虚構大学・妄想学群キャンパス内 生協食堂にて
「大賀くん、どうしたの、ぼうっとして」
「あ、ああ。徳ちゃん。オツカレー」
「うどん、伸びるよ。早く食べないと」
「なあ、徳ちゃん。あの動画、見た?」
「え、なに、動画って」
「知らんの?こないだ撮られたのが、学部中に回っとんのやけど…」
「何、何が写ってるの?」
「あんな、こないだライブがあったやん?徳ちゃんが出られへんかった日のヤツ」
「ああ、あれでしょ、俺の代わりに庄さんが、で、カイチさんが入ったやつ」
「そうそう。あの日な、スタッフしてくれた子が楽屋まで撮っててん。で、そこでな、昔カイチさんが、合宿で旅館に泊まった時、松本先輩の寝顔をな、じいっと覗き込んでたんやていう話が出て…」
「ね、寝顔?!」
「うん…」
「何、それってカイチさん、松本先輩の、寝込みを襲ったとか、そういう…」
「いやいや、そこまでやあらへんけど、でもカイチさんに聞いたら、見たかったんやて、松本先輩の寝顔」
「な、なんで?!」
「いや、知らんけど…まあ、憧れてたんやろな」
「ああ…松本先輩って言ったら、カイチさんじゃなくても憧れるもんね。大賀くんだってそうでしょ?」
「そうや。でもそやから問題なんよ」
「何が?」
「なんかな、その動画でな、俺、笑ろてへんて言われとるんよ」
「え?」
「カイチさんも、庄さんも、話切り出した増田先輩もみんなゲラゲラ笑ろてんのに、俺だけ顔が固まってるって言われてて。で、動画に書き込まれてんの。『大賀は松本先輩が好きやから、カイチさんにヤキモチ妬いとる』のやって」
「ああ、なるほど…それで食欲もないって訳?」
「まあね」
「大賀くん、気にしすぎじゃない?大賀くんが松本先輩に気に入られて、ずっと長い間、付属高校の頃から一緒にライブに出ていたのはみんな知ってることでしょう?」
「ああ、そうや…でもだからって別に俺は、松本先輩を独占しようなんて思てへんし」
「解ってるよ。むしろ君を独占してたのは、先輩の方じゃないか」
「あ、まあ、そういう見方も出来るけど、でも俺は正直、それが凄く嬉しかったし…」
「って思ってるから、きっと誤解されちゃうんだろうね。ねえ大賀くん」
「何」
「大賀くんはさ、自分が入れない話題の時に、無理に愛想笑いして入って来られるような人じゃない。ましてやそういう、昔のみんなの楽しい思い出話の時に、そこにいなかった自分が入っていいのかなとか、思っちゃう方でしょ。せっかくみんなが楽しんでんのに、俺が『知ったか』は出来ないなって」
「うん、そうや」
「いつも遠慮してるというか、立場弁えてるというか、人が輝いている場所を邪魔しないというか。普段はアグレッシブな癖に、そういう時妙に一歩下がってるじゃない」
「そうなんかな…」
「真面目なんだよ、大賀くんは。人との付き合いも、絶対適当に出来ないでしょ。だからそういう、別に一緒にふざけてもいい場面でも、口ギュッと閉じて苦笑いしたりしてさ。その顔が、固まってるって取られたんだと思うよ」
「俺、写真の時、顔硬いってはいつも言われるけど…」
「それが出ちゃったんだねきっと」
「なあ徳ちゃん」
「うん」
「俺は、俺の知らない松本先輩の歴史があって、そんで、何処かから俺もその流れの中におるんやなあって思ってる方が好きや。その方が、みんなの仲間になれてんのやなあって感じる」
「みんなのことが好きなんだね」
「うん」
「松本先輩のことも」
「うん。先輩のことは尊敬してるし」
「じゃあなんの問題もないじゃない。周りが騒いだっていいじゃん。どうせ10日も経てばみんな忘れるさ。大賀くんは大賀くんのままでいればいいよ」
「そうか」
「そうだよ」
「…ありがと、徳ちゃん」
「うん」
「なあ、なんでそんなに俺のこと解るん?」
「付き合い長いもん。付属からずっとだよ?同級生ってそういうもんでしょ」
「いや、違うな」
「何が」
「徳ちゃん、俺に惚れとるやろ」
「何言ってんの。君が俺に惚れてんだろ。なあ、うどん、どうするの」
「あ、やばい」
「俺も何か買ってこよ。昼休み終わっちまう」
Fin.
妄想小説にお付き合い頂きありがとうございました(笑)。
5 ERASの特典映像にですね、こんな話が入ってまして、それで、どうも巷で大賀くんが渋い顔をしているという噂がたちまして一瞬ですけど(苦笑)。
でも、彼が渋い顔をしたのは、まっちゃんのことじゃないよなあと、ファンとしては思った訳でして。
で、またこんな妄想小説を書いてしまいました。
関西の言葉がだいぶ怪しくてすみません。
なんのアナウンスもせずにこそっと上げておきますので、これに気づいた方は凄いレアですよ(笑)。
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