文:創る「ハロウィン前日のサークル棟1階105号室」(虚構大学シリーズ)







虚構大学・妄想学群キャンパス内 サークル棟3105号室(通称3150)にて



Part 8 : 

Title : “Vampire Hunter D”


  「こんにちはー」

「こんにちはーって、あ!Geometric先輩!」

「Geo(ジオ)先輩!お久しぶりです!」

「どうも。今日はね、プロフェッサーTKの特別講座の準備が早く終わってね」

「TKって…」

「そう、僕の所属するファンタジー学科の名誉教授。教授の講演の時には、院生はみんな駆り出されるのさ」

「そうなんだ」

「ちなみに今回のテーマは、ハロウィンにちなんで、教授の昔の作品の、『Vampire Hunter D』。昨日、妹から連絡もらって、それで寄ったんだ」

「Axisさんから?」

「うん。ROOMのみんなが今日、大賀くんに内緒でなんかするって聞いて、面白そうだから覗きにきた。Axisは家庭教師のバイトが終わってから来るって」

「先輩!折角来たなら覗くだけじゃなくて手伝ってください」

「何してるの?」

「ハロウィンの飾り付けです」

「大賀くん、日曜だけど31日に来るって言ってたから、彼が来る前に部室を飾り付けして、みんなで驚かそうって」


「ハロウィンってさ、絶対ホラー映画見たくなるよね」

「ええ?Kaleidoscopeさん、怖いじゃないですか」

「そうかなあ?面白いじゃない、みんなでキャーキャー言って」

「私はディズニーランドとか行って、キラッキラのファンタジーな世界に浸りたいなあ」

「もうちょっと情緒的な感じに行かない?」

「情緒的って?」

「『フランケンシュタイン』とか『狼男』とか、怖いけど悲しい物語を、読んだり、映画見たりさ」

「あ、僕、『ウルフマン』って映画見たことあります。最後切なかったです」

「マーヴェル系は?仮装のヒントにもなるし」

「仮装ならハリーポッターみたいなファンタジーものも」


「ところでさあ、なんでハロウィンって、怖くて切なくてファンタジーで楽しいっていう、矛盾した世界観が見事にマッチしちゃうの?」

「え、考えたことないです」

「ハロウィンってパーティしてみんなで楽しむもんだから、なんでもありってことじゃないの?」

「Kaleidoscopeも、雪華コンビも、stormくんも、みんな合ってるけど、みんな間違い。ハロウィンってのはね、簡単に言えば、日本のお盆と同じなんだよ」

「お盆?」

「最近じゃあ、高校の授業でネタになってることが多いんだけど」

「…」

「日本では、亡くなった人の魂が、空から降りてくるようなイメージがあるだろう?それが海外だと、亡くなった人はそのままお墓から出てくるって考える」

「ゾンビじゃないですか!」

「だからゾンビ映画が流行るんだよ。ハロウィンっていうのは、その亡くなった人の魂が年に1度地上に戻ってくる日のことでさ」

「ああ、だからお化けとか、死神とか、黒猫とか」

「メイドとか、ナースとか」

「それ絶対違うから」

「そういうコスプレが出てくる訳ですね」

「だから怖いってイメージ」

「じゃあ、切ないは?」

「お盆が終わるってことは、ご先祖が帰って行くことだろう?再会できたけど、また向こうに戻っていく。再会と別れだよね。それに、野獣とか妖怪とかいうものには、悲しみがつきものじゃないか」


「じゃあGeo先輩、ファンタジーは?」

「うーん、僕が思うにはさ、亡くなった人が生き返るなんて、非科学的=ファンタジーって、考えられるかなあって」

「じゃあなんで、お祭り騒ぎ?」

「日本だって、お盆の時期に、夏祭りがあったりするだろう?祭りっていうのは、鎮魂のイメージにも繋がるんじゃないかなあ」

「海ドラの『NCISニューオーリンズ』でやってたけど、ニューオーリンズでは海兵隊の葬儀の帰りにみんなでパレードするって文化があるらしいです。賑やかに送るんだって」

「魂を送る方法は、いつもひとつじゃないんだろうね」

「そういうのいいなあ」

「昔存在していた魂を迎えて、お祭りして、楽しんで、別れる。また来年ねって」

「方法が違うだけで、どこの国でも同じなんだね」

「だから、怖くて、切なくて、ファンタジーで、楽しい」

「悪いー遅れた!あ!Geometricさんどうも!みんな!遅れてごめん、お詫びにたくさんお菓子買ってき…ちょ!雪華!それ全部持ってく気かよ!待て!そっちは大賀くんの分だぞ!」




ハロウィンにちなんだお話を、ということで書いてみました。

虚構大学シリーズがすっかり板についてしまってw







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