文:訳す「Sensationのギタリスト大賀くんお薦めの1曲 “Killing Me Softly”を訳してみた」





 たとえそれが聞いたことのある歌だったとしても、誰かに「この曲いいんだよ。聞いたことある?」と教えて貰うのはいいなと思う。気がつかなかった良さに気づくこともあるし、その歌を再発見したような、或いはもしかしたら初めて出会ったような気分にさえなることがある。

 歌だけじゃないよね。映画とか、本とか、勧められてそれに触れてみて、ああいいなって思う気持ちを共有できるのは嬉しい。


 仮にいいなと思えなくても、体験を共有出来ることが大事なのかもしれない。

 昔好きだった人が某有名作家のファンで、それは私が、それまでどの作品を読んでも好きになれなかった作家で(苦笑)、でも彼が勧めてくれ、貸してくれた小説を読んだ。頑張って読んだ。いいところがどこか言わないとと思って、話を合わせようと思って、一生懸命読んだ。読み切った。

 でもやっぱし好きになれはしなかった。彼とも縁がなかった。そんなもんかもしれないと思った。

 それでも、その作家のその作品を、誰よりもあの時真剣に読んだことだけは確かだ。今はそれでいいと思う。


 結婚後、歴史小説が好きな夫へ試しにと思ってカズオ・イシグロの「私を離さないで」を勧めてみた。彼は読んだ。一生懸命読んだ。読み切った。そして言った。

「これ、オチはなに?」

 必ず結末らしいエンディングが用意されている歴史小説を好む夫には、オープン・エンディングの小説は腑に落ちなかったらしい。

 本は、音楽と違い、人には勧めない方がいいのかもしれない。


 しかしながら私はそれでも、人が「これいいよ」と勧めてくれるものに興味がある。新しい道が開けるチャンスだから。




 Killing Me Softlyってことで、ハロウィンの頃作ったのを貼っとく。



 さて。

 当ブログきってのご贔屓ギタリスト、インストバンドSensationの大賀好修さんお薦めの洋楽の1曲が、ロバータ・フラックの歌う「やさしく歌って」である。原題 “Killing Me Softly”、同じタイトルの洋画が昔あって、見ようかと思ったけどあらすじ読んでちょい引いてしまったので笑、未見ではある。まあねえ、直訳だと「やさしく殺して」だもんねえ笑。そういう映画になっちゃうわよねきっと。





 ほらほらこういう映画な訳よwww でもチェン・カイコー監督なんだよねこれ。


 私の世代だとFugeesのカバーが有名なのよね。96年だそうよ。懐かしい。この頃はもう本気で洋楽しか聞いてなくて、毎日J-WAVE聞くのが日課になっていたっけ。近年、Fugeesは再結成されたよう。






 で、その歌詞を本日は訳してみようと。


まずはいつものように元の歌詞行ってみよう。


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★Strumming my pain with his fingers
Singing my life with his words
Killing me softly with his song
Killing me softly with his song
Telling my whole life with his words
Killing me softly with his song

I heard he sang a good song
I heard he had a style
And so I came to see him
To listen for a while
And there he was this young boy
A stranger to my eyes


I felt all flushed with fever
Embarrassed by the crowd
I felt he found my letters
And read each one out loud
I prayed that he would finish
But he just kept right on


He sang as if he knew me
In all my dark despair
And then he looked right through me
As if I wasn't there
And he just kept on singing
Singing clear and strong


★Repeat

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 歌詞が3番まであることになるのよね。まず内容的に強烈なインパクトのあるサビ、ここは分詞構文だと思う。「~して、~して…」という感じ。SVがしっかりある「文」ではなくて、どんどん続いていて、止まらない感じがよく出てるよね。


 しかも爆笑したんだが、このドアタマの単語strumってのを調べてみたら、こんな意味があって。あえてちゃんとなんか載せないからねっ!w





 いやあ〜参りましたリーダーズさん!www これが紙の辞書にも載ってるとすると大層な度胸ですなwww ちなみにこの意味が載ってたのは研究社の「リーダーズプラス」のみ!さすが研究社!天晴!www

