手前の一番目立つのが今日の主人公、大楠雄蔵さん。
Sensationの大楠くんがインスタのストーリーに自身のピアノの演奏をちょこっとずつ載せてくれるのに気づいたのは、昨年の秋、いや初冬だったか。
最初に聞いたのはglobeの “Departure” だった。場所は何処かの室内だったと記憶している。TKの奏でるあの印象的なピアノのイントロを覚えている人は多いだろう。それを、大楠くんの優雅な指が奏でているのである。職場の休み時間にたまたま見つけて眠気が吹っ飛んだ。うわあ、なんて上手。いや、相手はプロなんだからこんなこと言う方が失礼なんだけど、でも本当によくTKのあの、優雅だけど少し緊張感のある音の雰囲気を醸し出していて、実に素晴らしかった。あれ以来、時々大楠くんが上げてくれるストーリーが楽しみで仕方がない。
プロがさあ、街に置いてあるピアノで名曲を演奏してくれるなんて、こんな贅沢はないよねえ、と思うんだけど、それより、大楠くんはきっと、ピアノで演奏することとか、ピアノ自体が大好きなんじゃないかと勝手に思っている。そこにピアノがあれば、ピアノは自分を奏でてほしいと思っているというか、大楠くんにはきっとそんな、ピアノの声が聞こえるのかも知れない。ウイルスが蔓延る時代になって、駅のピアノを触る人の数もきっと減ったろう。ピアノだって寂しいはずだ。それをプロが弾いてくれるのである。ピアノも絶対嬉しいと思う。実際、大楠くんが街のピアノを弾くと、どのピアノもとても軽やかに優美に嬉しそうに音を出す。
これまでに聞いたのは、このDepartureと、明石駅のピアノで弾いていたTM NETWORKの “GET WILD” (ドラムの鶴屋さんが録画した映像が鶴屋さんのTwitterに載っているので未見の方は是非。それにしてもこの場に居合わせた方、どんだけラッキーだって感じ。このご時世だからそんなに近くには寄れないと思うけど、私だったら絶対ガン見だなw)だったので、次は何かなーと思っていたら、まさかの洋楽大ヒットソング。ヴァネッサ・カールトンの “A Thousand Miles”。
大賀くんと大楠くん。Y.O.コンビね。
この曲が出たのは2002年で、この年はノラ・ジョーンズが大大大ヒットしたので、この曲の印象が強いという人はそれほどいないかも知れないが、J-WAVEなどラジオでは毎日のようにかかっていたので、当時ラジオ派だった人ならきっと知っていると思う。今聞いても素敵な、というか美しい、そして悲しい曲である。
では詞を。
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Making my way downtown walking fast
Faces pass and I'm homebound
Staring blankly ahead just making my way
Making a way through the crowd
And I need you
And I miss you
And now I wonder
If I could fall into the sky
Do you think time would pass me by?
'Cause you know I'd walk a thousand miles
If I could just see you tonight
It's always times like these when I think of you
And I wonder if you ever think of me
'Cause everything's so wrong and I don't belong
Living in your precious memories
'Cause I need you
And I miss you
And now I wonder
If I could fall into the sky
Do you think time would pass me by?
'Cause you know I'd walk a thousand miles
If I could just see you tonight
And I, I don't want to let you know
I, I drown in your memory
I, I don't want to let this go
I, I don't
Making my way downtown walking fast
Faces pass and I'm home bound
Staring blankly ahead just making my way
Making a way through the crowd
And I still need you
And I still miss you
And now I wonder
If I could fall into the sky
Do you think time would pass us by?
'Cause you know I'd walk a thousand miles
If I could just see you
If I could fall into the sky
Do you think time would pass me by?
