文:見る聴く「2人合わせて『櫻井“鉄”夫』ー櫻井哲夫 with 向谷実@Blue Note Tokyoー(配信にて)」



 同窓会には出たことないけど、こんな世の中になって以来ほぼ毎日、高校時代からの友人とメッセージのやり取りをしているので、毎日が同窓会みたいなものである。気心の知れた友達と他愛ない話をするという一見くだらない日常がすっかり奪われた今、こうして日々文字での会話が出来ることが本当に嬉しい。


 だから、櫻井さんがライブの頭で、向谷さんと2人でステージに出ることを「同窓会的な気持ちで、皆さんと共有できたらなと思っております」と言った時、それがどれ程嬉しいことなのか、ちょっと想像つくような気がした。そしてそのシーンを目撃出来ることを、心から嬉しいと思った。





 カシオぺアといえば泣く子も黙る日本を代表するフュージョンバンドである。幾度かのメンバーチェンジを経て現在は3rdと名乗っている訳だけど、この3rdもとっても素敵だが、私としてはやはり80年代後半の、フュージョンが世間的にも相当認知され始めた頃のカシオぺアが懐かしい。高2の時、友達に勧められてインストものを聞き、相当ハマった時期がある。今、私がアホみたいに応援しまくっている今年結成10周年を迎えるインストバンド、Sensationへと繋がる道はこの辺から始まっていたに違いない。

 Sensationの皆さんは、4月16日に大阪で有観客ライブがある。これ、後追いでいいから配信しないかなあ〜!!!ああ心底見たい。


 カシオぺアもスクエアも聞いたし好きだったが、どちらかというとカシオぺアの方が好みだった。多分あの、跳ねまくる「あと打ち」のファンキーなサウンドが好きだったんだろう。

 その核となる部分を担うピアノ、そしてベース、この2人のライブを配信すると来れば見ない訳には行かない。ということで配信に臨んだ。


 1曲目、櫻井さんが一人でステージにやってきてソロで “Spain”を。これでもう全部持ってかれましたね。なんてカッコいいんだろう!ベース1本でプレイする「スペイン」。初めて聞いた。櫻井さんの、ビィーンと鋼みたいな音のするベースが激渋。

 物腰の柔らかな人だよね、櫻井さんって。言葉も丁寧だし、笑顔も素敵。何より素敵だったのが衣装!可愛いピンクの、サイケデリックとも言える大胆な模様が入ったシャツ。これがお似合いで。桜の季節に合わせたのと、櫻井さんだから、ということみたい。


 と思ったら!2曲目の前に入ってきた向谷さんがなんとお揃いのシャツ!!!ええペアルックなの?!笑。しかもこれがまた可愛いのなんの。向谷さんはスモーキーな濃いピンクのパンツでシャツをイン。方や櫻井さんは黒いパンツの上にシャツをアウトにして。帽子も似合ってたなあ。

 激渋のオジサマ2人がピンクの柄シャツで並んだ姿はこれまで見た配信ライブの中でも12を争う程のインパクト。これ忘れないと思うな。


 お二人とも還暦を過ぎていらっしゃるからこそ似合う、というのもあるかもだけど、ねえ、Sensationの皆さん、どうでしょう?こんな素敵で可愛いお揃いの衣装でライブしませんか一度くらい。絶対似合うと思うんだけどなあ。今回の16日のライブはどうです?春らしい、やっぱりピンクの衣装とか。


 流れるような美しいピアノソロから、向谷さんの “Reflections of You”、 そして櫻井さんの “Sailing Alone”へ。どちらの曲も、どこか海も思わせる大きく畝るビートが気持ちいい。向谷さんというと「トークと電車の人」というイメージが強いけど、やっぱりこうしてプレイを聞くと一流だなあとため息が漏れる。響きが綺麗なのよね。この方も決して音を濁らせない派。そこに入ってくる櫻井さんの、少し尖ったベース音。低いけど重過ぎないのがいいバランス。






 なぜか写真が多いSensation笑。

 一番上、左が大楠くん、右が麻井くん。もう一人はもちろん大賀くん。

 

 ピアノとベースのアンサンブルってことは、大楠くんと麻井くんが2人でライブするようなものなのだけど、いや、これはこれで見たいな私。優しい2人のアンサンブルってどんなかしらね。Sensationのライブって、そういう、4人の中の2人で絡むとかはないのかしら?あってもよさそうな気がする。だって巧いんだもの、4人とも。ああ見たい。頼むから配信で見せてくれ(さっきからこればっかしw)。


