Part 8 :
Title : “Vampire Hunter D”
「こんにちはー」
「こんにちはーって、あ!Geometric先輩!」
「Geo(ジオ)先輩!お久しぶりです!」
「どうも。今日はね、プロフェッサーTKの特別講座の準備が早く終わってね」
「TKって…」
「そう、僕の所属するファンタジー学科の名誉教授。教授の講演の時には、院生はみんな駆り出されるのさ」
「そうなんだ」
「ちなみに今回のテーマは、ハロウィンにちなんで、教授の昔の作品の、『Vampire Hunter D』。昨日、妹から連絡もらって、それで寄ったんだ」
「Axisさんから?」
「うん。ROOMのみんなが今日、大賀くんに内緒でなんかするって聞いて、面白そうだから覗きにきた。Axisは家庭教師のバイトが終わってから来るって」
「先輩!折角来たなら覗くだけじゃなくて手伝ってください」
「何してるの?」
「ハロウィンの飾り付けです」
「大賀くん、日曜だけど31日に来るって言ってたから、彼が来る前に部室を飾り付けして、みんなで驚かそうって」
「ハロウィンってさ、絶対ホラー映画見たくなるよね」
「ええ?Kaleidoscopeさん、怖いじゃないですか」
「そうかなあ?面白いじゃない、みんなでキャーキャー言って」
「私はディズニーランドとか行って、キラッキラのファンタジーな世界に浸りたいなあ」
「もうちょっと情緒的な感じに行かない?」
「情緒的って?」
「『フランケンシュタイン』とか『狼男』とか、怖いけど悲しい物語を、読んだり、映画見たりさ」
「あ、僕、『ウルフマン』って映画見たことあります。最後切なかったです」
「マーヴェル系は?仮装のヒントにもなるし」
「仮装ならハリーポッターみたいなファンタジーものも」
「ところでさあ、なんでハロウィンって、怖くて切なくてファンタジーで楽しいっていう、矛盾した世界観が見事にマッチしちゃうの?」
「え、考えたことないです」
「ハロウィンってパーティしてみんなで楽しむもんだから、なんでもありってことじゃないの?」
「Kaleidoscopeも、雪華コンビも、stormくんも、みんな合ってるけど、みんな間違い。ハロウィンってのはね、簡単に言えば、日本のお盆と同じなんだよ」
「お盆?」
「最近じゃあ、高校の授業でネタになってることが多いんだけど」
「…」
「日本では、亡くなった人の魂が、空から降りてくるようなイメージがあるだろう?それが海外だと、亡くなった人はそのままお墓から出てくるって考える」
「ゾンビじゃないですか!」
「だからゾンビ映画が流行るんだよ。ハロウィンっていうのは、その亡くなった人の魂が年に1度地上に戻ってくる日のことでさ」
「ああ、だからお化けとか、死神とか、黒猫とか」
「メイドとか、ナースとか」
「それ絶対違うから」
「そういうコスプレが出てくる訳ですね」
「だから怖いってイメージ」
「じゃあ、切ないは?」
「お盆が終わるってことは、ご先祖が帰って行くことだろう?再会できたけど、また向こうに戻っていく。再会と別れだよね。それに、野獣とか妖怪とかいうものには、悲しみがつきものじゃないか」
「じゃあGeo先輩、ファンタジーは?」
「うーん、僕が思うにはさ、亡くなった人が生き返るなんて、非科学的=ファンタジーって、考えられるかなあって」
「じゃあなんで、お祭り騒ぎ?」
「日本だって、お盆の時期に、夏祭りがあったりするだろう?祭りっていうのは、鎮魂のイメージにも繋がるんじゃないかなあ」
「海ドラの『NCISニューオーリンズ』でやってたけど、ニューオーリンズでは海兵隊の葬儀の帰りにみんなでパレードするって文化があるらしいです。賑やかに送るんだって」
「魂を送る方法は、いつもひとつじゃないんだろうね」
「そういうのいいなあ」
「昔存在していた魂を迎えて、お祭りして、楽しんで、別れる。また来年ねって」
「方法が違うだけで、どこの国でも同じなんだね」
「だから、怖くて、切なくて、ファンタジーで、楽しい」
「悪いー遅れた!あ!Geometricさんどうも!みんな!遅れてごめん、お詫びにたくさんお菓子買ってき…ちょ!雪華!それ全部持ってく気かよ!待て!そっちは大賀くんの分だぞ!」
ハロウィンにちなんだお話を、ということで書いてみました。
虚構大学シリーズがすっかり板についてしまってw
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