文:見る「会員価格とはいえ2,000円ってのは破格過ぎませんかブルーノートさんーBLUE NOTE TOKYO ALL-STAR JAZZ ORCHESTRA directed by ERIC MIYASHIRO with special guests KAZUMI WATANABE, TAKASHI MASUZAKI & YOSUKE ONUMA (at December 15th, 2021 配信にて)」




 配信ライブってどうやら世間では賛否両論あるみたいだよね。まあ私は絶対的に賛成派なんだけど。今日書くようなライブって絶対都会の平日に行われることが多いから、仮に物理的に行ける世の中であったとしても、行くことは叶わない訳よ。それが、配信だと叶っちゃう。だから思うんだけど、この世の中がいつか正常に戻ったとしても、配信ライブってのはやめないで欲しいなあ。


 配信ライブに抵抗がない理由の一つとして、私の世代って、テレビでPV、その昔はプロモーションビデオなんて呼ばれているものが流れ出した世代なのね。それがとっても楽しくて。PVってのは、ライブのこともあったけど、作り込んだ映像だったことの方が多くて、見る側はその作り込んだヤツをひとつの作品として楽しんだ訳よ。楽曲とは別次元で。


 だから、配信で映像を見て楽しむってことに、もしかしたら若い人たちよりも寧ろ私達世代の方が馴染むのかも。


 私達世代がどこかって?

 私は、大好きを公言してやまない、大賀好修さんのいっこ上です。それ以上は言いませんw




♪BLUE NOTE TOKYO ALL-STAR JAZZ ORCHESTRA directed by ERIC MIYASHIRO with special guests KAZUMI WATANABE, TAKASHI MASUZAKI & YOSUKE ONUMA (at December 15th, 2021)


 リー・リトナーの来日が昨今の事情により叶わなくなり、代わりに日本のギタリスト3人、小沼ようすけ・増崎孝司・渡辺香津美を迎えて行われることとなったビッグバンドのジャズライブ@ブルーノート東京が、配信されることになり、自分のスケジュールも考えずにソッコーでチケットをゲットした。


 こんなメンツのライブ、見ることなんて滅多に出来ない。もちろんリトナー氏が来るのが1番良かったし、それが配信されないかなあと密かに思っていたのだけど、それとは別の観点でこの3人を見たら、一体どれだけ豪華なんだと。で、配信ライブ。



 ブルーノートの配信を見るのは2回目で、その時も増崎孝司さんがメイン(で徳ちゃんこと徳永暁人さんがベース弾いてた)だったので、今年増崎さん配信で見るのこれで3回目笑。


 しかしブルーノートってのはもう始まる前からテンション上がるよね。そこはかとないさざめきが聞こえると、そこはもう自宅じゃなくて会場だもんね。あの雰囲気の音をそのまま流すのがいいんだよなあ。


 エリック・ミヤシロ率いるブルーノート・オールスター・ジャズオーケストラ(BNASJOって略しても長いかw)。サックス・トロンボーン・トランペットがそれぞれ4人ずつ。それに、ピアノ、ベース、そしてあの川口千里のドラム。ブラスサウンドが身体中に染み渡るような勢い。ミヤシロ氏ももちろん指揮だけじゃなくて迫力のトランペットで仲間に入る。


 1番の注目はアルトサックスの本田雅人。若い頃、いろんなアルバムに参加しているのを見かけ、当時から「マサトクン」と勝手に呼んで、お気に入りミュージシャンに入れていたほど。ここへ来て配信とはいえ生演奏が見られるとはねえ。気分上がりっ放しである。


 ご機嫌なオリジナルナンバー “Blue Horizon”で始まり、今年他界した元スクエアの和泉宏隆氏のナンバーを集めたメドレーへ。マサトクンの奏でていた、あのなんとも言えない形のウインドシンセサイザー(下の写真みたいなの)が素晴らしくいい音だった。3Dプリンタで作って、iPadを通して音を出すんだとか言ってなかったっけ。可愛い音なのに妙に切なく響くのが不思議だった。聴いているとなんだかちょっと鼻の奥がツンとして。その後ピアニストの宮本貴奈を迎えてマイケル・ブレッカーのナンバーを。





