文:見る「『聖なる夜に、男4人で集まって』ーSensation “オンライン DE Show!! Vol.3“(配信ライブ)ー」




 よく「頭が沸く」とか、ちょっと大袈裟に言いたい時に使ったりするけど、今回、当ブログきってのご贔屓インストバンド、Sensationの配信ライブを見て、その真っ直ぐな熱気と半端ない技術の高さ、オーディエンスを楽しませるサービス精神に、本当に文字通り頭も心も沸いた。


 随分長い間、配信という形に慣れてしまっていて、今でもそれを否定するつもりはないし、これからも続けてほしいという気持ちに全く変わりはないんだけど、しかし今回Sensatonのライブを見て、久しぶりに、本当に久しぶりに、いつか必ず、この人達のナマの演奏を聞きたいと本気で思った。そして、その日を待ち臨もうという気になったことを心から嬉しく思った。


 自覚なきまま、私もコロナ禍でいつの間にか生気を吸い取られていたのかもしれない。そのことにあらためて気付かされ、また、元に戻るというのではなく、新しいメソッドの下で、顔を合わせたいと欲してもいいのかも、と思わせてくれた。


 いつになるのかはわからない。けれど今までと違って、その日はいつか必ずやってくるのだと強く感じられた。希望っていうのかな。この3年近く、ちょっとどうでもよくなっていたようなものが、そうじゃなくて、胸に秘めてていいのかなと初めて思えた気がする。

 やっと火が灯った気分だ。




 以下、どこも余すところなく書けるだけ書きたいので、1曲目から全部思ったことを書いていく笑。





#1 Rydeen (Urban Jazzy Version) ※勝手に命名w

 まさかあのイントロでこれが始まるとは思わなかった。オシャレで大人な夜の雰囲気。車谷くんオハコのジャジーなドラムが最高。アップテンポで、少し跳ねる感じの。

 大賀くんが1曲まるっとこれでアコギを弾くのも見ものだった。ソロももちろんアコギ。大楠くんのピアノと掛け合った後で怒涛のソロに入る麻井くんのベース、それに激しく畳み掛けてくる車谷くん。下を蠢くリズム隊が気持ちいい。で、4人でテーマに戻ってクールに決める。いいねを100万回くらい押したくなる。




 このバンドが好きな人はみんな同じだと思うんだけど、彼らは他のミュージシャンのサポートに入る時、それが配信だったりテレビだったり、いずれにしても、端にいるんだよね。後ろとか。で、余り映らない。仮にステージ上であっても、少々下がった場所にいたりする。要するに、彼らだけを見るとなると結構大変なのである。例えば大賀くんなら、ひたすら左端だけを見つめるとかね笑。


 もちろんSensationでのプレイだって、大賀くんが真ん中になるからどうしたって麻井くんは向かって右とか大楠くんなら左とか、車谷くんはドラムだから後ろとかにはなるんだけど、でもそれぞれに必ず見せ場があって、ソロもあって、しかも映る時間は長い。カメラだって1人に対して何台かが拾ってくれていて、同じ角度ばかりという訳でもない。ご贔屓ギタリスト大賀くんへの欲目もあるのかもしれないけど、でもSensationでは全員が主役なんだと思ってる。だから、大賀くん以外の3人に、本当によく目が行き、見ていて楽しくて仕方がない。


 色んな意味で、バランスの取れたバンドだと思うし、彼らにとってはやはりここがホームグラウンドなんだろう。




#2 Chaotic world (Adult Cool Version)※とこれまた勝手に命名

 イントロ聴いてビビったね。大賀くん、これはクローズドコミュニティで披露してくれたあのオリジナル曲のイントロでしょ?って。メンバーに言ったのかな? 「これやってみてもいい?(Can I try it?) 」って笑。


 タイトルがカオスな割には実にsophisticatedなアレンジなもんで、大人の耳にこそ聴いてほしい1曲。大賀くんのアコギのカッティングの音が印象深い。全体的に派手さがなりをひそめて、やっぱし夜、でも少しだけ(原曲のイメージより)陽気な夜が似合う曲となっていた。と思ったんだけど、これは朝聞いても結構似合うことが解った。多分アコースティック・ギターの音色の乾き具合のせいかもしれない。


 ちなみにこの原曲を聴きながら押し入れの大掃除をしていたことがあり、そのせいで私にとってはこれは「我が家の押し入れの曲」ということになっている。だったらAdult Cool OSHIIRE Versionか?w





#3 Fantasista

   エレピとアコギが今回の特別バージョンらしくクールに導入を決めた後、お馴染みのあのイントロへ。ここから大賀くんがエレキギターを弾き始める。


 大賀くんがアコギからエレキに変え、多分音色をいじっている間の大楠くんのピアノソロをよく見ていると、大楠くんがほんの一瞬大賀くんをチラ見して、ピアノソロの長さなどの塩梅を測っていると思われるシーンがあり、もうなんというか、「阿吽の呼吸」ってヤツなのかなと。


 この辺からみんな少しずつ表情が柔らかくなるんだけど、本当に4人ともよく似た表情をするバンドである。全員、口を真一文字に結んで真面目な顔して演奏していたのが、明るいけどちょっとだけセンチメンタルが混じったメロディに乗って笑顔が出てくるようになるのがいい。




 配信だからさ、観客がいないやりにくさがあって、余計に表情が作りにくいってのはあっただろうと思う。自分達で自分達を盛り上げないといけないというかさ。だけどそこはもうプロだから、数曲演って互いのリズムがピタリとあえば、口元も少し緩む。配信ライブだとそういうのが見てとれるのもいいんだ。これがステージだと見えないもん。遠くて笑。




 実はとても仲がいいんじゃないかと思う、このバンド。長い付き合いだけあってか、べったりとかじゃなくて、気が合うというか、合わせることを知ってるというか。呼吸が解ってるというか。合わせることが苦ではないナチュラルな感じがとってもよく出ていた。


 

 ここまでもこの後も全部そうなんだけど、曲の終わりにさ、一斉に車谷くんの方をくるっと向いてさ、彼に最後を締めてもらうところ、めちゃくちゃいいんだよね。バンドなんだから当たり前かもしれないけど、息が合ってるんだなと思って嬉しくなる。


