文:聴く「The “Sensation”al Gift !!! ー森川七月 4th album “4EVER” (2014)ー」







 すいません、今日いつも以上に語り口が暑っ苦しいですよw

 Sensationが好きだとかジャズが好きだとか騒いでる癖に、これに今まで気づかなかったなんてやっぱし私の目は節穴だったらしい。そう思わずにはいられなかったのが、ジャズシンガー森川七月(なつき)の4枚目のアルバム「4EVER」をこれまで知らなかったからだ。2014年にリリースされているんだけど。実はこのアルバム、ボーカルの彼女以外の音を全てこの、Sensationの4人が務めているという、彼らのファンとして、またジャズファンとしても、まるで夢のような1枚なのである。

 これをどこで知ったかというと、SensationのFacebookである。そう、私、これもよく見てなかったのよね。彼らを好きになってからというもの、その音源はもちろんだけど、インターネット上に溢れ返っている動画や記事や画像やSNSなど、情報量的にかなり怒涛の日々でして、全部一度になんか追いきれる訳もなく。いまだにどれも網羅出来ているとは言い難い。でもいいのよ、そんな、いくら美味しいものだって、いっぺんになんか入らないものじゃない? 本当に好きなものってさ、全部取り込みたい気持ちもあるけど、少しずつの方が、楽しみが後にまで続くことになるのよね。焦っちゃダメよね。本気で好きなら特に。この辺の匙加減って本当に難しいわ。









 ボーカルアルバムなんだから、ここから話さないとね。森川七月、いやあ、うまいわ歌。そして声がいい。ジャズシンガーなんだから当たり前だろって言われるかもしれないけど、いやいや、そうとばかりは言えないんじゃないかなあ。ジャズシンガーだってピンキリな訳で、もちろん好みもあるんだろうけど、それだけじゃない、天性の声というか、そういうものも考慮すべきだと思うのよ。


 ジャズを歌う人って、male, female共に、こう、スモーキーな声がいいとされているようなところあるよね。チェット・ベイカーとかさ。私ももちろんそういう声は好き。少しハスキーだったりするのもいい。けど、彼女のように、透明度が高く、伸びやかで、保湿系ヴォイスというか、聞いていてこっちの気持ちが潤ってくるような、でも単なるほにゃっとした感じの癒し系の声とかではなくて、ちゃんとお腹から声が出ていて、鋭さも持ち合わせいながら、決して尖ってない、そんな声もいい。音程は見事に取れているし(ラストトラックのセルフプロデュース曲「Lullaby of Birdland」なんて天晴れとしか言いようがないよ、ホント)、聞き終わってもまた聞きたくなる、そんな魅力の詰まった声だと思う。


 が、一度聞き終わってもまた聞きたくなる魔法は、彼女の声だけが理由でなく、もちろんSensationがバックを務めているからに他ならない。さあ、ここから本気で語るよ(笑)。


 と、その前に。ここは是非聞いて感じてもらう方が早いかもとも思うので、アルバム全曲紹介動画をどうぞ。Sensationのメンバーもたくさん映ってますので(これが目的かい)。8分半もあってお得。





 以前、Sensationのことを初めて書いた記事の中で彼らの1枚目のアルバムを紹介した際、私の友人Kが、ラストトラックの「パラシュートが開かない」について、ゲストボーカル徳永暁人=徳ちゃんの、歌い出しの直前に聞こえる「ブレス音がヤバい」と言っていた件について申し上げたが(笑)、実はこちらの4EVERの1曲目「Come Rain or Come Shine」に関しても同じようなことが言える。ただしそれは息を吸い込む音ではない。そうねえ、昔なら「衣擦れの音」とでも言おうかしら(どんだけ昔だよw)、ギターのボディを静かに抱えて、弦に触れるような音が最初に3秒くらいして、そして4秒後に大賀くんのギターの音色(この最初のコードもいいんだ。切なくて。ジャズっていうよりボサノバを思わせるような)がするっていうね。いやあ、たまんないなあこの臨場感。誰がこうしようって言ったんだろうね、センスいいなあ。パラシュートの徳ちゃんのブレスと同じくらい、心にぐいっと食い込んでくる、仕草の音なのである。




