文:訳す「カエルの歌と名前のない馬ーAmericaの“A Horse with No Name”を和訳してみた」



 今日はこの方、Sensationの大賀好修さんがきっかけの話です。


 8月最後の日曜日、実家から戻った夫(果樹畑のために毎週帰っている)がいつも以上にニコニコしながら「おもちゃを、持ってきたよ」という。きっと自分の趣味の、F1のミニカーの類だろうとタカを括っていたら、車からこれを持ってきた。



 いきなりである。なんの前触れもなく。どこで拾ってきたのかと聞くと、拾ったんじゃない、これはM君のなんだよ、という。

 M君とは夫の弟、つまり私の義弟にあたる。6、7歳年下のMさんが昔バンドをしていたなんて聞いたことがなかった。すると夫も、俺もバンドしてたとかは聞いてない、という。いやいや待ってよ、こんなエレキギター持っててバンドしてないってのはないでしょ、というと夫は、君だってエレキギター持ってたのに、バンド組んでた訳じゃないんでしょ、と返す。

 確かにそうだけど、私は店で一番安いのを買って、なんとなくやってたけど、どう覚えたらいいのかも解らなくて結局挫折したってだけのことであって、Mさんのこの、本格的な感じのギターとは違うから。ところでこれ、ウチに持ってきていいの?


「M君の部屋にこんなのがあったな〜って思ってたらちょうど今日、M君が子供連れて来たから、聞いてみたらいいって。今、子育て真っ最中だし」

「1歳と2歳じゃあギター背負う時間はないよねえ」

「だから、持ってきた。見せようと思って」


 持ってきたってあんた、こんなもん私に見せちゃったらどうなるか解ってんでしょうねえ。


「ねえ、アンプは?」

「は?」

「アンプだよ、音の出るやつ」

「ああ、あの黒い箱みたいな。あったよ」

「それと、シールドと、ストラップと、ピックは?」

「シールドってなに」

「繋ぐヤツ、箱とギターを。それと、ストラップとピック」


 すると夫のポケットから、これまた超ミニサイズのピックが1枚出てきた。Mさんが持って行くようにと言ったのだろうか。


「じゃあさ、来週アンプとシールド持ってきて。それとストラップも」

「はああ⁈」



 翌週の姿。エフェクターもあります。使ってないけど。


 実力はお墨付き、当ブログきってのご贔屓ギタリストでありインストバンドSensationのリーダーでもある大賀好修さんのオンラインサロンに入会し、毎週彼からギターの話を夢中で聞くようになって1年が過ぎた。だが自分からギター買おうなんて思ったこともなかったし、ましてやもう一度弾いてみたいなとも思わなかった。理由は、若い頃挫折して、難しいと解っていたので。



 ところがこうして目の前にギターをポンと置かれると、きれいな音を出してみたくなるのが人情だ。あの頃と違って、どうやって習えばいいかもなんとなく解る。別に今からミュージシャンを目指す訳じゃないんだし、趣味のひとつとしてギターを嗜むのもいいんじゃないか。せめてコードくらい抑えてダウンストロークで演奏しながら歌えたら楽しいことこの上なしなんじゃないのか。


 ギターに「フェルナンデス」と書いてあったので少しだけ調べてみると、どうやら日本のメーカーで、我が家に来たこの子は初期モデルの一つである、いわゆるコピーモデルらしい。今でも現役で活躍しているメーカーさんであるどころか、結構な有名ギタリストがご愛用でもあるとのこと。アンプ内蔵ギター「Zo-3」を作ってるのもここだとか。

 これ持っててバンドやってない訳ないと思うんだけどなあ〜。いつか聞いてみよう。


 結局、Mさんからの伝言で、ストラップは切れちゃってないとのことだった。そこでAmazonで、格安ストラップとピック(1回書い直した。最初に買ったのがあまりにペラペラだったので)とギタースタンドを買い、まもなくシールドがダメになったのでこれも買った。アンプも音が時々ザリザリ言ってかなりイカれているのでそのうち買わないといけないと思う。練習用のだと大体7,000円くらいで出来そうだ。ブリッジも錆びているので替えたいと思ったが、今ついているのと同じようなのが大体14,400円くらいすると、Amazonを調べた夫が言うので、残念だけど先送りに。


 弦は、Mさんが最初に1弦と2弦のみ替えてくれてあったのだが、他の弦もサビサビで押さえにくいったらなかったので、中の掃除と共に夫に頼んだ。すると分解好きの夫は実家でギターを解体してしまった。以下がその写真である。