 他にも、大楠くんにソロを渡す時に大賀くんが視線を送ったり、大賀くんがソロを弾いている時に麻井くんが控えめに目を遣っていたり。車谷くんが大賀くんを見ているのを大楠くんが見て楽しそうに微笑んでいたり。そんなのが、後半になるに従ってどんどん見受けられるようになる。


 バンドを見るってのはさ、こういうシーンを見たくて見てんのよね。誰か1人が大将というのではなくて、演奏が始まったら互いに対等になる関係。少なくとも今の私には、それが気持ちいい。





*MC:大賀くん(以下MCは抜粋)

「僕たちの演奏を配信という形で届けられることを嬉しく思います」


「メンバーとも久しぶりです。リモートでは会ってたんですけど、直接会うのは…いつ以来?ああ、5月のアコースティックライブ以来です。なのでめっちゃくちゃ、半年以上ぶりなんですが、でもね、音を出してみれば不思議なもんで、あっという間に、Sensationの音に、『シュッ』とすぐなって…やっぱりね、こう、一緒にずうっと培ってきたものが、あるなあって感じました」 ※聞いててなんかジーンと来た


「(配信を見て)みんなきっと楽しい楽しいと言ってくれていると信じています」


「僕たちは10周年イヤーに入りました!…って、誰やったっけ?大楠しゃんが言ってくれたんやっけ?」 ※忘れていたのかリーダーw


「僕たちメンバースタッフで10周年をいい感じにして行けたらと思ってますんで、楽しみにしてて下さい!」



#4 雪華

 大賀くんと大楠くんが和音で奏でる冒頭の美しさったらない。アコースティックギターの音色の際立つ曲であるが、途中からエレキが入ると更にパワフルに。やや重厚な麻井くんのベースの音も、車谷くんのリズムを奏でるところから後半の力強いドラミングになるところもいい。これは音源で聴くのも素敵だけど、実にライブ映えする曲だなあと思う。ラストの締め方もクール。



#5 Ripple

 アコースティックライブとして、大きな聴きどころのひとつだった。

 「雪華」からの滑らかな入り方が美しい。エレキギターの音を数小節で変える辺り、細やかなスキル。それって、ギターという楽器に対して真摯であり続けてるってことでしょ?また、アドリブと思われるソロがほんとに力一杯かっこいい。これは堪らんやろ!って感じ。激渋。お酒飲みながら聞きたい本気で。


 大楠くんに顔を向けて合図して、ソロが交代するんだけど、大賀くんのギターの渋さに応えるように、大楠くんが最初鍵盤の下の音域の方でアドリブ弾くところがこれでもかってくらい「くぅー!」って感じ。低音が多いと大人っぽくて落ち着いた感じがして好きだ。で、そこから段々と音が上がって行って、こっちの気持ちにググッと入り込む。何度も繰り返して聞くほど深まる味。そして音源でもお馴染みの麻井くんのお見事なソロ。いつ聴いても彼のソロも、まるで歌うよう。大賀くんもそうだけど、歌える人が奏でるソロだよね。




 ちなみに麻井くん自身のTwitterによると、今回のライブのベースソロは、最初から決めている(『決め打ち』というらしい)ものと、完全にアドリブのものと両方あるとのこと。どれがどうなのか、そこまでは解らないけど、でも他のメンバーのプレイを見てると、ちょっとだけ予想はつく気がした。まあ、外れてる気もするので書かないけど笑。


 麻井くんは、とてもSNS上手だ。大賀くんもインスタを自在に操る術を心得ている人だが、麻井くんは一般のファンとコミュニケーションを取るのが実に上手い。丁寧過ぎず、素っ気なさ過ぎない言葉や態度と、やたら近づき過ぎず、かと言って線を引き過ぎることのない間合い。互いに気持ちの良い距離感を心得ている。SNSにおいて、麻井くんはミュージシャンである前に1人の人間として、その場にあろうとしている。これが魅力なのだろう。

 そして2人のこの辺りが、一昔前のミュージシャンとは全く違うところである。




*MC:大楠くん

※赤のキャップが鍵盤のボディの色と合っていて、パッと華やか。明るい色味の少ないステージを上手く演出していた。

「(「雪華」と “Ripple”の後で)いいですね…」(と、しみじみ)


「この、人肌恋しくなる季節…いかがお過ごしでしょうか、皆様?…僕は元気に過ごしております」

※この辺から段々全体のMCの雰囲気が変わってくる笑


「これ、収録と言いつつ、ガッツリライブと思て演奏してますので、我々は。届いてますでしょうかね?」


「(Sensationのサブスクが解禁になったことに触れて)『え?!もうCD持ってますよ!』という方もおられるでしょうけども、サブスクで聞きつつ、CDは、あの、なんかあった時用に置いといて頂いてね、ダブルで聴けるということで」 ※なんかあった時用w


「(未収録曲 “Orizuru”に触れて)サブスクには入っておりません、ライブ専用となっております。こちらはまだタイトルがついておりませんでした。そこで皆さんから募集致しまして、メンバースタッフ、厳選なる抽選…あ、抽選じゃないですね(笑)、選考致しまして、このタイトルに決定致しました。(中略)これは、外国の方も読めたり、興味持って頂けるような思いも込めておりますし、我々の思いも込めまして、また皆様の思いも込めまして、完成致しました」



#6 Orizuru(未収録曲)

 オリエンタルな雰囲気のある、ミドルテンポのマイナーなパワーチューン。切なさ100%のサビのメロディがなんともキャッチー。この、キャッチーなメロディというのも彼らの音楽の特徴だと思う。ピアノとギターでユニゾンする部分など美の極み。間奏のベースも相変わらずの美メロ(めちゃ自信ないけど、こ、これがもしかして、決め打ちってヤツなのだろうか)、からのクレシェンド。なんかの主題歌にしてもいいんじゃないのか。最後、落ち着かない不安定なコードで終わるのも味があっていい。


 ファンの間でも人気が高い曲のようだが、大楠くんの言葉を借りれば今のところ「ライブ専用」だそう。この曲、メロディが歌える程大好きになったからちょっと残念だけど、個人的にはそういう特別な曲ってあってもいいかなって思ってる。




