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Discover “ビル・エヴァンス” featuring バンクシア・トリオ(林正樹、須川崇志、石若駿)、江﨑文武(WONK)&海野雅威
ライブの冒頭に流れるビル・エヴァンスのドキュメンタリー映画の断片が痛ましい。賞賛の裏に潜んでいた、彼と彼の周辺の数々の疵痕が見るものの心を抉る。しかしそんな中でも奏でられた美しい音には変わりがなく、作家と作品は別個のものであるとあらためて感じる。やはり自分はテキスト論を学んだ人間なのだ、そしていまだにそこにしがみ付いているのだとあらためて思った次第。
が、それって間違ってないと思うんだよね。
英文学研究において、今はどんな論が主流なのかなんてもう知る由もないのだけど、作家の人生に照らし合わせることなく、つまり、こういう人生を歩んだからこんな作品を作ったんですよ的な発想をせず、作品はあくまで作品として味わう、というのがテキスト論の大まかなところ。私はこれに慣らされてきた。論じる以上作品を生み出した作家のことは知らなければならないし、今私が書いているほんの趣味程度の物であっても作った人のことは知りたくなるのが普通なので、作家論は正統派ではある。あるのだが、時に作品それ自体の味わいを歪ませてしまう気がする。
従って今回のビル・エヴァンス・トリビュートのライブも、冒頭のドキュメンタリーとは切り離して、あくまでも美しい曲は美しい曲として楽しませて貰った。
まず、バンクシア・トリオのベーシスト、須川崇志さんは、そのベースプレイも迫力でかっこいいのだがとにかく顔がイケメンで笑、いろんな意味でずっと須川さんに見入ってしまう。
突然ですが後ろの2人がSensationの麻井くん(右)と徳ちゃん(左)ですw
徳ちゃんにしても麻井くんにしても、ベーシストってのはどうしてこう、個性的な魅力に溢れているのだろうね。しかもイケメン多し。なぜだw
誤解のないように言っておくが、ピアノの林さんもドラムの石若さんもみんな素敵である。めちゃ素敵だ。だがその真ん中にいる須川さんが余りにも「王子」なのでつい目がそっちに行くだけである、ってなんのフォローにもなってないんだけど笑。
軽やかな演奏のBlue in Green、Waltz for Debbyに続き、ゲストであるWONKの江崎文武さんが現れて、ひとりでアップライトピアノと共に「スパルタカス 愛のテーマ」を演奏。これが圧巻というか超美麗というか、もう持っていかれっぱなしで参った。
INO hidefumiさんやSOIL & “PIMP” SESSIONSのカバーなど含め、元々大好きな曲なのだが、今回の、1人で2台ピアノ演奏は美しすぎて堪らなかった。少し陰りのある響きを交えながら作られる、そこだけで出来上がってる深い青の世界観。こんな贅沢なプレイが配信で見られるとは、ある意味いい時代になったと思う。
INO hidefumiさんやSOIL & “PIMP” SESSIONSのカバーなど含め、元々大好きな曲なのだが、今回の、1人で2台ピアノ演奏は美しすぎて堪らなかった。少し陰りのある響きを交えながら作られる、そこだけで出来上がってる深い青の世界観。こんな贅沢なプレイが配信で見られるとは、ある意味いい時代になったと思う。
林さんと海野さん。むっちゃ可愛い。
そして海野さんのビル・エヴァンス・アロハ、最高。
2人目のゲストの海野雅威さんも素晴らしかった。海野さんのピアノはとにかく軽やかでどことなく密やか。派手さは感じられないけれど、品が良くて温かい音がする。ビル・エヴァンスも流麗だけど冷たさは私はあまり感じないので、少し似ているような気がする。スタンダードのUp with the Lark、とても良かったし、My Romanceにも魅了された。
そして海野さんのトーク、短いながらもとても良かった。あんなに楽しい方だと思わずw、ついつい笑ってしまった。
そして海野さんのトーク、短いながらもとても良かった。あんなに楽しい方だと思わずw、ついつい笑ってしまった。
海野さんといえばあの事件を思い出す方も多いだろう。大きく報道され、その中身の根の深さというか、背中にヒヤリとしたものが走るようなどうしようもない怖さを感じたのを忘れられない。海野さん自身、インスタライブの時にそのことに触れ、そこからアルバムを作るに至ったことを口に出していた。
