文:見る聴く「 “Beautiful Dream Makers” ーGLAY ARENA TOUR 2021-2022 "FREEDOM ONLY"@さいたまスーパーアリーナ(配信にて)」




 「昔せし我がかねごとの悲しきはいかに契りしなごり」

 これ、BAD APPLEの歌詞なんだけど、元は平貞文の和歌、「昔せし我がかねごとの悲しきはいかにちぎりし名残なるらむ(後撰集・恋三・710)」からとのこと。

 「かねごと」とは「予言」で、男女の約束の意味。「私たちの交わした約束が悲しきものになったのは、どんなふうに契った結果なのでしょう」みたいな意味らしい。


 約束などなくても、仮に一方的な恋であっても、裏切られたと勝手に思うことはよくある。え?よく?と言われそうだが、いやいや、よくあると思う。美味しいと思って買ったらイマイチだったとかさ。恋じゃないかもしれないけど、相手に期待している訳だから、ある意味では恋してるのと同じ。


 そんなこと言い出したらキリがないのも解っている。だけど、もしも、決して裏切られることなんかないと信じていたものが手のひらを返したみたいになったと感じたら。心から信じていた頃を思うと胸が裂かれんばかりになるだろう。

 が、それも仕方ないのかもしれない。だって一方的なんだもん。それはそれで受け止め、先に進めばいい。

 失った恋に長い間呆然と立ち尽くすことはあれど、失った恋の抜け殻をいつまでも眺めすかして愛でる趣味もない。






 そういえばあったね、我がブログきってのご贔屓インストバンド、今年結成10周年記念イヤーを迎えるSensationにも、和歌オリジンの歌詞が。元となった「筑波嶺の峰より落つる男女川 恋ぞつもりて淵となりぬる」は陽成院の歌。


 コトの仔細を述べる代わりに、ここでは思いっきりGLAYを褒め倒したい。冒頭に書いたような、とあるショックから私を救ってくれたのは、実はGLAYの音楽だったから。







 さいたまスーパーアリーナ(「たまアリ」って略すんだと知った時の衝撃w)でのライブの模様を配信すると知り、楽しみに待っていた間、実際にこのライブに行った方の感想などSNSを通じて聞かせて頂く機会があった。TERUさんがどれ程配信組を気遣い、どれ程言葉を尽くして、実際そこにいる、或いは見えない画面の向こうにいるオーディエンスに語りかけてくれていたのかを知り、見る前からいささか感動さえしていた。


 昨年のUnite@横浜においても、TERUさんは言葉の選び方が本当に上手だった。誰の心にも入り込み、誰の心もに語りかけることが出来る、解りやすくて真っ直ぐな、相手を気遣える言葉。的確な場面で使われていたことにも感心、というかやはり感動していた。GLAYって、一昔前に流行った言葉で言うと、EQ=心の偏差値の高い人達なんだなあとつくづく思ったのを覚えている。


 実際、そんなことを意識しながら曲を聞くと、歌詞の言葉の選び方が意外にも(と言ったら失礼なのだけど)美しいのがわかる。めちゃキャッチーでポップなロックなので意識して聴いたことはなかったが、こう、少し古典的で、普遍的でもある日本語のチョイス。この辺はTAKUROさんのセンスなのかもしれない。


 TAKUROって言うと、私の中では15の頃ラジオで出会った吉田拓郎のイメージがドッカン級で、これまでだとどうしてもGLAYのTAKUROには行かなかったんだけど、考えたら彼は、というかGLAYのTERU、TAKURO、それにHISASHIはみんな、当ブログきってのご贔屓ギタリスト、大賀くん=大賀好修さんの同級生なので、両親が拓郎を聞いていた世代ではあるのよね。


 高1の時、デパートの中古レコードセールで拓郎のベスト盤(確か “Only You” ってタイトルだったと思う。レコード会社が作った感じのヤツだったかな)を買って「元気です」を家で聞いていたら、「あんた、なんでこの曲知ってるの?」と驚いたように母が入ってきたのを今でもよく覚えている。私にしてみれば「え?なんでお母さんが知ってるの?」という感じだったのだけどね。ちなみに「元気です」は72年の作品。私には勿論リアルタイムミュージックではなかったが、とても好きになった曲だった。