 その昔、FENCE OF DEFENSEのライブに通い詰めてた頃(若かりし頃からプロ集団が好きだったんだよなあと最近あらためて思う)、彼らに “Parallel”という名曲があり、ファンはこれのイントロがアンコールで流れるとより一層沸きたったものだった。デビュー当時から確かあった曲で、しかも音源化されてなかったので、一緒に行っていた先輩はよく、暗がりで歌詞を書き取っていた(この先輩はポケットにメモ帳を入れて、いつもセットリストも書いていた。私が今、配信ライブでセトリを書きながら聞いているのは、彼女の影響である)。私も、サビの「ラララ」で歌われるメロディを今でも覚えている。こんな記憶も悪くない。



#7 On The Sunny Side of The Street

 朝ドラの挿入歌に肖って、のナンバー。いやあ嬉しい、スタンダードジャズを演奏してくれるなんて。

 大賀くんのアコギのイントロ、ミニー・リパートンの “Lovin’ You”を思わせるコード進行、からの大楠くんのピアノの音の濁りのなさ。いいねえ。どうして彼のピアノはこんなに穢れがないのか。途中、ギターとベースの掛け合いから、ドラムが入り、またベースへ、ギターへ、ピアノへ、ドラムへ…。まさに王道ジャズ。大賀くんの好きなスポーツに例えるなら、みんなでサッカー場でパス回しをしているみたい。こんなのナマで聴きながらお酒が飲める日がくるといいなあ(酒ばっかじゃんw)。大賀くんがエレキへと移って(スイッチング)から、4人で盛り上がっていくのが楽しい。スライダーの音にもスタンダードジャズへのノスタルジーを感じた。





*ベースソロ&ドラムソロ

MC:大賀くん

「On Bass! 麻井寛史!On drums! 車谷啓介!」



 麻井くん、バンドカラー の白いシャツのチョイス、ナイス過ぎでした。見事にステージ映えしていたと思う。特にこのソロシーンの青いライトに照らし出された姿、神々しかった。困ったら白シャツってのは正解だね。前髪が長いのもすっごくよかった。ああいう、長い前髪を斜めに下ろして目が片方隠れ気味になるのって、本人は邪魔かもしれないけどw、見ている分にはいい。


 彼のベースのキレの良さ。いいねえ。以前やはりTwitterで、徳ちゃん(徳永暁人さん)との違いについて問われ、「圧倒的にパワーが違う」というようなことを答えていたと記憶しているけど、麻井くんの持ち味は、パワフルさではなくて繊細さだと思う。逆にぶっとくないこその味わい。


 彼の、少し高い音のポジションでのプレイは最高。ポワンとかボワンというユニークな音も好きだ。少し跳ね気味の。いい具合の軽みがある。



 で、嵐を呼ぶ男、車谷くんの怒涛のドラムソロ。細やかな音が上手いよねえ。ベードラももちろんいいんだけど、スネアとかハイハットとかシンバルの音こそ彼の音かなあと思う。ハイハットが小気味いい。彼もまさにジャズメンの音使い。なもんで、ドラムでさえ歌っているような感じがする。


 リズム隊がこんだけ上手いんだもの、聞いてて気持ちいいに決まってる。そんな車谷くん渾身のソロ!からの次の曲入り。これも痺れた!



#8 Four (Acoustic  Urban Jazz Version)※車谷くん命名(後述)

 今回イチオシの聞きどころ。アレンジの無限さを伺わせる1曲であり、彼らのアレンジの巧さに唸る1曲でもある。まあ全部っちゃもちろん全部だけど、これは1、2を争う程、今回のライブの目玉じゃないかな。特にジャズファンには堪らない。


 大楠くんや大賀くんがどんどん笑顔になっていく。楽しくて仕方ないんだろうなあって解るから、こっちも一層楽しくなる。これをこんなにアコギで弾いてカッコよくなるとは。アコースティック・ギターって無限。


 ピアノもギターも全体的に音の低いところから始まってどんどん上がっていって、高揚感が出る。大楠くんのソロ、すっごくいい。そこを支えるベースが跳ねてる、と思って見てると、麻井くんがノリノリで弾いてるのが解ってこっちまでご機嫌に。弾いてる人まで気持ちいいサウンドなのね。


 大賀リーダーのソロを後ろから見つめる車谷くん、を見てニコニコしている大楠くん、なんて場面もカメラがちゃんと拾ってくれてるのが嬉しい。

 こんな曲、めちゃいいホテルの最上階のラウンジで聞きたい。いや本気で。ってまず部屋代出せないけど笑。



*MC:車谷くん

(注:私がMCの再録をしようと思ったのは、全て彼のMCがきっかけでした)


「(Fourは)配信ライブ用のアレンジで、アコースティック・アーバン・ジャズ!な感じ」

大楠「かっこいいですね」

大賀「全部混ぜただけやん(笑)」

「とてもアーバンな仕上がりになったかと思います」

大楠「自分らで(笑)」


「1月28日になりました!もう年も明けて。とはいうものの、僕達はですね…あんまり年が明けてる感じがない、というかですね、年明けって言っても、こう、むずむずした感じがあるんですね(全員笑)」