しかし、実はそんなこと微塵も感じさせないプレイっぷりが本当に素晴らしかった。さっきも書いたがとにかく品がいいのだ。この滲み出てくる上品さはまさに海野さんの持ち味なのだろう。聞いているこちらの心がすうっと透き通ってくる感じ。
しかし、実はそんなこと微塵も感じさせないプレイっぷりが本当に素晴らしかった。さっきも書いたがとにかく品がいいのだ。この滲み出てくる上品さはまさに海野さんの持ち味なのだろう。聞いているこちらの心がすうっと透き通ってくる感じ。
アンコールで5人全員が揃ってSomeday My Prince Will Come、須川さんという王子様の周りに王が4人、といった風で、まさにKing(s) & Prince!ビル・エヴァンスという素晴らしいピアニストを慕って集まった5人の演奏は心から楽しく美しく、ああジャズっていいなあ〜とあらためて感じた。
ナベサダさんが遊びにきてくれたそうです。みんないい顔してるね。
最後、3人のピアニストによるChildren’s Play Songの冒頭、「夏は来ぬ」のメロディが流れ、季節感といい音色といい、なんの違和感もなくそれがビル・エヴァンスに繋がる辺りがもう何というか、まさに心を掴まれた気分で、音楽には「境目」はないとつくづく思わされた。
音楽を音楽として愉しむ。それこそが芸術の醍醐味なんだと思う。
音楽を音楽として愉しむ。それこそが芸術の醍醐味なんだと思う。
★2★
Celebrate "International Jazz Day" with ブルーノート東京オールスター・ジャズ・オーケストラ directed by エリック・ミヤシロ with special guest 角野隼斗
上のライブから数日後の国際ジャズデーに際し、BlueNoteで行われたライブのひとつがこれ。2月に見て大変気に入ったBJOに、今回はクラシックだけに止まらない活躍を見せるピアニスト角野隼斗をフィーチャー。
上のライブから数日後の国際ジャズデーに際し、BlueNoteで行われたライブのひとつがこれ。2月に見て大変気に入ったBJOに、今回はクラシックだけに止まらない活躍を見せるピアニスト角野隼斗をフィーチャー。
相変わらずトークは陽気でソフトだがプレイはパワフルなエリックさんを中心に集まった面々が迫力のサウンドを響かせる。いつものBlue Horizonから始まり、挨拶を経てスティーヴィー・ワンダーのOverjoyedへ。そして和泉宏隆メドレーへと。
ついこないだソロライブ見たマサトクン=本田雅人さんがNuRADを奏でる姿も段々見慣れてきて、今ではあれが標準仕様に見えてくるから不思議だ笑。しかしいつ聞いてもいい曲だよなあ「宝島」って。明るさだけじゃない切なさがちゃんと隠れてるのが凄いよね。まさに青春に似合う曲だから、これを高校生が吹奏楽で奏でるんだろうね。
ついこないだソロライブ見たマサトクン=本田雅人さんがNuRADを奏でる姿も段々見慣れてきて、今ではあれが標準仕様に見えてくるから不思議だ笑。しかしいつ聞いてもいい曲だよなあ「宝島」って。明るさだけじゃない切なさがちゃんと隠れてるのが凄いよね。まさに青春に似合う曲だから、これを高校生が吹奏楽で奏でるんだろうね。
角野さんと川村さん。川村さんのキャラ大好き。
そしてゲストの角野隼斗さん登場。「必死こいてついてく」なんて言ってたけどいやいやどうして。めっちゃ素晴らしかったよ。特にJupiter。エリックさんのアレンジがまさに秀逸なんだろうけど、クラシック然としてなくて、それでいてメリハリが効いていて。いろんな木星が生まれてきたけど、その中でもベストの演奏のひとつだと思う。
ラストはいつものBirdland。ベースの川村竜さん、ど迫力でキレのいいベース捌き最高よね。エレキもウッドもなんでもバリバリ弾けまっせって感じの安定感。日本のマイケルブレッカー、小池修さんのサックスで始まるブラス軍の怒涛のソロ応酬。本田さんもライブで言ってた「年代別ユニゾン大会」も好き笑。
エリックさんがMCで、前回と同じように、こうして音楽を楽しみに来てほしいからこそ、健康に気をつけて過ごしてくださいと挨拶をする中で、「やはり、生で聞くのは画面の前とは…あっ!今日は…配信してるんだった…地雷踏んでるなあ」ってのには爆笑した。大丈夫ですよ、解ってますから。いずれにしても地方暮らしの自分には、この大都会のライブを配信で楽しめるのはほんとにありがたい話。
