文:見る聴く「Closer? いやいや近すぎでしょ!ー『村田陽一 Big Band アルバム “Crawling Forward” リリース記念』ライブ@Blues Alley Japan(配信にて)ー」





 地方の人間でも平日に東京のライブを見ることが出来るようになったのは、配信ライブがポピュラーになって1番の功績だと思うけど、さらにもうひとつ、配信ライブのお陰で、同じ日の同じ時間の別の場所のライブでさえも、時間差で見ることが出来るという、夢のようなことまで叶うようになった。


 今回私は、月曜の夜の、東京と大阪で行われたライブを、時間差で同日に見るというスーパースペシャルなことを試みた。こんなこと、物理的にカラダを運ぶとなったら絶対出来ないじゃない?折角の配信ライブなのだし、普通なら出来ないことをやってみたかった訳よ。




 村田陽一さんの名前は知っていたけど、まさかあんなに数多の音楽やミュージシャンに関わっていた方だとは思わず。ネットで調べて大驚愕よ。聴いたことない人いないんじゃないかな?この方の音楽を。ウィキの説明ではトロンボーン奏者、作曲家、編曲家、音楽プロデューサーということになっており、ジャズ、クラシック、ポップスとそのジャンルは多岐に渡る。

 関わった人達の中で私的にツボだったところだけ書くと、


米米CLUB、オルケスタデラルス、デヴィッド・サンボーン、マイケル・ブレッカー、ランディ・ブレッカー、マーカス・ミラー、井上陽水、ピチカートファイヴ、サザン、オリジナルラブ、Swing  Out Sister、渡辺貞夫、村上ポンタ秀一、吉田美奈子、ジョー・サンプル


 ポンタさんとはレーベル作ったりアルバム作ったりと、交流が深かったと知る。


 という訳で、とんでもなく幅が広く、とんでもなく実力のある方のビッグバンドのライブなのだと解り、これは見てみたいなと当日の昼過ぎにチケットを買った次第。

 そのチケットが3,500円で、配信にしちゃ高いなと思っていたらこれが何と、1st・2nd両ステージ分込みのお値段。まあなんと太っ腹。逆にお得極まりないというね。ブルーノートさんにもぜひやって頂きたい。





 そのビッグバンドのメンツが凄いんだ。2月に見たブルーノートオーケストラの時にも出ていた方が何人もいることに気づく。中でもお目当ては勿論マサトクンことサックスの本田雅人さん。4月にはマサトクンがメインのライブがブルーノートで行われ配信もされる。もうチケット買ってあるし笑。


 それともうひとり、同じくサックスだけど、こちらはバリトンサックスの山本拓夫さん。この方の名前に妙に覚えがあり、調べるとそれはもう出るわ出るわ。私が見たのはきっと、80年代後半のエピックソニー関係のミュージシャンのアルバム。特に美里、靖幸には欠かせない存在だったかもね。どちらにもよくブラスサウンドが使われていたし。勿論、ドラムの渡嘉敷祐一さんのお名前にも覚えが。超有名ドラマーのひとりだもんね。みんな昔聴いたアルバムに関わってくれていた方々。

 なもんで、配信が始まるのを心から楽しみに待った。



 いやあ、もう圧巻。

 ラテンフレイバーてんこ盛りのファンキージャズなビッグバンドサウンドは、聴き始めてすぐに踊りたくなるくらいご機嫌でパワフル。とはいえ、サウダージな感じのメロディも多々あり、少し切なくて、そのメリハリがなんとも気持ちよい。


 ソロが長いんだよね。普通なら数小節で終わるんだろうと思われる各楽器のソロパートが、ものすごく長いの。ひとりで大丈夫なのかな?って思うくらい長い笑。けどそこはもう全員が年季の入ったプロ中のプロなので、その長いソロこそが聴かせどころで、終わるともう拍手しか出てこない。


 特に、「日本のマイケル・ブレッカー」こと小池修さんのテナーのソロ!この方は、ブルーノートオーケストラでもお顔を見かけたのだが、どうやらものすっごい御仁らしく、どこで息継ぎしてんのかなってくらいの怒涛のソロがそらもう美しくて渋くて迫力が半端なくて。見た目は優しそうな普通のおじさまなのだけど、テナーサックス奏で出すとやばいよ、カッコよくて。


 怒涛のソロといえば勿論マサトクンのソロも素晴らしく流麗。流れるように美しいのにガツンとくるメロディラインに聞き惚れる。同じくタクオさんのバリトンサックスも、お腹にグッと響くめっちゃかっこいいソロだった。


 また聞き惚れるといえば、トロンボーンをハーモニカも持ち替えて演奏していた佐野聡さん。いやあ、あれは泣けるでしょ。いや、泣かせようとしてる風はないのよ、そういう、あけすけないやらしさは全然ないの。でも、その乾いた哀愁こそ泣けるんだと思うのよ。佐野さんのハーモニカ、素晴らしかったわ。1音1音がはっきりとしていて。ハーモニカで1音も濁らないのって凄くない?そして佐野さん、楽しいおじさまだった笑。





 全員が全員、本当に一流プレイヤーなのが、音を聞くだけで伝わってくる。そして配信の画面上には、まるでタコ部屋か?!と言いたくなるくらいにみっしりと全員が楽器と共に詰まったステージ笑。「導線がない」と村田さんも言っていたけど、ほんと、足の踏み場あるのかな?って感じだった。

 でもね、実はこの感じがとっても懐かしかった。

 今絶対こんな至近距離で人と触れ合ったり繋がったりすることってないじゃない?だから、沢山のプレイヤー達がみんなで集まっている姿を見るのがとても新鮮で、何だか逆に嬉しくなった。

 だけどそのプレイヤー達はちゃんと感染対策にも当たり前みたいに気を回していて、セカンドステージに上がって前を向くまでずっとマスクをしている方が多かった。これぞお手本。これぞ模範。


 「誰も話聞いていないんだもん〜!」なんていうセリフが飛び出したり、最後のメンバー紹介でトロンボーンの3人だけ忘れちゃったりと、始終リラックスした雰囲気の村田さんのMCと、ビシッと決まりまくるプレイとのギャップも楽しく、長い配信時間にもかかわらず何度も繰り返して見たくなるライブだった。4月3日かな?週末まで見られます。





 プレイヤーであっても、作曲ができて編曲ができて、プレイヤーとしてだけでなくそこにも他からのニーズがあるくらいの人なら、サポートミュージシャンとしてだけでなく、やはり自らがメインのひとりとして所属するフィールド=バンドが欲しくなるのが普通だと思う。


 またプレイヤーのみとしてであっても、様々な音楽が自在に奏でられるのであれば、やはりひとつのジャンルではなく、いろんな場所に自らを置いてみたいと思うのも、ごく当たり前のことであろう。


 Sensationというのは、そんな人達が集まったインストルメンタルバンドなんだと思う。村田さんが「このメンバーで集まって演るのはまた1年後くらいかな」と言っていたように、Sensationのメンバーも、そうそういつも顔を突き合わせている訳ではないけれど、大賀くんが配信ライブの時に言っていたみたいに、集まればいつでも「シュッとまとまる」そんな4人なのではないかと思っている。ジャズを演る、演れる人達ってのはきっとこういう感じなんだろう。

 まあ、Sensationのファンとしては、もうちょっと長い間4人で一緒にいてほしいわ、とは思うんだけどさ。


 写真は、最初の3枚は村田さんの公式Twitterより。



 で、この日梯子した鈴木央紹さんの配信ライブについては後の記事に続く予定。






0 件のコメント:

コメントを投稿