 なるほど、中にバネがあるというのは本当なのだ。写真を見て理解できるのはオンラインサロンでの講習(?)の成果である。

「ようやく解ったよ。音合わせをする時にペグをひとつ変えると全部ちょっとずつ音がずれるって言ってた理由が」

「え、どうして変わるの?」

「バネでしょ?だから、フレミングの法則だよ」

「は?」

「物理なんだよ」

「はああ?」


 まあここは解らなくても別にギターは弾ける(笑。

 無事、夫に中を掃除してもらい、弦も張り替えてもらい(自分でやれよw)、練習が始まるのであるが、教本が必要だと思ったのでこれを買った。



 今回、本の条件として、Amazonで買ってKindleで見られるのがいいなと思った。普通なら物理的な、ページを捲る本がダントツに好きだが、今回は、ギターを弾きながら見るのだから、タブレットで開ける方が絶対楽だ。

 そして、思いっきり初心者でも大丈夫な本にしようと思った。基礎からちゃんと教えてくれるのがいい。とすれば、ギターを教える動画配信をしていたりする若い人の作った本は見てみる価値はあるんじゃないかと。


 ギターの各部の名称はもちろん、揃えるもの、持ち方、姿勢、手の位置など、細やかなアドバイスをこの本はくれる。そしてコードの前に練習するのが「カエルの歌」である。

 ひとつずつ音をピッキングしながら演奏するのだが、後半の8分音符のところを、アップとダウンとを交互に弾くように指示がある。これが難しいw 

 ギターを弾く日は毎回これを練習している。意外にも楽しくやっている。


 この次に漸くコードを押さえる話になる。今、セーハという、人差し指全部でフレットを押さえる部分まで来ているが、やはり難しい。とはいえ、これが出来なくったって弾ける曲があるんじゃないかと思い、Googleで「コード3つで弾ける曲」と検索してみた。昔はこういうことできなくってさ〜。今はほんと便利になったよね。


 検索すると何曲か引っかかり、そのうちの1曲がアメリカの「名前のない馬」だった。まさかあの名曲が、コード3つ、しかも1つは指1本という、超初心者でもトライしてみようかなと思えるコードで出来ている楽曲だったなんて。しかも歌詞さえあれば歌もばっちし歌える。



 これに登場するコードは、Em・Emaj7・D6の3つ。ギター弾く人ならお解りだろうが、笑っちゃうくらい簡単。とはいえ、これをきちんと鳴らしてストロークしながら歌うのは初心者には難題。でも教本のストロークの仕方を見様見真似でなんとなくやっていると出来た気になるから不思議である笑。今、カエルの歌と共に一生懸命練習している。


 弾ける曲を探して弾けばいいんだよね。あれを弾きたいから、っていうモチベーションももちろんありだし普通はこっちだろうけど、今回の私みたいに、降って湧いたみたいにギターがやってきました、なんていう場合とか、これも私のように、これまでのソコソコ長い人生の中でたくさんの楽曲に出会ってきて、好きな曲がたくさんあるという場合には、簡単に弾けそうな曲に数多くトライしてみるというのも、案外いい方法かもしれない、人生を豊かにするには。



 で、ここからがちょっと他の方と違うところかも知れないけど、ギター弾きながら歌ってたら、歌詞の意味を知りたくなり、考えているうちに、歌詞を訳したくなってきた笑。そこでここからはいつもの英文法解説付き和訳、行ってみよう。


 その前に、ぜひ、この曲を知るきっかけを書いておきたい。1986年の幻の音楽テレビショー “Merry X’mas Show”において、KUWATA BAND、アルフィー、チェッカーズ(懐!)の面々が、大昔の歌声喫茶よろしくスタジオセットに集まってみんなで歌った1曲が、この「名前のない馬」だった。ぜひ見て頂きたい。このYouTube動画、画質は荒いが音が実によく、見応えもある。時々映る高見沢さんの可愛いこと可愛いことw 

 87年のショウの方かと思ってたけど、86年だったんだなあ。なんてかっこいい曲だろうと思った記憶がある。





ではここからは歌詞の話へ。



*******************


On the first part of the journey

I was looking at all the life

There were plants and birds and rocks and things

There was sand and hills and rings


The first thing I met was a fly with a buzz

And the sky with no clouds.

The heat was hot and the ground was dry

But the air was full of sound


☆I've been through the desert on a horse with no name

It felt good to be out of the rain

In the desert you can’t remember your name

'Cause there ain't no one for to give you no pain

La la la… 


After two days in the desert sun

My skin began to turn red

After three days in the desert fun

I was looking at a river bed

And the story it told of a river that flowed

Made me sad to think it was dead


★You see ☆


After nine days I let the horse run free

'Cause the desert had turned to sea

There were plants and birds and rocks and things

There was sand and hills and rings


The ocean is a desert with its life underground

And a perfect disguise above

Under the cities lies a heart made of ground

But the humans will give no love



*********************


<語彙>

ring:いろんな意味があるが、「競馬場、競技場、土塁、土手」といった意味もある。ここはsandとhillsと並んでいるのでこっちの意味で捉えてみた。もちろん、ダブルミーニングと捉える事も可能。

river bed:川床

disguise:偽装、見せかけ、誤魔化し


 

