文:見る「美味しいご飯をまたいつの日かーSpecial Session vol.3 for 60th Anniversary of "impulse!" records, "Re:COLTRANE II" @Blue Note Tokyo(配信ライブ)」





 大好きなテレビ番組の話で、以前「ブリティッシュ・ベイクオフ」の話は書いたと思う。その時にも触れたが、同じイギリスのテレビ番組で「ソーイング・ビー」というのがある。こちらは今、NHKのEテレでOA中なので見ようと思えば見られる番組。




 イギリス全土から集まった老若男女のソーイング好きが、「1度に3つの課題をこなしながら、毎回の脱落を回避して最終的には3人に絞られ決勝戦」という構図は「ベイクオフ」と同じ。


 私は生来の不器用で、お菓子作りもお裁縫も全然得意ではないが、見ていてとっても楽しい。「ビー」の方では、ファッションの推移なんかも時々教えてくれて興味深い。


 1枚の布から立体が出来る様を見るのは本当にエキサイティングだ。しかしながらもっと凄いのは、元は全く違ったものを生まれ変わらせて仕立て上げるところだ。例えばテントとか、パラソルなんかを服にしちゃったりする。またはペットの服とか水着なんかを作ったり。見る側の想像を遥かに超えたところでソーイングする、その発想の豊かさに唖然としたり感嘆したり拍手したり。


 それは全て、ソーイングが好きだからなし得るのだろうけど、きっと、元の服だったり布だったり、そういったものへのリスペクトがあるからこそ、なし得るのだろうとも思う。





 今回、思いがけずチケットを入手した配信ライブを見て、ふと、この番組との接点があるような気がした。


 言わずと知れたジャズ・ジャイアント、サックスプレイヤーのジョン・コルトレーン。その余りにも有名な曲の数々を、幾度となく聴き込み、解釈を繰り返し、端から全部切り刻み、思いっきりぶっ壊し、それを新しいもので繋ぎ合わせたような演奏は、難解かと思われたが全くそんなことはなく、洗練されていながらまさにド迫力の聞き応えで、会員価格1,500円という破格すぎるお値段で十二分に楽しませて貰った。部屋やキッチンでCD感覚でリピートして聞くうちにクセになり、次回同じような企画があったら是非またチケット買いたいなと思ってしまった。力一杯お得感満載のライブだったと言っておく。





 ライブが難解でなかった理由はもちろん、プレイヤー達全員にコルトレーンへの大いなるリスペクトと愛があるからであろう。そして何よりも、いくらぶっ壊してもそこには必ずコルトレーンらしさが残るという、元曲の素晴らしさが理由だと思う。


 個人的には、コルトレーンというプレイヤーに惹かれたことは正直余りなくて(苦笑)、サックスプレイヤーといえば私の中ではハンク・モブレーの方がなんぼも魅力的である。コルトレーンのような前のめりの派手さがないのに印象的なメロディは、聞く人によっては「泥臭い」と言われるようだが、私にはそのブルージーな部分こそがモブレーのアトラクティブな部分であると思っている。






 なもんで、コルトレーン大好きだからこのライブ見ました的な感じではなかったってのも、私がこのライブを心から楽しめた理由かもしれないが、とはいえ、お好きな方にこそ見て頂きたい。これだけの再解釈を可能にするコルトレーンの曲の素晴らしさにあらためて気づかれるのではないかと思うから。





 そしてそれだけでなく、今回のライブが凄かったのは、私は全く知らないで見ていたのだけど、4人のサクソフォニスト全員とベーシストが何と、あのバークリー音大出身なのである。いやあ参ったね。バンマス的な存在の馬場さんがメンバー紹介の時「同じ大学で」と何度か言っていたのを聞き、ふうんどこの大学だったんだろ?と思って後から調べてみたらなんとバークリー。しかも中には全額奨学生がいるわ主席がいるわの超エリート集団。


 学歴が全てではないにせよ、そこまでの努力をしたということが素晴らしいし、その名に恥じないどころかその名を更に豪華に飾るほどの名演を今回聞かせてくれたと思う。



 そのMCで馬場さんが思わず客席に言った「ご飯、美味しいですか?」には笑った。「美味しいですよね、ブルーノートのご飯。食べ過ぎました」と言っていたが、確かにブルーノートは何を食べても飲んでも本当に心から美味しい。ハズレ一切なし。




 そういえば、このブログでは書かない回はないと言っても過言ではない、我らがスーパーギタリスト、Sensationの大賀好修=大賀くんは、ライブ前は食事をしないというようなことを言っていたことがあるんだけど、ブルーノートはどうだったんだろう。何か食べたのかな。松本さんのソロライブの時のカクテルOMOTESANDO、飲んだのかな。あれ、めっちゃ美味しかったんだけどな。

 


 Blue Trainから始まってMCの後のGiant  Steps、至上の愛、Naimaなど、キレのいい迫力のサウンドが目白押し。アンコールのMoment‘s Noticeも凄く良かった。


 全員素晴らしいのだけど、特に耳を奪われたのは、紅一点(なんて言い方も古いけど)の中島朱葉さん(アルトサックス)のBlue Trainのソロ。見た目とっても可愛くて、洋服のせいかどことなく「癒し系女子」なのに、ソロパートに入ると「行けー!」って感じで笑、いい意味でギャップがあって拍手だった。ソロのメロディも私好みだった。クールでスピード感があって。


 また、松丸契さんのソプラノサックスのソロも素晴らしかった。ソプラノサックスの音って結構好きなんだよね。「至上の愛パート1:承認」だったかなあ?予想を裏切るメロディラインが耳に残った。


 そしてなんつっても持ってってたのが、あえてこう呼ばせて頂きたい、ウルトラ級のイケメンベーシスト須川崇志さんのベースソロ。いやああれは凄い。ベースってさ、佇まいがもうほんと美しいよね。そこに不安定なメロディのソロが乗っかると妙な高揚感で心掻き乱される。「至上の愛パート2:決意」での、なんていう楽器か解らないけれど、ベースの下にキャラキャラと音がする打楽器をつけて演奏したソロシーン、あれは目も耳も持って行かれた。





 配信はセカンドステージだったんだけど、ファーストステージを、渡辺貞夫さんが見にいらしていたとのことで、Twitterなどにみんなで撮った写真が上がっていた。どうやらドラムの竹村一哲さんはナベサダさんのツアーメンバーだったこともあるらしい。凄いなみんなほんと。

 

 これが1,500円(会員以外は1,000円増しだと思うので2,500円)ってのは安すぎだと思いますブルーノートさん。こんな思いがけない名演に気楽に出会えるのが配信ライブのいいところ。どうかまた見せて下さい。


 写真はBlue Note TokyoのTwitterより。また、下の動画はライブ前の紹介動画。ご覧くださいませ。







 

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