大楠「なぜなら」

麻井「なぜなら」

「なぜなら、収録なんで、まだ年明けてないからね」※大爆笑

大賀「ゲーノージンになったみたいな気分ですよね」

「そうですよね(笑)」

大楠「しかもクリスマスですからね、今」※大爆笑

大賀「言ってるし(笑)」

「聖なる夜に撮ってるっていう(笑)」

大賀「メリークリスマス!」

大楠「聖なる夜に、男4人で集まって頑張って演奏する(笑)」

全員大笑。


「1月28日、何してると思います?」

大賀「僕は多分…って僕はどころかみんな、リハーサルしてんじゃないですか(笑)」

大楠「ちょうどおんなじリハーサルに参加してるんじゃないですか全員で(笑)」

大賀「僕は、リハーサル終わって、デスクに座ってクターってなってると思います」

「僕かもしれませんねそれ(笑)。もうクッタクタになってるかとは思います」※そうか車谷くんはいつもそんな感じなのかw


「予想では、全員大詰めかと」

全員大笑。


大賀「未来の僕は、これ(今回の配信ライブのこと)を…なんて言ったらいいんかな、これを、ナマで見てると思うんですよね(笑)多分今、ナマで俺を見てるんですよ」

「ナマで収録を見てる(笑)」


「(4月に有観客ライブが決定したことに触れて)やりましたよ〜!」

大賀「これ見てるみなさんは、絶対、絶対、絶対、絶対、絶対(と言いつつ左右に首を振りながら)、来て下さいね。めっちゃ久しぶりやから」

「ようやく、皆さんのお顔を眺めながら(3人爆笑)、こちらも演奏出来るというね」

大賀「『眺めてもらって』はいかんの?(爆笑)。眺めながらやの?」

「我々もお客さんのお顔を、舐め回すように眺めながら(3人大爆笑)、演奏できますんでね、楽しみではあります」


「次はですね…僕達、インストバンドではあるんですけど、これまたお得意の…(3人とも笑いが止まらない)、お得意中のお得意ではあるんですが、ボーカル曲…」

大賀「お得意やったらインストバンドやってへん(爆笑)」

「そか(大笑)」


※車谷さん、最高の演奏および最高の笑いをありがとうございます。


「次の曲は…大賀さんにも割と、ゆかりのある曲なんじゃないでしょうか」

大賀「そうですね…カッティングという技があるんですけど(と言って実演してくれる)、これを1番最初に覚えたのがThe Doobie Brothersの “Long Train Running”と、あと、日本のギタリストで僕が敬愛してやまない方で、(この技に)目覚めました。僕が、もう最高にリスペクトしてるギタリストの方の曲を、カバーしたいと思います。Charさんですね」





#9 Smoky

 この曲が嫌いな人が世界中にいようか(いやいる筈がない、という修辞疑問)、という程の名曲中の名曲を、まさかSensationがカバー、しかも大賀くんと麻井くんのツインボーカル(あえてコーラスとは言わないでおく。麻井くんはこれはコーラスだけど、リードボーカル取れる人だし)で聴けるとは夢にも思っておらず、配信とはいえこの最高の贅沢に身悶えし、聴くたびに部屋で踊りまくった。そうよ、これは踊る曲だから。




 私は2016年にCharのライブに行っている。というか、来てくれたのだ、ここに。某有名神社の能楽堂でライブをすると聞き、チケットを調べたらまだ残席があったので、結婚して1年も経っていなかったが、私は自分の母を誘って行った。音楽なら、夫より母の方が解ると確信していたので。


 能楽堂は野外で、基本的にはアコースティックライブだったのだが、やはりアンコールにはこのSmokyである。皆が立ち上がって手拍子したり踊ったりしていた記憶がある。神社というのは祭り事を行う場所なので、きっと神様も喜んでいたのではないかと勝手に思っている。大人な雰囲気の、楽しいライブだった。隣に座っていた結構いい歳の「元にいちゃん」(笑)2人がウイスキーの小瓶を持ちこんでちびちび飲りながら聞いてたのも今ではいい思い出w




 で、Sensation。

 いやあ、歌がうまい。大賀くんてさ、どうしてボーカルやらないのかなってくらい上手い。いい声なんだ。若い声。よく通るし、艶っぽくて透明度もある。ビブラートの掛け方も最高に上手くて、実に気持ちよさそうに歌う。ファルセットもきれい。

 そうだなあ、身体の奥の芯の方を鷲掴みされた気分になる声、とでも言おうか。(話す声の時にはそんなこと余り感じたことなかったんだけど。)


 でも!大賀くんとはまた違った魅力がある声なのが麻井くん。高くて大賀くんより少し繊細でとっても柔らかい声。いやあセクシーだろ、これは。誰も言わないからあえて言うw。だって、インスタでやりとりのある女性陣の全員(1人や2人じゃない)が「麻井くんいい声〜♡」と本気で聞き惚れていたんだもの。もちろん私も好きだってことは、以前、植田真梨恵嬢の配信ライブ記事に書いた通り。


 麻井さん、聞いていますか〜?(聞いてないよねw)

 次、もっと歌ってくださいってみんな言ってましたよ!

 と、ここで密かに叫んでおく。


 この2人が歌うんだよ?Smokyを。しかも息ぴったし(どのくらいまで音を伸ばすのか、まで一分の狂いなし)。無論プレイは一流。どうよ、最強じゃない?Charでカッティングに目覚めたというだけあって、大賀くんも数段キレがいい感じ。ソロも最高気合い入ってて長めで痺れまくり。大賀くんお得意のアンプでの音作りのせいか、いい音だった。


 この曲の時の、大賀くんの文字通りキッラキラの笑顔が眩しい。カメラマンならまさにシャッターチャンス。でね、その後ろで麻井くんが控えめにニコニコっと笑ってる。このツーショットはヤラレるでしょ。


 麻井くんが、大賀くんのソロが始まったところで、オーディエンスがこの曲の時にやるのと同じように、ハンドクラップをちょこっとしてるのが映る。自分の入るパートの前、数小節なんだけど。ほんとに痺れた。だって無観客なんだよ?でも、そんなこと関係なくやってる。思わず出たというか、いつものことというか。いずれにしても、個人的には今回の名シーンのひとつ。


 バッキングの大楠くんの、浮遊感のあるキーボードの音も身体に気持ちいい。ちょっと70年代風なエレピの音作りでのソロも渋くて。こんなの聞いてたら大人しくなんかしてられないわ。踊っちゃうわよ。彼も本当、なんでも弾ける御仁。キレッキレのMCに負けず劣らずキレッキレのドラミングな車谷選手も天晴。



#10 Can’t live, Can’t help

 麻井くんの声にやられる人続出の1曲。青年というか若干まだ少年の声。さっきも書いたけど、女子みんな恋しちゃうからね。大賀麻井のツインボーカルに大楠くんも入ってのコーラスワークもよかった。


 この曲って元は女性の声で歌われてる訳だけど、男性が歌うと歌詞のせいかセクシー度が上がるね。とはいえ、カラッとした空気感は変わらず。思春期なんだよなあ、この人たちの曲ってどこまでも。


 大楠くんのキーボードからの大賀くんのギターソロがいい。車谷くんのタイトなドラム捌きも最高。彼の、決して派手なプレイじゃない(ここが好きだ)けど安定したリズム感。美学だよねえ、この存在感。



#11  rumble!!

