三部作もいよいよ終わりかと思うと感慨深いものがある。まるで映画のようなエンドクレジット、そしてその後のオマケと呼ぶにはあまりにもゴージャスな3人の姿に、笑顔になったり涙したりしながら、何度も何度も繰り返して見た。
今言った、このエンドロール後の映像が、毎秒美しくて、どこを切り取ってもポスターになりそうだった。特にバーに座るウツの見事さにはヤられた。私は特別ウツに思い入れはないのだが、この美しさはもう堪らない。
また、後からバーにやってくるキネちゃんのさり気ないカッコよさ。あの暗いバーでサングラスはさぞ見にくかったろうという書き込みをTwitterで見て思わず笑ったが、それすらも不自然に思えない位サマになっていた。
そして、静かに自室と思われるコンピュータの要塞のような場所に座るTK。ピンクのフワモコのセーターがあんなに似合う60代は絶対に彼より他を置いていない。
3つ見て全部で一つの意味を成すような、ストーリー仕立ての、TMお得意の映像美。それはまるで、先日まで見ていたSensationの配信ライブとはまるで味わいの違う作品であった。
そう、作品だよね。ライブじゃなくて。ライト、衣装(3種類あったろうか。どれも見事に3人の身体に合っていて、採寸をきちんとして最高に美しくカッコよく見えるように作ったんだろうなというのが解る。TKの髪色や、今回のウツの髪の裾だけに入った濃い目のパープルかな?のカラーもどれもドンピシャ。こういうところがTMの拘りだよね、昔から。あの白いシャツ本気で私も欲しい)、選曲、ストーリー(エンドクレジットのScreenplayに藤井徹貫氏の名前を見た時には懐かしさに声を上げた)と、細部までこだわり抜いてとことんまで作り込んだTMと、その場の勢いと熱気を、生のプレイ(とMC)こそ醍醐味とばかりにこれでもかとたくし込んだSensation。味わいが違うだけで、どちらも見事。どちらも天晴。チョコレートアイスもストロベリーアイスも、みんなどっちも好きでしょ?ワインだって赤白どっちも飲むでしょ?そういうことよ。
ところで、アクセス数などを見ると、先日ここに上げたTKのソロライブの記事をお読み頂いた方が想像以上に多かったので、もしかしたらまたどなたかいらして下さることを期待し、ここでちょっとSensationの情報の補足を。
Sensationとは、B'zのライブのサポートメンバーとして名を馳せているギタリスト大賀好修さんがリーダーの、キーボード(大楠雄蔵さん)ベース(麻井寛史さん)ドラム(車谷啓介さん)の4人から成る、当ブログイチオシのインストルメンタルバンドである。今回のTMの配信でもラストに新曲と思われるインストが流れるし、TKソロ名義のジャズ系のインストものもあるようなので、もしインストルメンタルがお好きな方がいらしたら、チェックして頂きたい。サブスクも昨年の12月に解禁になっているので、是非。
TMの配信ライブの話に戻る。
実は最初の3曲は初めて聴く曲だったのだが、一回聴いただけで次にはメロディが口から出てくるのは、それだけTKの、そしてTMの曲を体が覚えてしまっていると言うことなんだと思った。特に2曲目の「Alive」が良かった。これの歌詞については、ちょっと考えたことがあるので後述。
3曲目の「N43」、キネちゃんが歌詞もメロディも書いたのは初めてなんだってね。昔からアルバムには必ずキネちゃんの作曲した作品が1つ入っていて、私は結構それが楽しみだった。優しいのにどこか哀愁が漂っていて、切なくなるような曲。今回の曲も、クリスマスソングなんだけど、今聴いてもとっても心地よくて、いわゆるシーズンソングという訳ではなくて、いつ聞いても似合うような曲に仕上がっていた。
メロディは勿論だけど、文を書く人だけあって歌詞が素晴らしかった。歌詞だけで「くぅー!やられた!」って気分。「月がため息する程」なんて輝いた言葉、出てこないよ。
それと今回のthreeでは、TKの、トラックメイカーとしての腕もだけど、鍵盤奏者としての才能も遺憾なく発揮され、見せて貰えたと思っている。そのうちの1曲がこれだった。最後終わるかと思いきやTKのキーボードのソロが入るのだが、これが素晴らしかった。
先程書いたSensationのキーボーディスト、大楠くんの大きな手からしなやかに伸びた長い指とは対照的な、可愛らしい、というかもう、愛くるしい、昔に比べてやや丸みを帯びたTKの指が、信じられない速さでコロコロと鍵盤の上を行き来し、美しいメロディを奏でて行く。この速さ。まさに大賀くんのギターソロを思い起こさせる。前のTKのソロライブの時のブログでも書いたけど、TKの鍵盤はギタリストっぽいんだよね。メロディなんかもそんな感じがした。そしてそのメロディに合わせて優雅にリズムを取るウツ。いやあ、いいものを見せて貰った。
