そう思ったあの時のことは今でも忘れない。飽きもせず英語を生業に出来ているのは、こういう原動力があるからだろう。

 そんな、自分にとっての大切な思い出の中に、小曽根さんのような素敵なジャズミュージシャンがいることを心から嬉しく思う。

 ブルーノートの写真は全て公式Twitterより。



 

文:見る聴く「2人合わせて『櫻井“鉄”夫』ー櫻井哲夫 with 向谷実@Blue Note Tokyoー(配信にて)」



 同窓会には出たことないけど、こんな世の中になって以来ほぼ毎日、高校時代からの友人とメッセージのやり取りをしているので、毎日が同窓会みたいなものである。気心の知れた友達と他愛ない話をするという一見くだらない日常がすっかり奪われた今、こうして日々文字での会話が出来ることが本当に嬉しい。


 だから、櫻井さんがライブの頭で、向谷さんと2人でステージに出ることを「同窓会的な気持ちで、皆さんと共有できたらなと思っております」と言った時、それがどれ程嬉しいことなのか、ちょっと想像つくような気がした。そしてそのシーンを目撃出来ることを、心から嬉しいと思った。





 カシオぺアといえば泣く子も黙る日本を代表するフュージョンバンドである。幾度かのメンバーチェンジを経て現在は3rdと名乗っている訳だけど、この3rdもとっても素敵だが、私としてはやはり80年代後半の、フュージョンが世間的にも相当認知され始めた頃のカシオぺアが懐かしい。高2の時、友達に勧められてインストものを聞き、相当ハマった時期がある。今、私がアホみたいに応援しまくっている今年結成10周年を迎えるインストバンド、Sensationへと繋がる道はこの辺から始まっていたに違いない。

 Sensationの皆さんは、4月16日に大阪で有観客ライブがある。これ、後追いでいいから配信しないかなあ〜!!!ああ心底見たい。


 カシオぺアもスクエアも聞いたし好きだったが、どちらかというとカシオぺアの方が好みだった。多分あの、跳ねまくる「あと打ち」のファンキーなサウンドが好きだったんだろう。

 その核となる部分を担うピアノ、そしてベース、この2人のライブを配信すると来れば見ない訳には行かない。ということで配信に臨んだ。


 1曲目、櫻井さんが一人でステージにやってきてソロで “Spain”を。これでもう全部持ってかれましたね。なんてカッコいいんだろう!ベース1本でプレイする「スペイン」。初めて聞いた。櫻井さんの、ビィーンと鋼みたいな音のするベースが激渋。

 物腰の柔らかな人だよね、櫻井さんって。言葉も丁寧だし、笑顔も素敵。何より素敵だったのが衣装!可愛いピンクの、サイケデリックとも言える大胆な模様が入ったシャツ。これがお似合いで。桜の季節に合わせたのと、櫻井さんだから、ということみたい。


 と思ったら!2曲目の前に入ってきた向谷さんがなんとお揃いのシャツ!!!ええペアルックなの?!笑。しかもこれがまた可愛いのなんの。向谷さんはスモーキーな濃いピンクのパンツでシャツをイン。方や櫻井さんは黒いパンツの上にシャツをアウトにして。帽子も似合ってたなあ。

 激渋のオジサマ2人がピンクの柄シャツで並んだ姿はこれまで見た配信ライブの中でも12を争う程のインパクト。これ忘れないと思うな。


 お二人とも還暦を過ぎていらっしゃるからこそ似合う、というのもあるかもだけど、ねえ、Sensationの皆さん、どうでしょう?こんな素敵で可愛いお揃いの衣装でライブしませんか一度くらい。絶対似合うと思うんだけどなあ。今回の16日のライブはどうです?春らしい、やっぱりピンクの衣装とか。


 流れるような美しいピアノソロから、向谷さんの “Reflections of You”、 そして櫻井さんの “Sailing Alone”へ。どちらの曲も、どこか海も思わせる大きく畝るビートが気持ちいい。向谷さんというと「トークと電車の人」というイメージが強いけど、やっぱりこうしてプレイを聞くと一流だなあとため息が漏れる。響きが綺麗なのよね。この方も決して音を濁らせない派。そこに入ってくる櫻井さんの、少し尖ったベース音。低いけど重過ぎないのがいいバランス。






 なぜか写真が多いSensation笑。

 一番上、左が大楠くん、右が麻井くん。もう一人はもちろん大賀くん。

 

 ピアノとベースのアンサンブルってことは、大楠くんと麻井くんが2人でライブするようなものなのだけど、いや、これはこれで見たいな私。優しい2人のアンサンブルってどんなかしらね。Sensationのライブって、そういう、4人の中の2人で絡むとかはないのかしら?あってもよさそうな気がする。だって巧いんだもの、4人とも。ああ見たい。頼むから配信で見せてくれ(さっきからこればっかしw)。