 歌物の後、盛り上がって参りました!的な感じで大楠くんがオルガンサウンドで煽る(大楠くんはこのイントロの動画を配信直前にインスタに上げてくれていた。何気に一番目立つコマーシャルだったと思うし、とても嬉しかったのは私だけではない筈)ところへ大賀くんのエレキが入っていく。これがまたぎゃぎゃーんとした派手なディストーション。その後大賀くんがクルッとひっくり返って音を作り直すのが解る。そしておなじみのイントロのメロディへ行くのだがまたこれがしっぶい。元曲も渋いけど更に渋さが増した感じ。


 しかしながらなんつってもこの曲のキモは車谷くんのドラム、というかグルーヴ感だろう。こういう曲はドラムが良くないと絶対ノれない。本人のリズムとこちらの求めるリズムがぴたりとあったような気持ちよさだ。ほんっと引き出し多い。


 麻井くんの怒涛のベースソロからの大賀くんのややギラついた音での派手なソロに痺れる。彼の真骨頂といった感じ。スライダーを使ったソロを弾くのを時々見やる麻井くん。みんな相当ノって弾いてるな叩いてるなって表情からもわかる。


  互いにやたら見るって訳じゃないけど、ちゃんと相手を、メンバーを時折見てるのがいいんだよね。なんていうか、スリリングな感じがあるのよ。仲良くせめぎ合ってるというか。曲がrumbleだけあってそんな雰囲気。男子って馴れ合いだけじゃダメだよねきっと。妙に爽やかな切磋琢磨。



*MC:麻井くん

「さて!Sensation、オンーーーーーーーー(と伸ばしながら視線で大賀くんや大楠くんに助けを求める麻井くん)ラインDE  SHOW!ボリュームスリー!(笑)」


「大盛り上がりです!(笑)宴タケナワでやって参りましたが、アコースティックあり!…えーとなんでしたっけ?アコースティック・アーバン・ジャズあり!お得意の歌あり!ロックあり!ギターソロあり!ピアノソロあり!ドラムソロあり!」

大賀「要は何でもやりたいのや」

「何でもやりたいんです!何でもやりたいおじさん達です!(笑)」


「この曲を演り初めてもう10年経つのかって…。10年前って…僕33歳なんですけど。めちゃ若いですよね」

大賀「…俺、もう[その時]40(笑)」

「あそか(笑)」


「そんな、若かった僕達の、今はおじさん達の、カッコよい、デビュー曲を聞いてください」





#12 Sensation

 全員の笑顔が弾ける1曲。まさに見どころ。始まった時の硬さは何処へやら。こんなリラックスしたニッコニコのライブ見ちゃったら声出すなとか言われても絶対無理な気がする。しかし今更だけどデビュー曲が凄まじくかっこいい。何百回って聞いた曲だけど、こうして生プレイで聴くと、配信であっても感動もひとしお。聴くごとに新鮮でありながら、10年分、味わいが深まっているようにも聞こえる。全員に見せ場があるしね。


 麻井くんがこの前のMCから左腕を揉んだり回したりしているのがわかる。相当使ってるよね。ベースって重いし。でもプレイに全く出て来ないのが素晴らしい。車谷くんのタイトなドラムも大楠くんのブレない綺麗目な音も印象に残るし、大賀くんが大楠くんの方を向いて互いにニコニコしながらギター弾くシーンなんかも、ライブならでは。できれば麻井くんともこんなシーンがあったら。ほら、あの、2004年のあの時みたいにさ。



#13 Night Breeze

 昨年出たばっかりの新曲が聴けるとは感無量すぎる。一番最初の曲と一番最近の曲の、怒涛の畳み掛け。大賀くんのサビのギターの音が、まさにエレキギター!って感じでクリーン。麻井くんのベースってAメロ、相当音符が動いてるとあらためて気づく。ギター、ベース、キーボードで同じメロディを弾くところは圧巻。全部で4人しかいないのに、こんな厚みのある音なのか、と思う、シンセが入ってるとはいえ。大賀くんは、アンプで音を変えるというタイプのプレイヤーだとのことなので、そういう各箇所の工夫というか、アイデアというか、そんなのが遺憾なく発揮されているのかもしれない。


 フィニッシュかなと見せかけて最後までサービスあり。いきなりハードロックなメロディ入っちゃうし、リーダーがサービス精神ありまくりだからね。

 最後、全員が、120%の全力出し切った感のある顔をしていた。

 麻井くんは「おじさん」とか言ってたけど、もちろんあの完璧な音は壮年の熟達した部分も大いにあるけど、響きは青年だったよ。




 流石に4月の有観客ライブは、場所も大阪だということもあるので行けないけれど(これ配信しないかなあ〜!お願いします!また書くから!笑)、冒頭に書いたように、彼らの配信ライブに、私はなぜか大いなる未来への希望を貰った気がしている。

 いつか、なんて書いても、本当にそのいつかが来るのだろうかってずっとどこかで懐疑的だったけど、やっぱし、確実に来るような気がしてきた。


 年は取ってしまうだろうし、姿形も衰えてくるだろうし、女としてはこの先いいことってあんまりないかもしれないけど(書くとまた暗澹たる気持ちになるが苦笑)、その時はその時で、別の何か「いいこと」を探せそうな気もしている。隠し方だって上手くなってくるだろうしさ笑。

 ここまでサバイブしてきたんだもの。今の気持ちのまま、いつか彼らに会いに行けたら本望だ。


 12,000文字も書いてしまった笑。原稿用紙30枚以上じゃんwww




文:聴く「月影の星々ーSensation “Sensation IV” (アルバム) & Sensationとホロスコープー」



 それがたとえ決して手の届かない人であっても、好きな人が出来ると、人間必ずと言っていい程やってしまうのが、星座占い。

 別に縁なんかなくても、相性がいいと単純に嬉しいし、もしあまり良くなくても、相手のことがちょっとだけ分かったような気になれるのが(気になれるってところがポイント)、星座占いのいいところ。

