文:見る聴く「テレビの前の(良い子の)みんなへースガシカオ 25th Anniversary Shikao & the Family Sugar Special Live@Billboard Live Tokyo(テレビ生中継)ー」




 海外ドラマフリークなので、多分人よりはテレビを見ている方だと思う。起きるとまず普通にニュースを見て、天気予報を見ると、朝ドラをスルーして海ドラチャンネルに行く。何かしら英語音声でかかっているので、そのまま見るともなしにかけっ放しにして、休みの日は家事をしたりストレッチをしたりする。チラ見してちょっといいなと思うと所々真剣に見る。そんな感じで好きになったドラマは結構ある。


 だから、シカオちゃんのビルボードライブ東京のライブをテレビで、しかも生中継すると聞いた時は本気で嬉しかった。もちろん地上波ではないが、CSチャンネルであったとしても嬉しいに変わりはなかった。


 テレビというのはほとんどの家庭にありながら一昔前に比べて市民権を失っていて、あるけど見ない、というのが大方のスタンスだと思う。でもそれじゃ勿体無いよね。考えたらずっと楽なのよ、テレビで見る方が。配信ライブを見るよりも。


 配信ライブ推進委員としては笑、配信ライブにはこれからもあり続けてほしいと思うんだけど、確かに配信は、ライブで見ていた場合途切れることがある。またはそうでなくても、雑音に悩まされたりすることがある。実際私は某ライブのナマ配信において、ひたすらジージーという雑音に悩まされ続けたことがある。まあ、翌日のアーカイブの時にはすっかり解消されていたんだけど。だから、配信はいまいち、という人の気持ちも解らなくはない。

 とはいえ、平日に仕事を休めない、または昨今の事情により会場に足を運べないという人のために、配信ライブは今後も続けてほしい訳よ。


 でもね、そんな問題を一気に解決できるのが、テレビの生中継なんだと、シカオちゃんの今回のライブを見てつくづく思った。

 もちろん、テレビで中継するにはそれ相当の条件があるとは思う。知名度や何らかの柵(しがらみ)など、さまざまに組み合わさっているのは解る。解るけど、もしもそこがクリアになるのなら、ミュージシャンの皆さんには是非ともトライして頂きたい。ただしWOWOWはもう相当やってるから、そこ以外で笑。


 いや、無論WOWOWが悪いのではないけど、もっと裾野が広がってもいいと思うんだよ。ライブ中継=WOWOWっていうんじゃなくて、もっと別の、例えば今回みたいにテレ朝系とか。当ブログご贔屓インストバンドSensationが全員出ているZARD関連だったら日テレだったじゃない?私の好みのものはないけど、フジテレビネクストでも時々やってるよ。そういう風に、どんどん、いろんな局が参入して、みんなで音楽を楽しめるプラットフォームが増えたらもっといいんじゃないかと思っている。


 大体、テレビだったら簡単に録画できるのよ。で、何度でも限りなく楽しめる訳よ。つまりすっごく「視聴者思い」。視聴者目線で考えたらこんなお得なことないんだよね。確かにスカパー入るのには多少ハードルあるけど、1度入っておくとあとは楽じゃないかな。アパートやマンションだとアンテナとか内蔵、というか最初から入っててくれてるところもあると思うし。ほんと、テレビでOAは金額的にも絶対お得だと思う。今回のシカオちゃんのライブももう何度繰り返して見てるか解らないよ、私。まあ、それはもちろん、内容がよかったからに他ならないんだけどね。






 あんなに大好きな曲ばかり聞けると思わなかったし、あんなにぶっ飛んだMCがライブで聴けるとも思わなかったwww いや、知ってはいたよ。トークが最高にヤバいってのは。昔、シカオちゃんのJ-WAVEのラジオのヘビーリスナーだったから。お菓子が当たって箱にサイン書いてもらったの、今でもとってあるもん。箱の方だけど。


 だけどさ、テレビ中継入ってて、これを見ているほぼ全員が録画してる訳じゃない?そんな中でも何の躊躇もなくいつも通りのトークをぶちかましてくる辺り、さすがシカオちゃん。そのサービス精神に感服。ほんと心から惚れ直す。


 「テレビの前のみんなも一緒に!」というシカオちゃんの一言、懐かしい感じがしたけど、これこそがテレビで見ることの醍醐味なんだろうなと思った。このニュアンスが解る世代はもう限られているのかもしれないけれど、「テレビの前のみんな」という言葉には何とも言えない一体感がある。配信ではなかなか得にくい感触だ。


 シカオちゃんはもしかしたら、配信というライブの形を余り好きではないのかもしれない。少し前に出た、一人ライブ(Hitori Sugar)の記録もDVD販売だったし。だけど、そんな中で、どうやったら一人でも多くの人に届けられるのか、模索してくれているとしたら、嬉しく思う。


 テレビは、シカオちゃんも言っていたように音もいいし、また同じ時間にみんなで楽しめているという感覚が配信よりももっとダイレクトに感じられる媒体である。だからシカオちゃんがMCで、「今日ビルボード東京に来てくれているみんなは、何倍もの倍率のチケットを勝ち抜いてここに辿り着いた特別な人達なんだ!」と言っても、テレビで見ている方は全然気にならないし、取り残された感は皆無、むしろ何故かこちらも一緒になって盛り上がってしまっている笑。