 ネットを見ると、有名な曲だけあってたくさんの方がこれまでに翻訳しているのが解ったし、その中には修正がほとんどいらないくらい素晴らしいものもあった。

 とはいえ、もちろん文法アプローチでこの詞を訳しているものはなかったので笑、ここでは出来るだけ英文法の視点で考えてみる。



 で、文法そのものよりまずこの話。私が見た歌詞は上の通りなんだけど、下の部分、


In the desert you can’t remember your name

'Cause there ain't no one for to give you no pain


ここね、このcan’tのとこがcanになってて訳している方も結構いたんだよね。どっちが正しいのかってはっきりは解らないけど、Google先生は否定形の方だって言ってた。

 ぶっちゃけ言うと、canの方が意味はわかりやすい気もするんだ。下の部分が「というのも、痛みを与える人など誰もいないから」となるので。

 で、今訳した部分だけど、まず否定語がain’t, no, noと3つ入っているのだが、ここは全ての意味を取るのではなくて、1つだけあると取らないと多分意味的におかしい。またここにforが入る理由が解らず、調べてみたがやはり説明には行き当たらなかったので、本来の用法としては不可=「破格の文」ということになるのではないかと思う。



 で、やっと文法。今回はこの文。


…I was looking at a river bed

And the story it told of a river that flowed

Made me sad to think it was dead


ここがねえ、ちゃんと意味の取れている方もいらしたけど、どうも雰囲気に流されて訳してんじゃないかなあ〜って訳もあったので、いつものようにうざったい構文解説を。


I was looking at a river bed


And the story [(which) it told ◆ of a river [that flowed]] 

                                  it=the river bed


made me sad to think it was dead


itは前の行のa river bedを指すと考えられる。その前には関係代名詞が省略されており、先行詞はthe story。これが本来は◆の部分にあったと考えられるので、ここを考察する際には、元の文


The river bed told the story of a river.「その川床は川の物語を語った」


を想定して訳さないといけない。

 更にそのa riverには関係代名詞節that flowedがくっついている。この関係代名詞節内に単語がいっこ=自動詞のみ、というケースは結構あるのだが理解しにくい。

 で、例文を書こうと思って辞書を引いていたら、上の話とはちょっとズレるけど自動詞matterの例文でどうしようもなくおかしいのがあったのでそれを書いておく。訳も含めて、「ジーニアス英和大辞典」のプラスの用法である。


 “He is nice-looking, not gorgeous, but I do like him.”

“Yes, I think your new boyfriend is great. He is kind, friendly, and romantic. His face does not matter.”

 

「彼はかっこよくて、すごくハンサムとはいえないけど私はとても好きよ」

「うん、君の新しいボーイフレンドはすばらしいよ。親切で、人当たりがよく、ロマンティックだね。顔は重要ではないよ」


やるなあジーニアス。逆に「顔が大事」としか聞こえてこないんだけど(爆笑。


 後半の、sad to thinkは<感情を表す形容詞+不定詞の副詞用法>で、「〜して悲しい」の意。

 まとめて直訳すると、


「私は川床を見つめていた。そしてその川床が話す、かつて流れていた川の物語が、私を、それがもう枯れてしまったのだと考えると悲しくさせた」


となる。



 では最後に文法を意識して鑑賞。ラストのこの部分。


The ocean is a desert with its life underground

And a perfect disguise above

Under the cities lies a heart made of ground

But the humans will give no love


これまでぜーんぶ過去形で語ってきているのに、ここだけは現在形と未来形が使われていることに注目してほしい。つまり、語り手にとって身近な、今を語っている部分である。だから寂しい詞なのだ。will not give loveよりもwill give no loveとすると、名詞をnoで否定しているのでより否定の度合いが強くなる。まあ、歌詞だから語呂合わせとかもあるんだろうけどね。


以上を踏まえて、和訳、行ってみよう。


**************


旅の最初には

人生を見つめてた

花が咲き鳥が鳴き 岩なんかもあった

砂地も丘も 土手もあった


最初に出会ったのはブンブンと唸るハエ

空には雲ひとつなくて

気温は高く地面は乾いて

空気はざわめきに満ちていた


☆名前のない馬に乗って砂漠を進んできたんだ

一滴も降らなかったが気分はよかった

砂漠では自分の名前だって覚えちゃいられない

誰かのために苦しむこともありはしないから

ラララ


2日後 砂漠の日差しに焼かれ

肌は赤くなった

3日後 砂漠の慰めの

川床を見つめてた

以前そこを流れていた川にはどんな物語があったのか

枯れ果てた今の姿に 心は沈んだ



9日後 馬を放してやった

砂漠が海に変わったんだ

花が咲き鳥が鳴き 岩なんかもあった

砂地も丘も土手も


海はまるで底に生命を湛えた砂漠

表面からは完璧に隠れて見えないけれど

都会には 土塊でできた心

それに愛を与えぬ人々




*********************



机の横にあるので、いつでも手が届く。


アメリカの音源貼っときます。






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