 とはいえ、今更私との相性の話したって面白くも何ともないのでそれはさておき、早速本題に入る。

 本題とは。

 当ブログではお馴染みのスーパーギタリスト・大賀好修さん=大賀くん率いる、これまた愛してやまないインストルメンタルバンドSensationの面々を、占星術で切ってみよう!ってこと。





 一口に星座占いと言ってもいろんな見方がある。まずはスタンダードなところでサクッと見ると、


大賀くん:牡羊座

大楠くん:牡牛座

麻井くん:牡牛座

車谷くん:山羊座


となり、ここで我らがリーダー大賀くんのみ「活力の象徴で、ワクワク大好きな火のエレメンツ」で、後の3人は皆「現実的で安定感を好む、まとめるの大得意な土のエレメンツ」だということがわかる。

 一般的に、火は風と、土は水と相性が良いとされており、よってここだけだと「リーダー vs 3人」という図式がすっかり出来上がってしまうように見えるw

 ところが占星術には別の見方「サイン」があり、それによると、


大賀くん(牡羊座)と車谷くん(山羊座):活動宮

大楠くんと麻井くん(牡牛座):不動宮


となる。

 活動宮は「何かを始めたり取り組んだりするのは得意」で、不動宮は「耐久性があって同じことを繰り返すのが得意」。

 で、不動宮は、活動宮が思い付いたアイデアを形にするのが得意、という面が。





 ワクワクが大好きなリーダーのアイデアに、まず1人がひょいと乗っかってみて、それを見ている他の2人が段々と形にしていく。そんなイメージ。まあ実際は違うかもしれないけど。

 でも。


 ほほう、すごいなって思いません?勝手な想像ですが笑。


 ちなみに!彼らととっても仲の良い1人、徳永暁人さんは乙女座なので、「地の星座」で「柔軟宮」。

 柔軟宮とは、自分で決断するのは苦手な方だけど、相手の要求に合わせて対応するのは得意。そして活動宮と不動宮の足りないところをしっかりと補って柔軟に先に進めることができる人。

 活動宮と不動宮の4人の中に柔軟宮の徳ちゃんが入った「パラシュートが開かない」がどうしてあんなに名曲になったのか、わかる気がする。





 さて。

 ご存知の方も多いと思うが、今話してきた、俗に言うところの「私の星座」は「私の太陽星座」を意味する。

 それぞれが生まれた時に太陽がどの位置にあったのかによって決まるものだが、空の星は太陽だけではない。例えば、生まれた時に月がどこにあるのかによって、「月星座」というものが決まってくる。

 月なので、太陽星座ほど性格上表立ってくることは余りないが、それでも全くない訳ではないので、その辺を合わせて見ていくことで、ステレオタイプの星座占いが少し深みを増して解釈できたりする。


 で、Sensationの4人の月星座を調べてみた。

 そうしたらこれが、面白いほどハマるのである。





 まず大賀くん。

 太陽星座牡羊座の大賀くんの月星座。なんだと思います?


 乙女座(エレメントは土)なんですよ。


 乙女座といえばなんつってもキーワードは「ピュア」。純粋さからくる正義感。理想。自己犠牲。

 月星座なので、ババーンとは出ないけど、いざという時に見せる姿にそれがある。人の役に立ちたい、とか、自分の使命を果たしたい、とか。

 あるサイト(moon-cycle.net)にこんな文章があった。


「乙女座を月星座に与えられた人は、自分以外の存在のために何かをしようとする時、さまざまな才能や可能性を開花させることができます。

 そして乙女座には、そうやって自分の使命を果たすために必要なあらゆる能力が与えられています。任された仕事をきちんとこなす責任感の強さ、決まったルールを慎重に守り抜く律儀さ、自分が何かをしなければ、という強い使命感と正義感」


 ほら、そこのあなた。

 大きなステージの、向かって左端の方でギター弾いてるあの姿、思い出したでしょう?!笑

 目から鱗が3億枚くらい落ちた気分。


 上の記事と合わせて見ると、牡羊座は活動宮、乙女座は柔軟宮。つまり、月星座まで読むとこのバンド、リーダーが既に柔軟宮。

 ちなみに乙女座といえば、徳ちゃん。徳永暁人さんの太陽と大賀くんの月が被っている。相性いい訳だこの2人。




 で、Sensationの他の3人の月星座はというと、


大楠くん:天秤座(風で活動宮)

麻井くん:射手座(火で柔軟宮)

車谷くん:射手座(上と同じ)


 太陽星座だと「火のエレメント」だった大賀リーダーの月は「土」。だから他の3人のことを、心の中ではしっかり理解している。そして太陽が「土のエレメント」の3人がみんな揃って、月が「火」か「風」。リーダーの素顔を理解している。


 これって凄い。どこが凄いかって言うと、相手の要素が必ず自分の中にあるところ。

 大賀くんの火の要素=表側が、麻井くんや車谷くんの内面。そのバランスを取っているのが、風のエレメント、天秤座をもつ大楠くん。

 4人のうち3人が柔軟宮ってのも、サポートメンバーとして歴史が長いところとあってるよね。誰にでも合わせられることの象徴じゃないかな。残る1人だって活動宮だし。しかも風。決して1つの場所に凝り固まっている人達ではない。冒険好きの射手座が2人もいるしね。

 とはいえ、これは月星座。表側では不動宮=牡牛座が2人でしっかりと足元を支えているのかも。バンドとして。


 水のエレメントがないと言うのも、このバンドの特徴かも。カラリとした独特の空気感。

 そういえば「風」にまつわる曲いくつもあるね。

 storm

 Natsu no kaze

 色なき風

 Night Breeze





 いやあ、美しいなあ。

 これだけ上手く出来てるバンドもそうはないんじゃない?