 で、この曲の聞きどころは他にも満載なんだけど、個人的に唸ったのは「ガンダムベーシスト」=麻井くんのパート。ワンコーラス終わってから1分40秒辺りから、2分15秒くらいまでの、麻井くんのベースのソロが素晴らしい。本当に素敵。聞き惚れるね。なんとも言えない清涼感があるのに、畝った高揚感もあるのよ。これは聞かないと皆さん。ベースのソロから大賀くんのギターへの繋ぎ、その後の大楠くんのキーボードへの移り方もいいのよ。いやあジャズってこれよね。この流れるような各パートのソロ。全部に拍手したい。


 麻井くんのベースは2曲目の「It’s Only A Paper Moon」のボーカルの後ろもいいよ。気がつくとベースだけ聴いてるくらいだからね(笑)。これはドラムの車谷くんもいい仕事してるんだよなあ。ソロパートの裏で鳴ってるドラムさあ、懐深過ぎでしょ。力入ってないのに気合十分って感じでいいんだ。冒頭に書いた「バードランド」はさ、七月さんと車谷くんのサシの勝負なんだけど、ボーカルを見事に引き立てながら、負けてないからねドラムが。あらためていいドラマーだと思った。


 麻井くんもう1曲言わせて下さい。5曲目の「Smile」がまたいい。これはさあ、アレンジも秀逸なのよ、いや、アレンジは全部いいと思うんだけど、2分を過ぎてからのベースソロ、素敵すぎ。まさにベースで歌える男、ガンダム麻井。天晴れ。からの、大賀くんのギターソロ。これがまた胸熱なのよ。優しい音色にグッと来るんだよねえ。Smileって歌自体がとても温かい曲なので、音色の空気感もほわりとしていていい。




 で、我らが大賀好修くんですが、まあ、語る必要はないってくらいいいのは当たり前なんですけど(どんだけだよw)、やっぱり彼も、懐の深さなのよねえ。一体この人に引き出しはいくつあるのだろうってつい考えてしまう。いろんな音を出しながらも、それが全て彼のスタイルになっているところがすごいと思うのよね。ギターがただ好きとか、単なるテクニシャンってだけじゃない、実力と奥深さが彼のプレイスタイルには感じられる。小手先だけじゃないというか。それとさあ、抽象的なことばっかし言うようだけど、彼の出す音って明るいんだよね。もちろん、楽曲によって違いはあるんだけど、全体のトーンが明るい空の色をしている。聞いていて、こちらの気持ちが晴れてくるのは、そのせいかなって気もする。どれも好きだけど、触れてない曲で言えば、「My favorite Things」のアコギのソロなんか、やや短いけど光ってる。「Smile」のエレキの音は逆に殊の外優しげ。「Bei Mir Bist Du Schon」の間奏の、音はおとなしいけどいくつ音詰まってるのよってくらいの、彼お得意の怒涛のソロもいい。ラテンサウンドに身体が動く「The Joker」のイントロの疾走感は彼のまさに真骨頂って感じのアコギ。最高よね。





 これまたラテンの「The Gift」の車谷くんのソロも圧巻(この曲は私としてはリカード・ボサノバってタイトルで覚えているけど、歌詞が入るとこのタイトルだよね)。「The  Joker」の車谷くんもめちゃくちゃいい。それとさ、全体を通じて支える屋台骨になってるのが、大楠くんのキーボード。「Only You」の清涼感溢れる音なんかいいよね。でも特に大好きなのが「Don’t Know Why」、大楠くんの出す音、好きだなあ。これ、原曲はギターで始まるのだけど、そこをあえてピアノにし、リズムも跳ねさせて軽やかさを出している。間奏もいい。切なパートの優秀な担い手よね。この曲は彼のピアノのソロで決まり。それに絡む大賀くんのスライドギターも気持ち良さ抜群。ノラの歌うバージョンも大好きだけど、それよりも湿度が低い分、どこか妙に切ないんだよね。七月さんの声の艶が全体を決めてはいるけど、オリジナルよりもどこか大人っぽく聞こえるのは、カラッとした空気が流れているせいかも。悲しい歌ってさ、ウェットじゃない方が絶対心に響くのよね。



むっちゃくちゃ男前な車谷くん。これは惚れんだろ、ってなレベル。



 楽曲として、そのいじり方によってアレンジメントのセンスが問われると思うんだけど、大胆なアレンジながら気持ちよく聞かせてもらったのはAORの名曲!(AORって単語、いつ振りに発したろうw)邦題「風のシルエット」こと「What You Won’t Do for Love」。きたよ、ボビー・コールドウェル!こんな大人っぽい音になるなんてねえ。でもベタっとしてないのが味よね。このサラサラ感。大事。特に夏に聞いてるからか、そう思ってしまう。コードもジャズっぽく書き換えられている部分があり(というかこのアルバム全体で、コードが所々変えられているのだけど、それがまたおしゃれ感たっぷりで憎いのよ。くぅ〜痺れる!と唸ってしまう箇所多数)、ギターのソロでは速弾きを若干挟みつつも、ゆったりとした雰囲気を変えずに、そのままピアノに渡すところなんてほんと、流れるようで美しい。聞いていて本当に心地いいんだなあ。