で、あらためてキネちゃん。
うまく言えているか解らないけど、あからさまじゃないんだよね、TMってのは。3人の態度もそうなんだけど、こう、いつもちょっと引き気味で、後ろの方でニコッと(今回のライブ、前の2作よりウツが常に少し微笑んでいたのが印象的だった)、あるいはクスッとしてる。そんなイメージ。その中においてキネちゃんってのは、一番身近で一番解りやすくて、でも一番他の2人のことを理解している、そんな人物だと思っている。だからみんなに愛される。
そのキネちゃんの、キネソロ。これが実に良かった。ルーパーっていうのかな?それを足元に置いて、足で操作しながらリズム(ギターのボディを叩いてパーカッション代わり)やギターを4小節ずつ(だと思う)次々に重ねていって、最後にダメ押しのギター、そしてハーモニカ。見事な曲に仕上がっていた。カッコいいなあと思って見入ってしまった。
我らが大賀くんがこういうの、得意なんだよね。音を重ねていって、ひとつにしていくみたいなこと。彼の場合はギターとドラムやベースなんかが多いけれど。見ているだけで、聞いているだけで、楽しいんだよねこういうの。
「Resistance」(懐かしかった。「痛快ロックンロール通り」と横で夫がスマホで調べていたw)も「Be Together」もどれも良かったけれど、しかしながら最も胸に響いたのはやはり「Self Control」。これでTMが好きになった。16の時だった。ちょっと薄暗いデパートのレコード店でこのジャケットを見ていた時のことを今でも覚えている。そんな、消せない記憶の奥にある大事な曲を、最後のセットに持ってきてくれた3人に感謝したい。泣きながら聞いた。そして驚いたことに、歌詞を全部覚えていた。あの高速早口みたいな曲の歌詞を笑。いやあ、若い時の記憶って本当に消えないのね。何度も一緒に歌った。
みんなが間違える。誰もが。それを、どう修復する?じゃなくて、どう壊す?という問いかけ。これが今のTMからの投げかけだ。
一回ぶっ壊さないと、と彼らは言っているんだろう。直すんじゃなくて。直せないと思っているのか。或いは元に戻したところで、再生にはならない、と言っているのか。再生じゃダメだよ、全部新しくしようよ、という、そんなメッセージなのかも。
いずれにしても、彼らは戻ってきた。そして何かを壊して、新しくしようよ、と私たちに問いかけている。
3部作全部を一度に見たくなった。そういう意見がTwitterにもたくさんあった。私もぜひお願いしたい。
さて。
TMの歌詞は、TKが書くこともあるが、昔から小室みつ子さんの作品であることが多い。今回の「Alive」もみつ子さんの詞だった。透明感があって、あまり人称が出てこないという印象があるが、今回もそうだった。僕も私も君も出てこず、「大事なひと」とだけ登場する。
その、大事な人の肩を抱きしめて、「迫る現実を眺めている」。目の前に広がった少し怖いような世界を見つめて「stay alive Boundary 結び目 探しているよ」。大切なひとを失わないよう願いながら。そんな風に読める。世界に入ったひび割れは修復不可能のように思える程で、自分は絶望の中にありながらも希望を失いたくないと願っている。
その歌詞に対する、アンサーソングのように思えたのだ。
B'zの「Still Alive」が。
「足りないものはなに? 間違ってんのはどれ? 最後のピース必ず 手に入れてみせる」絶望に苦しむ恋人を必死にこの世に留めんとする問いかけだ。「差し出されたその手は僕が掴もう」「力がもう少し あればいいなと思った 祈りを込めるように 名前を呼ぶよ」「まなざしから放たれるのは希望 何一つ終わりじゃない」。
世界の片隅で抱きしめ合う2人が、これから先に待ち受ける現実に怯えながらも、互いを頼りにしながら生きていこうとしている。「ここにいてね(stay alive)」「まだいるよ(still alive)」と。
TMの曲は2014年、B'zが2017年という時差も、単なる偶然とはいえこんなことを考えた理由である。今はもう昔と違って、TMとB'zを両方とも聞くという人は少なくなっているだろうが、全く違うタイプの曲を聴き比べしてみるのも面白いと思う。
TM NETWORK3部作、全部しっかりと楽しませて貰った。
コロナ禍だからこそ成し得た、配信というプラットフォームをこれ以上上手に使いこなしたミュージシャンもいなかったのではないかと思う。元々、デジタルな世界は彼らのオハコだし。これからも配信、ぜひ続けて欲しい気がする。TMならではの世界がもっと広がると思うから。
「懐かしい」だけではない、「新しい」をたくさん、どうもありがとう。
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