 親子で同じ音楽を聴く、というケースは今の方が顕著かもしれないけど、あの時代、私の場合は拓郎だった。

 そんな訳で、TAKUROという名前、しかもコンポーザーでギタリストと来れば、吸い寄せられるのは当たり前の話で。





 そのTAKUROさんが静岡のライブ前に倒れて中止になった時も、GLAYはまさに言葉通りの「神対応」で、以前の傑作と名高いライブの模様を、日頃から頻繁に更新されている自身のYouTubeチャンネル内で24時間以上誰にでも無料配信するという太っ腹さを見せてくれた。素晴らしかった。私も何度も見せてもらい、Unite以来のGLAYのライブをなんだか少し懐かしく思いながら、これはファイナルの配信チケット絶対買わないとと思わせてくれた。


 この辺のマーケティングが上手いのだと思う。いや、そう言うと言葉が悪いのだが、いわゆる「損をして得を取る」を実に巧みに実践していると思う。それも計算なくやってるのだから見事なものである。きっとGLAYサイドは「みんなが心から喜んでくれるにはどうしたらいいか」の一点しか考えていない。損得ではない対応。そのせいで、ますますGLAYのファンは増えていく。


 配信になる1週間くらい前から、公式Twitterがハッシュタグを作り、配信を一緒に楽しみましょう!と呼びかけていたのも記憶に残っている。前日とかではなくて、数日前というところも行き届いていた。いくらファンでも毎日SNSをチェック出来る人ばかりではないというところを解っているせいかもしれない。


 SNSといえば、その活発に更新される公式Twitter経由で、GLAYのグッズを見たのだが、ポーチが3,000円台など誰にでも手に入れられるお手頃価格なのがいいと思った。私達は、いや少なくとも私は、特別な時に愛でるだけの、「諭吉」の人数を数えなければならない程高級な一点ものが欲しい訳ではない。例えば今挙げたポーチやコーヒーカップのような、手元に置いて、毎日ふと目が行った時に笑顔になれるような、日常に入り込んだ幸せが欲しいのだ。人との距離さえ測れないような不安定な今の時代なら尚のこと、である。この、時代の読みというのも、GLAYは本当に優れているなあと唸る。


 そして配信当日だが、このハッシュタグがファンの間で盛んに起動していただけでなく、サポートメンバーとして参加していたキーボードのハジメタルさんがファンと一緒になってリアルタイムで配信を見て、そのまさにリアルタイムで自身のTwitterから、裏話や自分の目線からのライブ中のお話を発信してくれているのを見て「これはスゴい!」と声を漏らした。





 「彼女のModern…」でTAKUROさんとHISASHIさんがハジメタルさんのところに集まって向き合って一緒にプレイしているシーンなど、サポートのメンバーとの交流も楽しいステージだった。ドラムのトシさんに至っては歌の歌詞にまで出てくるしねw 全然フツーにメンバーじゃんってwww


 サポートメンバーが自由に発信できる。いやもしかしたらむしろ「じゃんじゃんやってよ」的なw、そんな感じだったのかもしれない。実際そのツイートを見てファンはみんな喜んでいたし、コメントもつけていたし、その自由度の高さが側からも窺えて、TLを見ているだけで楽しかった。

 情報とは、出しすぎるのも問題だろうが、出さなすぎるのもいいとは思えない。勿論公開出来る日程などの縛りがあってできないケースがあるのは百も承知で言っているのだが、それでも、GLAYのようにこうして風通しよくすることで、人は更に集まってくる。


 公式Twitter発信で凄いと思ったことがもうひとつ。配信ライブ開始後、その翌日だったかな、各種サブスクにて、今回のセットリスト順に並んだGLAYのプレイリストが公開になったのだ。これにはものすっごく感動した。私は自分が足を運んだライブのセットリストを自分で並べてプレイリストにして聞くのが好きなのだが、それを公式サイトがやってくれているのだ。手間は省けるしみんなで聞けるし何より配信終了後も感動を味わえる。こんなサービスしてくれるミュージシャン他にいる?(いや、いるかも知れないが。私が知らないだけかも汗)