 バンドメンバーが時折映る時に見せる、ほんの少しの笑顔がとても良かった。心からステージを楽しんでいるようで、見ているこちらも自然と笑顔になる。音を聴いているだけでも十分ハッピーなのだけど、こうしてはっきりとお顔が見えると本当に嬉しい。



 そしていよいよ、ギタリストを迎えてのコーナーへ。


 トップバッターの小沼ようすけ君。あえて「君」なのは、実は私は彼のデビューアルバムの頃からのリスナーであり、まだ若くて可愛いジャケットの写真を見て「ようすけくん」とこれまた勝手に呼んでいたからである。


 当時、ジャズをまだ聴き始めて間もない頃で、CDショップに行ってはジャズのコーナーをひとしきり眺めたり漁ったりしていた。小曽根真さんがきっかけだったと思うが、日本人のジャズミュージシャンによく目が行き、その中でようすけくんを知ったのである。ディアンジェロのBrown SugarとかジャミロクワイのVirtual Insanityのカバーが大好きで、よく聴いていた。


 ライブでは、このギタリストを呼んでのコーナーからは、来るはずだったリー・リトナー氏が選んだ6曲から2曲ずつ選んでプレイしてくれた。ようすけくんは、リーがかつてカバーしたサックス・プレイヤー、ソニー・ロリンズの「アルフィーのテーマ」と、リーのオリジナルのBoss City。


 ようすけくんは指弾きなのよ。だから音色がとっても柔らかで、耳触りが最高だった。タメのタイミングも絶妙で、程よくセクシー。リー・リトナーの音楽って端正なのに色気がある。その味がよく出ていたと思う。



 2番手は我らが増崎孝司。いやあいぶし銀だねえ。それでいながらソロの速弾きなんて痺れちゃうからね。増崎さんが途中で「これ、リトナーさん、聞いててくれるといいなあ」って言ってたんだけど、本当に聞いていらしたみたいで、ライブの2日後にリトナー氏からのメッセージが届き、動画で紹介されていた。ニコニコ笑って、とても喜んでいらした。


 ニコニコといえば増崎さんも、ギター弾く時ニコニコしている人。大賀君タイプとでも言おうか笑。嬉してく堪んないんだろうなあって感じがこちらに伝わってくる。それと同時に、客席とのコミュニケーションを上手に取ることにも気を回していて、配信だけど見ていてとってもハッピーになった。


 増崎さんのプレイしたナンバーは、2曲ともリトナー氏のオリジナルで、13とWes Bound。どっちも渋くてカッコよくて、一人で見ながらヒューヒュー言ってた笑。増崎さんのギターってキレがいいよねえ。シャープな持ち味が生きた選曲だと思う。リトナーにはウェス・モンゴメリの曲をカバーしたアルバムがあると聞き、配信見終わってから即DLしたw



 そして3人目、真打登場の渡辺香津美。1曲目は、3人の誰もが弾きたいと言わなかったという笑、最難曲Etude。でもねえ、とっても美しい曲なの!きっとみんな聞いたことあるんじゃないかなあ?耳馴染みのあるメロディだよ。この難曲が香津美さんの手にかかるとまあなんと軽々しく弾きこなしていらっしゃることか!少なくとも私にはそう見えた。


 あのね、渡辺香津美さんの左手が凄いのよ。あの方はなんであんなにネックを握る左手が滑らかに動くの?なんかね、そこだけ違う生き物みたいにね、めちゃくちゃスムーズなのよ。これは度肝抜かれたね。


 その超絶テクの大御所が奏でるもう1曲は、エリックさんたっての希望でCaptain Carib。こっれがまた、あなた、かっこいいことこの上なし!意味もなく自宅でキャーキャーしてしまうレベル。踊りまくりたい衝動を止められないってくらいよ笑。


 ここに挙げた6曲は全てサブスクされているので、興味があったらぜひ聴いて頂きたい。または、ブルーノートの動画見て、いいなあと思ったらでもいいので、お聴き頂きたい。



 3人が去ってのビッグバンドでのラストはバードランド。みんなで楽しくねっ!ってな感じでとっても幸せな気分にさせられた。更にもちろんアンコールがあって、ギタリスト3人全部呼んで、今年他界したスーパーピアニスト、チック・コリアの名曲「スペイン」を全員で。