'Cause you know I'd walk a thousand miles
If I could just see you, if I could just hold you tonight
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仮定法ってのはさあ、2年に一度は仕事で必ず、ガッツリと語らなくてはならない文法事項なんだけど、基本的には高校生になってからしっかり習うものなので(最近の中学生は「I wish+仮定法過去」を習うと聞いたのですが本当ですか⁈ 指導要領変わった⁈本気で驚いたが、そうは言ってもまあ、覚えて高校に来る子はまずいないと思うけど)実際には定着度が低い。
けど、こんな曲で意味を教えたらきっと解って貰えるんじゃないだろうか。
仮定法過去というのは「現在実現していない、またはしそうにないことについて言う時に使うもの」だから「~ならいいのになあ(でもそうじゃない)」というのが一番簡単にイメージできるかな。日常的に使ってるでしょ?こういう表現。
「お砂糖を取ってくれませんか」という依頼の表現は、Can [Will] you pass me the sugar?だよね。でももしそれを目上の人や見知らぬ人、つまり自分との関係が「遠い」人にお願いする場合には、Can [Will] をCould [Would] に変えてCould [Would] you pass me the sugar?って言うよね。
ここから、過去形には過去を表すだけじゃなくて、「距離感」を表す用法があることが解る。それを応用したのが仮定法で、現実には起こらない、起こりそうにないこと=現実の自分と距離のあることを言うのに、過去形を使っているというね。だから仮定法過去の過去形には、過去の意味はなくて、距離感を表しているだけだから、現在の時制で訳さないといけないんだ。
とまあ、この辺はテキトーにスルーしてください笑。
で、Vanessaの詞ですが。
fall into the skyをそのまま訳しているサイトが実に多いのだが、「空から落ちる」ことはあっても「空の中に落ちる」は物理的にはおかしい。もちろんこれは歌の歌詞だから、これでも全然いいと思うんだけど。
でも私はやっぱしそれでは納得いかなかったので笑、「空へと吸い込まれる」と解釈してみた。
それと、大好きな本の一つ「英文翻訳術ー東大名誉教授と名作・モームの『大佐の奥方』を訳す」(行方昭夫著)の中で、翻訳の際には英文の中にある代名詞をできるだけ訳さない方が日本語らしくなる、とあったので、それを意識してみた。また、今回は大楠くんのピアノを聴いて訳したいと思ったので、男性が主人公の訳にしてみた。
洋楽だと基本、主語が全部 “I” なので、一人称にやたらバリエーションがある日本語と違って色がついてない分、訳す時に自由度があっていいんだよねえ。これこそ他言語を訳す醍醐味だよ。
belongは「あるべきところにいる」≒ be であり、drown (カタカナで書くのは嫌なのだが、あえて書くとこれは「ドロウン」じゃなくて「ドラウン」と読みます)は「溺れる」だけど、記憶の海に溺れる、なんて安っぽい気がしたのでこの辺は勝手にアレンジした。
仕事に必要なスキルは「英文解釈の力」をつけさせることであって、「上手に翻訳する力」は受験には必要とはされない。こう言うと語弊があるかも知れないが、受験生に必要なのは、「自分はこんなにきちんと正確に英文の意味が理解できていますよ」というアピール力であり「こんなに流暢で美しい日本語に直せますよ」は余り意識しなくて良い(そうは言っても日本語としてアウトな和訳はもちろんアウトなんだけどね)。
でも、そこを知っているからこそ、教える側の私は、いい翻訳もできたらダブルで嬉しいなあと思うのである。
では、和訳。
素敵なピアノをいつも聞かせてくれる大楠くんに、貰ってもらえなくても勝手に捧ぐ笑。
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都会の雑踏を早足で歩けば
見知らぬ顔が通り過ぎてく
ぼんやりとした目で
ただ歩くだけ
人混みを交わしながら
手を伸ばしたい
寂しくてたまらない
叶わない願い
この空に吸い込まれたら
時は経ってくれるだろうか
たとえ1000マイル歩いたっていい
その顔が見られるのなら
君を思うたびに時は止まる
そんなことはあるかい?
自分の体はここじゃなくて
思い出の中に生きてる
手を伸ばしたい
寂しくてたまらない
叶わない願い
この空に吸い込まれたら
時は経ってくれるだろうか
たとえ1000マイル歩いたっていい
その顔が見られるのなら
知らないままでいて
こんな僕のことを
忘れられない記憶
手放せない過去
都会の雑踏を早足で歩けば
見知らぬ顔が通り過ぎてく
ぼんやりとした目で
ただ歩くだけ
人混みを交わしながら
もっと手を伸ばしたい
余計に寂しくてたまらない
叶わない願い
この空に吸い込まれたら
時は経ってくれるだろうか
何千マイル歩いたっていい
その顔が見られるのなら
この腕に抱けるなら
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