 まあでもさ、「かき鳴らす」ってのがまあ、ここに結びつくのは当然と言えなくもないよね。その昔、角松敏生も言っていた。ギターは女性と同じだと。俺のギターはいい声で鳴るってねwww あー参った参ったwww

 電子辞書を使って、いろんな英語辞典で調べる楽しさは、こういうところにある。




 大賀さん、先日でオンラインサロン1周年でした。


 本題に戻る。1番の詞で初めて「文」になる。「文」とは、その中に主語と動詞=SとVが入った形である。だから割と冷静で整然とした感じ。これが、サビと対照を成していて面白いなと思う。


 1番で彼を見に行って、2番では彼の歌う詞の内容が自分と丸かぶりしていることについて、「私の書いた手紙を読まれてる」って言ってる。この辺で解るんだけど、要は妄想なんだな笑。

 誰もあるでしょ?1回くらい。「あ!これって私の歌!」って思うこと。それよそれ。つまり、この歌詞はものすっごく我々にとって身近な感情について歌った詞だと解るのよ。そこが実に面白い。


 しかしながら最も面白いのは3番で、


As if I wasn’t there.


as if~は仮定法の決まり文句(ほんと歌詞って仮定法が多い)で「まるで~のように」の意。つまり「私がそこにいないみたいに」ということになる。ここの部分、「彼はまるで私がそこにいないようにまっすぐ前を見ていた」って意味になる訳。

 そう、この歌の主人公は、自分が思いっきり妄想してるってことに気づいてるんだよねwww そこがいいのよ。この、最後に来て我にかえるというか、現実を見るというか。


 ただ甘いだけのセクシーな歌詞かと思ったら大違いで、「いや~、私も解ってるんだけどね」という笑、そんないい意味でオチのある、若干冷めた、でもとっても茶目っ気のある視点を持ってくるところ、この詞の楽しいところだなあと思う。



 では、それを踏まえて訳してみようと思う。今回は最初から直訳ではなくて若干意訳に近い訳詞になっている。


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★弦を弾く指 奥深く疼く痛み

その詞はまるで私

甘く響く音に全てを委ねてしまう

彼の言葉が私を奏でる

歌って 私のこと

ねえ、歌って


素敵な人 いい曲だったの

誰とも違ってて

だから一目会いに行った

ずっと聞いていたくて

彼は驚くほど若くて

ちょっと意外だった



顔が真っ赤になるくらい

人混みの中 恥ずかしくなった

私の書いた手紙

大声で読まれてる気分

もうやめてって思ったのに

彼はずっと歌い続けた



私を知ってるみたいな詞

暗闇の中にいた頃の

だけど真っ直ぐこっちを見ると

私なんか目に入らないように

彼は歌い続けたわ

強くはっきりした声で




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 そして今回は初の試み。この、我々に近い感覚を持った詞を、めっちゃ若い人達の詞だと仮定したらどういう訳になるのか考えてみた笑。

 趣が全然変わって訳していて面白かった。

 大賀さん、また素敵な曲をレコメンしてくださいませ。


 では行ってみよう。


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★そのギターと歌を聴いたら、昔のこと思い出しちゃってさ

なんで?なんで私のことわかってんの?って

ハダカの私まで知ってそうで

もう死んじゃうかと思った

もう溶けちゃうかと思った



かっこいい歌でさ

個性的っていうか

ナマで見たくって

どうしてもライブで

そしたらびっくり

めっちゃ若いんだもの



顔が真っ赤になって

オーディエンスの真ん中で

毎日送ってたメッセージを

その場で声に出して読まれてるみたいに

恥ずかしいからやめてよって

でも彼はずっと歌ってて



なんでそんなに知ってるの

私が私じゃなかった頃を

でも、ちゃんと解ってる

私のことなんかホントは

眼中にないってこと

ただの妄想だってこと

彼はずっと歌ってた

あの果てしなくいい声で



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Fugeesのバージョン貼っときます。








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