 ファンのツイートで目立ったのが「GLAYは絶対に裏切らない」という言葉。例えば、ライブに行けなくても必ず「円盤化」=ディスク化してくれるというように、選択肢が一つではない。出るのかなあ、やるのかなあ、という、期待と不安の入り混じった感情をもつ必要がない。そういう感情はそれでまあ、ワクワク感が伴うことにはなるのだろうが、とはいえこのGLAYファンのGLAYに対する絶対的信頼感を、羨ましく思わない音楽ファンはいないのではないだろうか。


 そういえばさ、いきなりだけど、GLAYの4人って全員、ほんっとに全員が、爽やかさダントツの「風の星座」なのよね(Sensation調べた時一緒に調べた笑)。コミュニケーションの天才・双子座(TERUとTAKURO)とバランス感覚ナンバーワンの天秤座(JIRO)にあたまキレッキレの水瓶座(HISASHI)。親友同士で全員相性ばっちしなんて、お見事としか言いようがない。情報やITの扱い方に手慣れているのもこの星座ならではと言えるかもね。時代は奇しくも風の星座の時代に突入したばかり。多分これからもっと来るよ、GLAYは。彼らに吹く風はまさに追い風。





 ここから、たくさんのMCの中でも印象に残ったTERUさんの、特に後半の言葉を拾ってみようと思う(一番印象に残ったのは「ここは横浜アリーナじゃねえぞ〜!」だったということは言わないでおく笑)


「コロナ禍になりまして気づいたことがあります。配信ライブというものを、なかなかGLAYはやってきませんでしたけど、今回、2年間に渡り続けてきて、『今までライブは見たことない』『見たいけど行けない』という方達から、『やっと今のGLAYを見れた』とか『ライブビデオではなくて配信でGLAYを見れた』という喜びの声をたくさん頂きました。

 今後もGLAYのライブをこうした形で、ライブをやりながら配信を多くしていけたらなと思っていますので、ぜひうちへ帰って、今回我慢してこられなかった友達だったり家族だったりがいたら、是非とも配信で…。メンバー全員、配信で見る子達のこともちゃんと思いながら演奏したと伝えてください」


 この後の、「配信で見てるみんなにも届けたいです」という言葉からの「生きてく強さ」は一層心に沁みた。

 これだけ語ってくれて、それでも納得行かないファンがいる?「お喋り」っていうのと「言葉を尽くす」ってのは全然違うことなのよね。


 配信ライブがどれだけ「割に合わない」かは、以前このブログの記事でも取り上げた通り(朝日新聞、朝刊2022年1月1日1面のドリカムの話)。だがそんなことモノともせずGLAYは今後もそれを続けると高らかに宣言する。


 いや勿論、確かに彼らは売れている。売れているからこそ言えるセリフだというのもあるだろう。だが考えてほしい。売れていたって配信なんてしないという人も多いのだ。どんな仕事、どんな家庭環境の人も、どこへも出かけることなしに、プラットフォームさえあれば各家庭で楽しめる、配信ライブという形。声を大にして言わせてもらう(いつも言ってるけど)。配信ライブを肯定すべきだ。そして推進すべきだ。生のステージが最高だ、なんてことは誰にだって1000%分かりきっている。やっぱりナマはいいよね、なんてわざわざ言われなくたって解ってるんだよ。だからこそ言う。配信ライブも最高だ。


 何故なら、私は音楽が、そしてライブが心から大好きだからだ。誰かの、じゃなくて、全部の。


 想像力さえあれば、その場にいるかいないかなんてことは、当人にとってはそれ程気にはならないものだ。誰もが都心に住んでいる訳ではないし、誰もがアクセスの良い場所にいる訳でもない。誰もが自分の意思に対して自由でいられる訳でもない。何らかの足枷は必ずある。それでも、好きな音楽を楽しむ一つの形として、ライブの配信という文化はこの先も残していって欲しいと思う。