メインステージの最後は、パット・メセニーの “The First Circle”。これがまた凄いんだ。だって11拍子なんだよ⁈どうやって拍を取れってのよ笑。さすがは理論派ギタリストのパット・メセニー。そしてこれを選んじゃう角野隼斗さんが凄い。
合ってるかどうか分からないけど、私はまず6つカウントしてから5つカウントしてひとつの区切りとして聞いていた。そうすると楽にノレる。当ブログの御贔屓インストバンドSensationの名ギタリスト大賀くんがよく変拍子の話をオンラインサロンでしているけど、さすがに11拍子ってのは出てきたことなかったなあ。一応クリアしたよ、今回の変拍子。
でもなんつっても今回のこのライブの一番の見どころは、「アンコールの儀式」笑の後、アンコールで角野さんが再度出てきて、仕事終わって駆けつけてくれた宮本貴奈さんをステージに呼び、この日バンドのピアニストとして参加していたRINAさんの3人のピアニストが揃ってバンドと共に演奏したSPAINでしょう。いやあ堪らなかったわこれ。今まで聞いたスペインの中でも1、2を争う程の素晴らしさだったよ。
3人のピアニストに対して鍵盤は2台で、エレキピアノの高音と低音で2人で弾いたり、互いに相手の隙を見ながら席を移って行ったりしながら、ソロやバッキングを絶やさないように弾きあって行くんだよね。これが実にスリリング!3台あれば良かったのに〜と思う前に、こんな姿を見ていて逆に楽しいし、逆にアガる笑。
怒涛の鍵盤大会の後は角野さんのピアノに中川英二郎さんのトロンボーンが絡むシーンへ。ここで、数小節だけリズムが3拍子に変わるんだよね。くぅ〜ニクイ!川口千里さんのドラムがきっかけで全員での大団円、そしてフィニッシュ!何分あったのか解らないけど、とにかくここだけでアルバム1枚分くらいの熱量を感じた。最高のパフォーマンス、これが無料配信なんて。ありがとうございました。
★3★
Celebrate "International Jazz Day" with 黒田卓也 "SIT-IN"
最初見る予定はなかったのだが、BJOの配信のチケットの手続きをしたらこれも見られるようになっていたので、せっかくだし見てみるか、と思ったくらいのノリだったのだがこれがまあなんとすげえ。
最初見る予定はなかったのだが、BJOの配信のチケットの手続きをしたらこれも見られるようになっていたので、せっかくだし見てみるか、と思ったくらいのノリだったのだがこれがまあなんとすげえ。
ファンクなノリが朝から腰にくる感じの、いわゆるコンテンポラリージャズで、まさに今の世界、今のNYの空気感を伝えてくれるクールな音の合間に聞こえてくるのは関西弁バリバリのMC笑。このギャップがいいんだろうなあ。わかる。最近私も関西弁にはだいぶ慣れたところだw
サックスの馬場さんと西口さんは、1月に見たコルトレーンの音楽を再構築するライブでお目にかかった御仁。相変わらずキレのいい、というか黒田さんと同じくキレッキレのプレイが小気味いい。なんだろうなあ、3人ともこう、どすこい系というか笑、音の迫力が違うというか。人数少ないのに迫ってくる感が半端ない。それでいてやはり今風で、クラブにも似合う音の雰囲気。私は古いジャズが好きだが、こういうのももちろん嫌いじゃない。これぞ生で聞きたい音かもしれないね。
で、なんつっても国際ジャズデーの最後を飾るライブなもんで、ゲストがどんどんやってきて。ビル・エヴァンスでもゲストだった海野さん、昨日まで出ていた角野さんがそれぞれソロで黒田さんとセッション、そして最後にはこのイベントの総合司会を務めていた井上銘さんもやって来てプレイ。
井上さんのギターって初めて聞いたんだと思うけど心地よかった。ひたすらバッキングしているところが後半延々と続くんだけど、あれはあの音が後ろで鳴ってるからこそ気持ちいいんだよなあ。若いのに渋い。グッとくる。最近さあ、こういう、「後ろで鳴ってる音」的な感じによく惹かれる。人生も結構な年月を過ごしてくると、きっとこんな、裏方的なものの味わいがよく解るようになるのかもね。
いやあ、いいものを見せて貰った。どっぷり関西ノリの濃ゆい目どファンクジャズ、堪能させて頂きましたわ。黒田さんのライブはほんと、いつか生で見てみたい。きっと鳩尾辺りにゴンゴン響くんだろうな。
ブルーノートの写真は全て公式Twitterより。
ブルーノートの写真は全て公式Twitterより。
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