 MCでの、2人の掛け合いが絶妙。さすが45年前からの付き合い。トーカティブな向谷さんに穏やかなツッコミをする櫻井さん。と思ったら、向谷さんに対して櫻井さん曰く「インターナショナルな体格」。すかさず「トーク上手くなったね」と向谷さん笑。この辺の掛け合いがねえ。堪らないよね。配信で見てる人もいるんだよね、と向谷さん。さすがはニコ生やり慣れてるだけあるなあと。


 でね、この方々には当たり前のことなのかも知れないけど個人的に驚いたのが、「星座の曲」=カシオぺア時代の曲、それも野呂さんや神保さん(神保さんとは今もこの2人と一緒に組んで演ってるにしてもさ)の書いた曲をサラッと紹介して演奏するところ!今回は “Take Me”と “Mid Manhattan”。Mid Manhattan昔から大好きだったから嬉しい〜!


 普通、脱退とか、解散とか、そういうことがあった場合、その時代の曲って、こうちょっと構えたり、アンコールでおとっときの曲として演ったりするものだと思ってたのね。それが本編、これからが本番だよというところで持ってくるって凄い。カシオぺアというバンドの懐の深さを思い知った気がする。そして改めて、形を変えつつもカシオぺアって、きっと今も昔も、とってもいいバンドなんだなと思った次第。ラストも星座時代の曲のメドレーだったし。「星座のバンドの曲って2人でやるの、難しいな〜!」と向谷さんは言ってたけど、そんなざっくばらんなトークと共に、オーディエンスが楽しめる、こういう空気感ってとってもいいなあ。





 で、これを凌ぐほどのサプライズだったのが!

 向谷さん、徐に、「配信で見てくれてる人がいるんですけど〜」てなことを言いながら、櫻井さんと2人で、その場で目の前のタブレットを見ながら、配信で見ている人が書き込んだコメントを!その場で!声に出して読み出すの!

 一瞬、「…え?大賀くん?」って(爆笑。


 我らがSensationのリーダーでギタリストの大賀好修さんが主催しているオンラインサロンにて、彼は配信中に私達が書き込むことを所々拾って読んで、音楽的な質問に答えてくれたりするんだけど、それとほぼ同じノリで、向谷さんと櫻井さんが、書き込みを拾って読んでくれるのである。これって凄くない?!まさか配信ライブ中に書き込みコメント読まれるなんて考えもしなかったよ!笑。

 「8がいっぱい来てます」「嬉しいですよね、パチパチパチって、8がいっぱい」とか2人で話すんだよ。もう嬉しすぎじゃない?配信組。


 偶然だろうが、櫻井さんがその後拾ったコメントが

「配信には本当に感謝してます」

だった。これはもう、配信で見ている人全員、本気で全員がそう感じていたはずなので、私までとても嬉しくなった。さすが!解ってるなあ櫻井哲夫!

 向谷さんの拾った「『セクシーなお二人』(笑)。新しい見方だなあこれ!足すと相当な年齢だぞ!」にも笑った。

 

 ここで、向谷さんの言葉を記録しておきたい。


 「配信の皆さんのチャットを読むってのも、私もずっとニコニコ生放送とかで…よくやってましたけど、…こうやって、ここに来ている皆さんと、時間を共有しているだけじゃなくて、多くのネットで見てらっしゃる…(櫻井さん「そうですね」)うん、極論を言えば全世界の人達が…(櫻井さん「大きく来ましたね!」)いやもうインターネットってそういうもんですから。まあそういう風に、いろいろな形で…(中略)。配信の方ありがとうございます」


「やはりライブの面白さってのは、今日ここで一緒にいる、この瞬間の音楽は、昨日でも明日でもない、と。今この瞬間のものだってのを共有しているというのが、音楽を一緒にやってて、皆さんと一緒にいられる喜びであります」


 「いいスピーチでしたね!今の」と櫻井さん、「これがプロの(スピーチ)」と向谷さん(笑。


 嬉しい言葉だった。もちろん、「また是非ライブに足を運んでみてください」ともお話ししていたけど、向谷さんだったらきっと、配信で見続けるオーディエンスのことも解ってくれるんじゃないかと勝手に思っている。

 櫻井さんと向谷さんそれぞれのソロ曲が続き、懐かしい「星座」の時代のメドレー(これがまたよかった!櫻井さんのチョッパーが冴え渡る!星座ってほんと、名曲多いよねえ)そしてアンコールまで、短い時間に盛り沢山の、始終楽しそうなお二人を見ていて、なんだかお花見気分にさえなってしまう、とても華やかなライブであった。








 櫻井さん「また宜しければ応援してください」、まあなんて腰の低い!

 こんな素敵な還暦、応援せずにはいられないじゃないですか。

 写真はブルーノートの公式Twitterや、向谷さん、櫻井さんのTwitterより。





 



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