 全体を締めるラスト1曲前の、スウィングしなきゃ意味がないあの曲、まあそのカッコいいことったら!ギターのカッティングが気持ちよく、また、それまで比較的おとなしめだった車谷くんのドラムも炸裂。1分19秒からの、ギターとベースとドラムのユニゾンが最高に決まってる!こういうのをライブで聞いたら絶対ユニゾンが終わったところで拍手の嵐よ。こんなスウィングの仕方もいいよねえ。この曲はいろんな人のを聞いたけど、このバージョンも最高だね。




 ひとつだけ!ひとつだけ不満があるとしたら!「Only You」の最後!フェイドアウトから終わるまでが早すぎる!速攻終わっちゃうのよ!頼む、大賀ファンとして言わせてもらう。せめてあと1分!いや、30秒でもいい!もう少し、もう少しだけあの渾身のソロパートを聞かせて欲しかった!大賀くん絶対手を抜かないので、これが途中で切れると解っていても全力で弾いてるのがこちらに伝わってくるのよ。だからこそもうちょっと、もうちょっとだけ、さっさと引き上げずに(笑)、余韻を残すように終わって欲しかった。ああ残念…。


 アルバム1枚語るのにどんだけ書いてんだよって感じだけどw、語り尽くせないのよ。だって、好きだからさ。





 若い頃から何故か、日本人のジャズをよく聞いて来た。小曽根真さんを知ったことから始まったのだけど、TOKU、小沼ようすけ、松永貴志、AKIKO(須永達夫プロデュースのアルバムをよく聞いていた)、小林桂なんかはよく聞いた。ようすけくんはデビューアルバムから好きで、ジャズギターで洋楽をカバーするのが最高にかっこよく思えた。考えたらロック以外も、私はやっぱしギタリストが好きなのよね。


 今だと、すっかりジャズに転向した大江千里さんはちゃんとチェックしてる。千里さんについては若い頃、まだポップスの頃に何度かライブに行っている。ノリのいい、実に楽しいライブだった。その後、ジャズに転向してからも、一度だけ、「甲府ジャズストリート」の時に来てくれて(半券調べたら2006年だった)、なんとかチケットを取って参加した。千ちゃんの大ファンはあの頃まだ「歌ってー!」という掛け声もしていた気がするけど、彼は静かに、でも楽しそうに微笑んで、ピアノに向き合っていた。あの姿は印象的だったし、とても潔くて素敵だった。今でも彼のピアノは好き。清潔感と哀しさと優しさと潔さと男っぽさとが、都会の色に染まっている。


 そんな流れの中で出会った森川七月produced by Sensationな訳だから、まあ、出会うべくして出会ったんだろうなあ、Sensationってバンドとは。

 私はインストが好きで、ジャズも聞くのはインストものが中心なのだけど、ボーカルものじゃないとなあ、と思っている皆様には、ぜひこのアルバムを聴いて頂きたい。iTunesにあります。ちなみにワタクシはもちろんこのアルバムも、配信で買った後でCDアルバム買いました。だめだもう人として。


 七月さんとSensationとのライブの様子がたくさんあったので貼り逃げしておく。好きなものから見てください。


 あらためてみると解るんだけど、車谷くんって自分の叩いてるドラム、全然見ないんだよね。ずっと、もうずーっと、ボーカルとか他のメンバーとかを見て、音を、リズムを合わせてる。ギターをあまり見ないで大賀くんが弾いてるのは解ってたけど、まさかこのバンド、他にもこんな凄いプレイヤーがいるとは。こういうドラマーは私、初めてかもしれない。めちゃくちゃ感動した。車谷くん、素晴らしいです。


 下の動画、2つ目からは大賀くんはいなくて、麻井くん、車谷くん、大楠くんの3人でバックを務めております。









 で、大賀くんが少なくて悲しかったので、七月さんのチャンネルに上がっていた、SensationのAquaの動画を代わりに貼りますw





All photos are from Sensation’s Facebook pages. 

 


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