「皆さんの支えがあれば、僕たちはどこまでも活動していけると、そういう確信が持てました。本当にありがとうございます。これからも支えて下さい。僕らもずっと支えてきますんで、一緒に支え合いましょう」


 ドリカムとは違う意味で、オーディエンスにこれ以上ないくらい、腹を割って話してくれたのが解るTERUさんの台詞である。

 これって絶対に大事。互いに腹を割る。はっきりと伝えることの大切さを十分に理解している人の言葉は、重く温かい。

 TERUさんの言葉は更に続く。


「状況がよくなってきたら、また、GLAYは必ず皆さんの街に会いに行きますので。次こそは一緒に歌いましょう!」


「来てくれてるみんな、本当にありがとう!そして、辛い思いをしながら、今、画面で見てくれた、配信の皆さん、本当にありがとう!次は必ずライブで会いましょう!本当に、たくさんの愛情をありがとうございました!

 そして最後になりますけど、皆さんの大切な時間をお借りして、安全におうちに帰って欲しいということで、規制退場になると思いますけど、ご協力ください。最後までコロナと戦って欲しいと思います。今日は本当にありがとうございました」


 どうよ。この徹底ぶり。規制退場にまで心配りしてくれてるんだよ?もう最後の最後までTERUさんの、そしてGLAYの思いが溢れていて、これをナマで見た人と、配信で見た人の距離感がグッと縮まっているのが感じられた。少なくとも、GLAYのメンバーの中では多分、その場にいたオーディエンスと配信組オーディエンスの間には、格差はなかったのではないかと思う。


 HISASHIは相変わらず眩暈がする程美しいし(HISASHIの、ちょっと繊細で華やかでギラついたギターの音って好き。メロディアスで)、JIROちゃんはぴょんぴょん跳ねてて可愛いし(TERUさんも「JIROの可愛いところも見られたし」って言ってたね。何なんだってくらい仲良いよね、ほんとw)、ナレーションの声加藤登紀子さんだし(「いい脚した女がいるんだよ」っていいなあ~!最後にクレジット見てマジでびっくりした。豪華すぎるな)ゲストボーカルちゃん可愛いし(Awesome City ClubのPORINちゃん。こんな大きなステージ初めてで…ってもう無茶苦茶可愛いよね)盛り沢山すぎ。


 選曲では、Hypersonic(歌詞見てぶっ飛んだよw 小橋の夢〜♪)、Winter Moon Winter Star(秀逸な美メロ)、BAD APPLE(聞くたびに泣く)、シキナ(最胸キュンソング)、彼女の以下略w、生きてく強さ、BEAUTIFUL  DREAMER(名曲だよなあ)、FRIED  GREEN TOMATOES(って映画あったよね。そこから取ったのかな?)が好き。


 メロディラインの美しさ、というか、簡単に言えばGLAYの音楽って「胸キュン」サウンド満載だよね。コードもなんだけど、メロの持って行き方が胸キュン。うまいとこ突いてくるよなあ〜と思う。それに乗っかるTERUさんのボーカルがまた凄い。彼の発声って絶対誤魔化しが効かないタイプの、ストレートにガッツリ伸ばすタイプだから、負担もかかると思うんだけど、そんなこと微塵も感じさせない声の強さがある。そして何より音を全く外さない。前も別のところで言ったけど、これって結構難しいと思うのよ。自分達の奏でる音楽を大事にしている感じがとてもする。

 あらためて、バランスの取れたいいバンドだと思う。




 ここにもライブしに来てくれる日が来るのかしら?まあ、どう考えてもチケット取れなさそうだけど笑、いつか来てくれることを祈ってます。




「今回、いろんな事情があって参加できなかった子達もいるし…空席もありますけれど…その空席は、空席ではなくて、いろんな我慢が積み重なった空席なので、ぜひとも、その空席にも、みんながいるという気持ちで、参加して欲しいと思います」(TERU)

 こんなこと言ってくれるミュージシャン、もう一生ついて行くよね。

 天晴。




 GLAYの写真は全て公式Twitterより。





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