 ちなみにこの曲の頭を聞いて「仕事人?」と言ったのは私の夫である。






 ギタリストさんたちは交代にソロを弾くんだけど、1人が終わると他の2人がそれを「いいね!」って感じでめっちゃ笑顔で讃えるんだよね。増崎さんが真ん中にいたんだけど、香津美さんと一緒に弾く時は身体を傾けて寄って弾き倒し、ようすけくんがソロを弾き終えるとようすけくんとグータッチしてるし、もう楽しそうで楽しそうで仕方ない!って感じで。


 で、それ見て思ったんだよね。

 いつかさ、こういうのに大賀くんが入ったのを見たいなと笑。


 大賀くんがギタリストとして、他のギタリストの人と共演したり、ビッグバンドと共演したりするのを見たい。ああ、Sensationの4人がビッグバンドっぽいたくさんのブラスと共演するのもいいな。ぜひ見たいな。あの4人なら十分太刀打ち出来るだけの実力派だし。ダメかなあ。すっごく見たい。


 とにかく、最高だった。配信だと分かっていても拍手せずにはいられない、そんなライブだった。





 最後に、ラスト曲の前にエリック・ミヤシロ氏が語った言葉が素晴らしかったので、少し長いが、概略を記しておく。彼のこの言葉は、本当に、音楽を愛する人には響くはずだ。



「…いまだにちょっとだけ不安が残る、かなり良くなったような気はしますけど、世界中でもまだ怪しい雰囲気が残念ながら漂っております。どうしてもこのような件が起きると、最初にカットされてしまうのが、エンターテインメントと言われている、我々の業種ですよね。


 音楽は、聞かなくても死にはしないだろう、みたいな感じで、扱われているような、僕はそんなふうにとってしまいます。でも、音楽は、生きていく中での、心の栄養ですよね。毎日頑張ろうっていう。大きな大きな役目があると思うんですよね。


 我々は生まれた時から、バースデイソング、音楽に包まれてお祝いをして頂けるじゃないですか。入学式とか終業式も、校歌とか、いろんな音楽で、送り出して頂いています。結婚式、葬式なども、音楽を使う国はたくさんあります。音楽というのは我々に密接な関係があって、かけがえのないパートナーなんですよね。辛い時とか悲しい時とか、気持ちが萎えてる時とかは、慰めてくれる。楽しい時はもっと盛り上げてくれる。大切な存在だと思います。


 でも、お客様との距離が離されてしまうのは、やっぱり贅沢と思われているからなんですよね。プラス、この音楽の輪はすごく、脆いです。一瞬の気の緩みで、お客さんとの距離が遠くなってしまいます。


 おかげさまで、配信というのが発達して、ここに来られない方達が、世界中から我々の演奏を見られるような便利な世の中になったんですけど、やはり…これですよね。お客さんがいて我々がいて、この真剣勝負というか、コミュニケーションが大事なんだと思います。


 だから、生の音楽が絶えないように、皆さんも、どうかお身体に気をつけて。皆様が、安心して、音楽と遊べる環境を(ブルーノートも)作ってますので、皆さんもどうか気をつけて、会場に、ホールに戻ってきてください。そしてまた、みんなで作るっていう音楽を楽しみましょう」



 これまでの、誰の言葉より胸に響いた気がする。それは、真剣に、言葉の限りを尽くして、語ってくれていたからではないかと思う。時に人は、語らずとも相手には通じていると思いがちだが、それはやはり傲慢である。語ってこそ言葉。語ってこそ、心。一言なんぞで済ませてはいけない時が、人生にはある、


 だから大賀くんはいつも、彼の言葉の限りを尽くして、私達に語りかけてくれるのだなあと、あらためて思った次第である…って何で大賀くんの話で終わるんだか笑。





以下に、ブルーノートの今回のライブのYouTubeの動画を貼り付けておく。ぜひ見てみて欲しい。














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