 それぞれに運命づけられた星の配置までもが彼らを祝福している。

 祝福されて、そして10周年。


 そんな10周年を記念する今年、彼らのSensationとしての活動の皮切りは配信ライブ。今夜からの。

 その前に、ここからは、しばらく前にリリースされた彼らの4枚目のアルバムについて思いつくまま書きたいと思う。





 前3枚のアルバムのうち、1枚目と3枚目は “aggressive”、2枚目は “sentimental”がテーマみたいに思える。いわゆる思春期なんていう単語が浮かんだのよね。まだ10代の時の、いい意味での青さみたいなものがとても感じられる。恋をして、好き好き大好き!と相手に伝えたくて堪らなかったり、伝えられなくてもやもやしてたりするような。


 それが、4枚目になると少し成長して、青年期とでも言えばいいかな、高校生でも受験生、とか、或いは浪人生、みたいな雰囲気に変わる。若さはもちろんあるんだけど、もう少し、人の苦い部分を知って思慮深くなったという感じ。恋愛なら、恋をして、相手と心通じ合う瞬間を感じて、だけど最後には離れていく、そのどうしようもなさ、未熟さ、寂しさ、切なさ、腹立たしさ、愛しさ。そしてまた前を向いて歩いていく、というかさ。


 車谷くんのドラムが絶品だと思う。

 彼特有の、例えば底抜けに朗らかな “Evoke” のような曲の中でスパーンと勢いのあるスネアを叩く、その音だけでなく、 “Autumn alley”や「雪華」の静けさの中の、人肌のような温もりのある音。そのどちらもが心地よい。何でも叩けるんだねほんと。

 で、そこに絡むピアノがまた極上で。大楠くんの、少しだけ水分を帯びた音使い。いいよねえ。このバンドって基本、乾いた音が信条みたいなところあるけど、そこに適度な湿度を与えているのが大楠くんの鍵盤だと思う。この「適度な」ってのが大事なのよ。乾きすぎてもよくないのは、肌も音も同じ。ぜひ保湿系鍵盤と呼ばせて頂きたい。


 “Autumn alley”は大賀くんのギターと麻井くんのベースのユニゾンも聴きどころで実に美しい。Sensationは、ギターのメインメロディの下で、少し違うメロディとリズムでベースが奏でられるシーンも聞き所だと思うが、全く同じメロディを音程に差をつけて聞かせてくれるところもとてもいい。この辺り、クラシックっぽい感じもするよね。





 最初に聞いた時、「色なき風」に一番ぶっ飛んだ。シャッフルのリズムを取る麻井くんのベースが重たすぎず跳ねすぎず、大賀くんのギターの歪み具合もいい塩梅で。その辺りに凄い美学を感じ、ああこんな痺れるほどカッコいい音楽があるんだと唸った。ロックとジャズを好んで聞いてきた自分としては、まさにその融合であり、その辺がミクスチャーされたサウンドはこんな風に1曲の中に落とし込まれるのかと感動した。とにかく、新しかった。今までにない感じ。

 元々インストものが好きだったってのもあったんだと思う。アルバム1枚聞いた瞬間ドツボにハマる音がしたくらいだ笑。





 中学でブラスバンド部に入り、3年間ホルンを吹いていたのだが、このホルンという楽器は、トランペットのような花形のメロディが貰えることは殆どなく、大体7割から8割がリズム隊としての役割を担う。が、大体いつも8小節くらい、ここぞとばかりのソロを貰い、全体で聞くと大層目立つパートを吹くことも多い。

 この辺の感じが、麻井くんの奏でるベースに似ていると勝手に思って以来、ベースに心が持って行かれる時間が長くなった。最初は、極端なことを言えば大賀くんのギターしか耳に入ってこなかったのが笑、今はもう、4人の紡ぎ出す音を全部余すところなく聴きたいと思うようになっている。


 Sensationで最初にDLしたのがこのアルバムで、その頃はもちろん大賀くんの名前しか知らず、一体誰が他の楽器をプレイしているのか、具体的に分かり始めたのは少し後からだった。バンドとして活動し始めて9年も経つのかと些か驚いたのは、そんなに長い間こんなクールな音楽に気づかなかったという、自分の目の節穴さ加減からである。まあ確かにそこまでの9年間は、私生活でも怒涛の渦に巻き込まれている時間が長かった訳だが。

 だからこそ、今漸く気が付いたことの幸運を噛み締めたりしている。


 アルバム2曲目の “BALANCe”、どうして最後だけ小文字なのか不思議だが、まさにこの「取れるはずの完璧なバランスをわざと少しだけ崩してみた」という空気感がSensationの音楽には見られる。それはきっと彼らの持つ余裕であり、遊び心であり、洒落っ気であり、新しさなんだろう。8分の6拍子からサッと4拍子に変わる辺りも美しい。聞けば聞くほどに味わい深い1曲。 “Axis” “Chaotic world” “Acceleration”といった、パワフルだけどタイトな音作りの人気曲ももちろんいい。


 以上、今宵の配信ライブを目前に、大好きな4枚目のアルバムについて書かせてもらった。ああスッキリしたw





 ロックとジャズが好きな自分が行き着く先の音楽としては、ごく当たり前のチョイスだったんだと思うが、やはりこのバンドに出会えたことが今でも心から嬉しい。出会ったのが遅かった分だけ、ゆっくりと愛せるような、そんな気がしている。











文:見る「きみに会えた。ー小室哲哉 HIT FACTORY #1 Online Show from Billboard Live@Billboard Tokyoー(配信にて)」




 多分この人に最初に惹かれた理由は、その「知的さ」だったんじゃないかと思う。人間は誰しも矛盾した面を持ち、知的なものに惹かれる一方では、その正反対のもの、例えば「野生味」とでも言おうか、そんなものにも同時に惹かれたりする訳だが、原点というのかな、最初に惹かれた方にはきっと、その先の人生においても、惹かれ続けるのかもしれない。

 今回、TKのソロライブを配信で見て、つくづくそう思った。自分の原点を見せつけられたようで、しかしながらそれはとても心地よかった。



 確か二十歳くらいの頃、TKの、横浜アリーナかなんかのライブが真冬にあって、その時なんと私はこともあろうに大風邪を引いてしまった。いつもながら母から大叱責を受け、行くことを諦めるよう強力に説得されたのだが、その時私はこれまたいつもながら、自分の損得しか考えずに、そしてまたどうしても行きたいという欲望を捨てきれず、全力で母に刃向かった。


 するとその日はなぜか母が折れてくれ、私は行くことができた。今みたいにマスクをかけて、厚着をして、遠い遠い席からTKを見ていたら、いつの間にか喉の痛みが消えていた。無理をして母に逆らって出かけた先で症状が悪化しないどころか治って帰ってくることが出来たのは、後にも先にもあの時だけである。多分あれは、私の、TKへ憧れ続けた純粋な気持ちの賜物であったに違いないと思う。

