虚構大学 妄想学群キャンパス内 図書館前
Part7
Title : “I am”
「あの、Axisさん…Axisさん?」
「…え?あ、ああ、ごめん、stormくん、聞こえてなかった…イヤフォンしてて」
「どうしたんです?こんなとこで。ROOMの日ですよ。大賀くん来ますよ。行かないんですか?」
「うん、行くんだけど、時間あったからこれ見直してたの」
「…ああ、TM NETWORKの配信ライブですね」
「君、TM知ってるの?ジャズが好きなんだと思ってた」
「ジャズが1番好きですけど、僕、鍵盤弾ける人が好きで」
「じゃあ、TKが好きなんだね」
「はい」
「Axisさん、さっき、なんだかぼうっとして見えましたけど」
「うん。考えてたんだ。タイトルのこと」
「タイトル?」
「ほら、この “I am”ってヤツ」
「それが、どうかしましたか?」
「昔のTKの曲にさ、 “I BELIEVE”ってあるの知ってる?」
「ええ、知ってますけど」
「あれさ、最初に聞いた時、私、腑に落ちないっていうか、違和感感じたの」
「なんでですか?」
「believeって単語は基本的には他動詞でしょ?だから目的語がなくちゃおかしい訳よ。こんなとこで切ったりしたら、何が言いたいかわからなくて、中途半端だなあって」
「…Axisさんらしいですね…」
「だってさ、何を信じればいいの?そこがなくちゃ、わからないでしょ?」
「…まあ、そうとも言えますけど…」
「で、そこからの、I am じゃない」
「もっと腑に落ちないんですか?」
「ううん、逆に解ったの」
「何をですか」
「何を信じればいいかわからなかった過去はもういいのよ。そうじゃなくて、今ここに『ある』ことが大事なのかなって」
「どういうことですか」
「be動詞ってのは、存在を表す動詞なの。I amだけじゃ文章にはならないけど、自分がここにいるよって言ってることは確かだろうと思う。とすれば、今のTMが言いたいのは、何を、誰を信じるにしても、大事なのは、『ここにいる』ってことだよって、そういうメッセージなのかなって」
「…そんな難しいこと言ってます?この曲…」
「いや、本当のとこはわからないわよ、私だって。でも、少なくとも私には、そう思えたの。自分を信じることも大事だけど、もっと大事なのは、今自分がここにいること、そう思ったらなんか、『大丈夫だよ、前向きになろうね』って背中押された気がして」
「…Axisさん」
「何」
「それ以上前向きにならなくて大丈夫ですから」
「何それ!?」
「さ、行きましょうよROOMへ」
「ちょっと!ねえstormくん!」
TM NETWORKが「再起動」しました。彼ららしい姿でした。
年を重ねても、さまざまな波があっても、彼らは彼らでした。
それがとても嬉しくもありました。
彼らを好きだった自分を以前よりも好きになれました。
TWOも楽しみです。
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