 MCでの、2人の掛け合いが絶妙。さすが45年前からの付き合い。トーカティブな向谷さんに穏やかなツッコミをする櫻井さん。と思ったら、向谷さんに対して櫻井さん曰く「インターナショナルな体格」。すかさず「トーク上手くなったね」と向谷さん笑。この辺の掛け合いがねえ。堪らないよね。配信で見てる人もいるんだよね、と向谷さん。さすがはニコ生やり慣れてるだけあるなあと。


 でね、この方々には当たり前のことなのかも知れないけど個人的に驚いたのが、「星座の曲」=カシオぺア時代の曲、それも野呂さんや神保さん(神保さんとは今もこの2人と一緒に組んで演ってるにしてもさ)の書いた曲をサラッと紹介して演奏するところ!今回は “Take Me”と “Mid Manhattan”。Mid Manhattan昔から大好きだったから嬉しい〜!


 普通、脱退とか、解散とか、そういうことがあった場合、その時代の曲って、こうちょっと構えたり、アンコールでおとっときの曲として演ったりするものだと思ってたのね。それが本編、これからが本番だよというところで持ってくるって凄い。カシオぺアというバンドの懐の深さを思い知った気がする。そして改めて、形を変えつつもカシオぺアって、きっと今も昔も、とってもいいバンドなんだなと思った次第。ラストも星座時代の曲のメドレーだったし。「星座のバンドの曲って2人でやるの、難しいな〜!」と向谷さんは言ってたけど、そんなざっくばらんなトークと共に、オーディエンスが楽しめる、こういう空気感ってとってもいいなあ。





 で、これを凌ぐほどのサプライズだったのが!

 向谷さん、徐に、「配信で見てくれてる人がいるんですけど〜」てなことを言いながら、櫻井さんと2人で、その場で目の前のタブレットを見ながら、配信で見ている人が書き込んだコメントを!その場で!声に出して読み出すの!

 一瞬、「…え?大賀くん?」って(爆笑。


 我らがSensationのリーダーでギタリストの大賀好修さんが主催しているオンラインサロンにて、彼は配信中に私達が書き込むことを所々拾って読んで、音楽的な質問に答えてくれたりするんだけど、それとほぼ同じノリで、向谷さんと櫻井さんが、書き込みを拾って読んでくれるのである。これって凄くない?!まさか配信ライブ中に書き込みコメント読まれるなんて考えもしなかったよ!笑。

 「8がいっぱい来てます」「嬉しいですよね、パチパチパチって、8がいっぱい」とか2人で話すんだよ。もう嬉しすぎじゃない?配信組。


 偶然だろうが、櫻井さんがその後拾ったコメントが

「配信には本当に感謝してます」

だった。これはもう、配信で見ている人全員、本気で全員がそう感じていたはずなので、私までとても嬉しくなった。さすが!解ってるなあ櫻井哲夫!

 向谷さんの拾った「『セクシーなお二人』(笑)。新しい見方だなあこれ!足すと相当な年齢だぞ!」にも笑った。

 

 ここで、向谷さんの言葉を記録しておきたい。


 「配信の皆さんのチャットを読むってのも、私もずっとニコニコ生放送とかで…よくやってましたけど、…こうやって、ここに来ている皆さんと、時間を共有しているだけじゃなくて、多くのネットで見てらっしゃる…(櫻井さん「そうですね」)うん、極論を言えば全世界の人達が…(櫻井さん「大きく来ましたね!」)いやもうインターネットってそういうもんですから。まあそういう風に、いろいろな形で…(中略)。配信の方ありがとうございます」


「やはりライブの面白さってのは、今日ここで一緒にいる、この瞬間の音楽は、昨日でも明日でもない、と。今この瞬間のものだってのを共有しているというのが、音楽を一緒にやってて、皆さんと一緒にいられる喜びであります」


 「いいスピーチでしたね!今の」と櫻井さん、「これがプロの(スピーチ)」と向谷さん(笑。


 嬉しい言葉だった。もちろん、「また是非ライブに足を運んでみてください」ともお話ししていたけど、向谷さんだったらきっと、配信で見続けるオーディエンスのことも解ってくれるんじゃないかと勝手に思っている。

 櫻井さんと向谷さんそれぞれのソロ曲が続き、懐かしい「星座」の時代のメドレー(これがまたよかった!櫻井さんのチョッパーが冴え渡る!星座ってほんと、名曲多いよねえ)そしてアンコールまで、短い時間に盛り沢山の、始終楽しそうなお二人を見ていて、なんだかお花見気分にさえなってしまう、とても華やかなライブであった。








 櫻井さん「また宜しければ応援してください」、まあなんて腰の低い!

 こんな素敵な還暦、応援せずにはいられないじゃないですか。

 写真はブルーノートの公式Twitterや、向谷さん、櫻井さんのTwitterより。