 まあ、母にはそれ以降も、心配も迷惑も随分かけたのだけど。



 ビルボードライブ東京の、深いブルーのライトで照らし出されたステージは、TKの佇まいによく似合っていた。何台もの鍵盤とグランドピアノが置かれたステージに、会場を見渡せる斜め上の方から歩いて入ってくるTK。Twitterによるとサンローランらしい。白い少し大きなシャツに、可愛らしい短めのボルドーのスカーフをタイにして結んでいる。決して胸を開くこともなく、キュッと上までシャツのボタンを止めて。


 一体どこまでこの人は美しいのだろう。これまで多少濁った色のついた幾重もの体験があったはずなのに、この人はどこも崩れていない。言ってみればTKも、自分の原点を忘れていない人なのかもしれない。



 3日間2部構成、合計6ステージ分の最終ステージが配信された訳だが、「今日は配信で見ている人もいて…たくさんの人に見守られながら、やってます」という最初の挨拶。痺れたねえ。配信を「自分からは見えない」と捉えるのではなく、「みんなが僕を見ている」と考える。もちろん、生配信だったからこそこう言えるというのはあるかもしれないが、しかしながら、この発想が素敵だと思った。こういうところがTKがTKたる所以なんだよなあ。



 テレビ番組(競馬らしいw)のために書かれた曲や、MISATOに書いた曲「きみに会えて」のカバーから始まり(これは泣けた)、「マドモアゼル・モーツァルト」へと。

 所々に挟まれる耳馴染みのあるクラシックも、その場の雰囲気を盛り上げる。今だから当然声なんて出せない訳だけど、その静けさの中だからこそ、全てのハーモニーが引き立つのであることを、TKは十分承知しているかのようだった。





 シンセサイザーなんだから当たり前だろうと言われそうだが、音の重厚さに驚く。どこまでも透明な音もあれば、例えば、当ブログでは毎度お馴染み我らがスーパーギタリスト大賀好修さん=大賀くんが言うところの、「ちょっとギラついた音」も多い。






 (ほら、ベース弾いてる。上の写真はキーボードの大楠くんと一緒。)


 TKは、昨年出た雑誌「Sound Recording」2021年12月号のインタビューにて、Memorymoogというシンセサイザーについて、こんなことを言っている。以下引用する。




 「簡単に言えばギターに勝つことができるシンセ。ギタリストに“なかなかやるじゃん“と言わせることができるシンセですね。」


「絶対消えないでほしいですよね。僕はプログレッシブ・ロックから入っているので、あのころはHAMMONDオルガンとMOOG Minimoogだけがギターに張り合える楽器だった。キーボード・プレイヤーがどれだけギターに負けないようにするかに命懸けていたところもありましたね。そのDNAみたいなものは今でも受け継いでいる感じがする。」




 つまり、TKは鍵盤プレイヤーな訳だけど、実はギタリスト的なスタンスも大いにあるのではないかと思う。TKは、まるでギターみたいな音を奏でる時がある。大賀くんがどこまでも美しいクリーントーンでギターを弾くことがあるように。

 ははーん、そうなると、私は、鍵盤奏者が好きと言うよりは、やっぱしギタリストなのか。って今更かいwww


 TKは昔、TMのライブの時も、ショルダーキーボードが好きだった(私もこれ見るの好きだったんだよなあ)。何台ものキーボードをガンガン鳴らして不協和音にするのも好きだった(多分これは今も好き。この辺りが、Sensationの大楠くんのような美メロをこよなく愛するタイプのキーボーディストとは違うところではないかと思う)。鍵盤プレイヤーなのにギタリストっぽさ、醸し出しているよね。

 ちなみに大賀くんもキーボードを弾く。ベースも弾く。歌も歌う。

 そしてファンは皆知っていることだが、TKも実は大賀くんと同じく、結構お喋りが好きである。

 キャラとか中身、全然違うのに、どっか似てない?この2人笑。





 TMの配信ライブの時のソロや、ボーカルものを交えながら、曲間に紹介を兼ねて少しずつ言葉を発するTK。その感じが全く昔と同じで嬉しい。


 懐かしくてこれまた泣いてしまった“CAROL“の組曲(JUST ONE VICTORYのメロディが最後に流れた時は本気で号泣した)から、HIT  FACTORYと銘打ったライブらしく、誰もが知っているTKのビッグヒットメドレーへと。


 派手さを削いで、代わりに優美さが与えられた数々のヒット曲は、聞くものの耳へ新しい感動を運ぶ。個人的には、90年代、TKが爆発的に売れていた頃の曲には思い出はないのだけど(私はTM一択だったので)、それでも、時代を彩っていた数多のメロディは、記憶の底にあるかつての若さを疼かせるのには十分だった。


 文学や芸術に惹かれた、今の原点であるあの頃の自分。アンコールで歌ってくれた新しい曲「女神」。TK、あなたは私に世の中の透明な美しさを教えてくれた最初の神だったのかもしれない。



 3月には同じ場所でもう一度ライブが行われると決まったとのこと。見にきて欲しいです、と笑顔でぽそっと語るTK。この押し付けがましさの全くない、欲のないところこそまさにTKの真骨頂。がっついてないんだよねえ、この人は。もちろんあれだけのヒットメイカーなんだからそういうところだってある筈だけど、表に出さない。それは隠しているんじゃなくて、やっぱりスマート=知的だから、なんじゃないかと勝手に思っている。また、「その頃、少し落ち着いているといいね」と今の状況への危惧も表してくれるところも、自然でよかった。


 来てきてきて〜!と無邪気にはしゃぐのもとっても魅力的だけど、こんな風に、ちょっとだけ引き気味に、「もし来られたら…ね」と言われる方に、実は人間弱いんじゃないかと思うんだけど、どうかしらね。

 私はどちらにも惹かれる。ほら、人間は極端な方どっちもに惹かれるもんだからさ。

 節操なし?ほっといて。

 2月に配信になる、TM NETWORKの3回目のライブも楽しみである。


 TKの写真は全て公式Twitter、大賀くんと大楠くんの写真はSensationのFBより。