 まあそのMCはその後、「そんな特別なみんなを前に、俺は今から下品な歌を歌わなければなりません!」って続くんだけどさ大笑。

 この辺の感じが、シカオちゃんが歌だけでなくキャラ的にも人を惹きつけてやまない部分なんだよね。


 正直な人なんだろうと思う。絶対嘘つけない、というか、自分に嘘つけないというか。その分、不器用な人である面もあるのだろうと思う。だからこそ、事務所やめたりするんだろう(15周年目でやめたとのこと。だからそこから更に10年経ったってことなのよね。感慨深いなあ)。喧嘩したとか、トラブルがあったとかではなくて、きっと自分が納得行くか行かないかの瀬戸際のところで、最終的に「自分に正直に」というところで選んだ結果なんじゃないか。しかしながら、だからこそ私たちはシカオちゃんを信じることができて、シカオちゃんを聴き続けるんだと思う。シカオちゃんのサウンドが素晴らしいから、というだけではなく、シカオちゃんの生き様を応援したくて聞いているんだと思う。




 シカオちゃんの得意とする音楽=ファンクは、ただ明るくてノリノリで、というのではなくて、こう、コード進行や跳ね方次第でダークにも聞こえる不思議なサウンドである。

 心の奥に、普段は隠している、後ろ暗さや沈んだ不安や欲望や嫉妬といった、まるで膿のように溜まったネガティヴな感情を、これでもかってくらいぐいぐい押し出される気分。何というか、ちょっと荒っぽいデトックスをしているみたいな。だから、ちょっと痛いけど気持ちいいというさ。ほら、健康サンダルってあるじゃない?あれって時々めっちゃ痛いけど、一度履いたらやめられないんだよね。ファンクって何だかあんな感じ。


 間宮さんのギター、まさに「忍びの間宮」。でも私、ああいうギター好きだなあ。決して邪魔しないけど出るとこは出る。絶対必要とされるギター。シカオちゃんも言ってたけど、花形の存在だからこそ「前に出っ放しになる人が多い」ギタリストの中で、スッと姿を隠せるような人って少ないのかも。気がついたら後ろで鳴ってた、くらいの塩梅がいい時ってあるよね。




 突然ですがSensationです。左端が大賀くん、右端が車谷くん。


 ギターっていうと出さずにはいられない身体になってしまっているので出すけど笑、当ブログきってのご贔屓ギタリストであるSensationの大賀好修さん=大賀くんの場合、彼が信条としている「カッティング」は、まさにこの「気がついたら後ろで鳴ってた」音の系譜に入るんだと思う。印象的なイントロなんかでももちろん使われるんだけど(山下達郎さんの「Sparkle」とかさ。あと一瞬で終わるけど小田和正さんの「ラブストーリーは突然に」のアタマね)、歌の後ろで鳴ってることも多くて、聞こえるとこう、期待感でワクワクするんだよね。


 シカオちゃんのバンドでもう一人明記したいのが、ジャズなんかでもたくさんセッションして叩いてくれている沼澤尚さん。唸るよねえ。この方のドラミング。狂いなくタイトなのにしっかり跳ねる。「あまい果実」みたいな歌にこれだけ「跳ね」を感じるって凄い。ドラムやシンバルの数がそれほど多くない辺りがSensationの車谷くんにちょっと似ている。(余談だが、もう一個驚いたのが沼澤さん、慶応の法学部だったのね。慶応の法学部卒の一流ドラマー。凄いわ色んな意味で。)


 不思議とシカオちゃんにはいやらしさを感じない。どんなに凄い言葉を使っていても(「トワイライト☆トワイライト」の中に突然出てくる「夢精」とか)どんなに凄いシチュエーションを歌っていても(「JOKER」なんて「◯病の歌」だって本人がはっきりライブで言ってるしね)どんなに本人がMCで「下品な歌」と明言していても(「イジメテミタイ」、SとかMとかがぐちゃぐちゃのヤツね。しかし凄い歌詞だよなあこれw「中指を曲げて」ってさあwww)、どれもシカオちゃんの声が歌うと、気持ち悪さやヌメっとした手触りがしない。むしろドライであり、乾いているからこそ、そこはかとない哀しみが歌の中に見え隠れする。シカオちゃんの声って、もう、それだけで全てだよね。ライブだとそれが心から解る。





 「夜明け前」「夕立ち」「Affair」「黄金の月」「ストーリー」「午後のパレード」、そしてアンコールの「あまい果実」、どれも大好き過ぎるくらいのナンバーで、特に「夕立ち」がまさか4曲目に聞けるとは思わなくて、テレビの前で叫んだくらいだ。

 「夕立ち」、こんなに好きな曲ないってくらい、シカオちゃんの曲の中では絶品。メロディもピカイチでカッコいい。またシカオちゃんの歌詞は全て好きだけど、この曲の歌詞の、何とも言えない気だるい「別れ一歩手前」の空気感が好きだ。


 「最後ここでProgress演ると思っただろう?!やんねーんだ今日は!」には爆笑した。いいなあこのツンデレぶり笑(デレがどこにあるのか解らないけどw)。アンコールラストの「このところちょっと」個人的にはこっちのが嬉しかったわ。


 ライブの楽しみ方に多様性が認められるようになった今だからこそ、テレビを見直すいい機会を貰ったと思う。それが大好きなミュージシャンの一人、シカオちゃんだったことがとても嬉しい。

 さて、視聴期限はないけれど、今日も見るかな。



 



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